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要らないよそんなお節介!

 全ての情報は遮断しておいたはずだ、と私は思った。

 だがそれがすべて失敗だったことを悟る。

 つまり目の前にこのリオネルがいる、それが結果なのだ。


 と、リオネルが笑顔で、


「来ちゃった(はーと)」

「……こんなイケメンに成長した男に、いかにも可愛いですというかのように言われても、全然可愛くない」

「相変わらずルカは厳しいな~」

「それで、どうしてこんな所に?」

「いや~、ルカが俺から逃げる算段をしていると聞いて、逃がしてたまるかと思って追いかけてきました!」

「婚約者を置いて?」


 私はため息を付きたい気持ちになりながら、リオネルに告げるとリオネルは不思議そうな顔で私を見て、


「婚約者って、誰の話だ?」

「え? いや、ネイア嬢の話よ。確か一緒に都市近郊の学園に通うはずじゃ……」

「あ、彼女なら駆け落ちした」


 リオネルは笑顔で笑いながら私にそう言った。

 何故笑顔なのか。

 そう私は思いながらとりあえず、確認をしてみた。


「えっとそれは、リオネルが別の男に婚約者を寝取られた、という?」

「そうだな、駆け落ちされちゃった。だから俺は自由なので……ではなく、“傷心”の俺の泣き落としのおかげで皆、快くルカの居場所を教えてくれたぞ」

「く、まさかそんな手を使ってくるなんて……。でもどうして私がここの学園にこっそり一人で通おうとしていたのに気づいたのかな。今まで普通に接してきたはずなのに。しかも転移魔法でここまで来たはずで、それまでは普通にリオネルとも食事をとって……」


 そうなのだ。

 わざわざ私は転移魔法を使って、今日この場所に試験を受けに来ていたはずなのだ。

 だからそれこそ昨日の夜まで私は、リオネルと一緒に食事をとっていたのである。


 そして王宮からこの学園までは、転移魔法を使わなければ数日はかかってしまう距離。

 となると転移魔法でリオネルはここまで来たことになるが。


「……確か王宮付きの転移能力者である、サラさんは、昨日の夜休暇を取り、故郷に帰ろうとしていたはず」

「うん、だから昨日の夜は俺、ルカにお休みの挨拶はしなかっただろう? 彼女が帰る前にここに送ってもらって、一晩ここの近くの宿で寝たよ! ……窓から足がいっぱい生えた虫が入ってきた時は、帰りたいと思ったけれどな」


 遠い目をするようにリオネルが私に言うが、


「その帰りたいと思った時に帰るのが一番いいと思う。ほら、私の特殊能力チートで送ってあげるから、帰ろう」

「でもルカがいないなら戻る意味があまりないよな。というか何でこんな辺境の学園にしたんだ?」

「う……都市部周辺だと、私の事を知っていて、英雄だなんだ言われるからそれならこう……ね。それにリオネルとの婚約者との学園生活を邪魔するのも悪し」


 それは私の本心だった。

 リオネルだっていつまでも子供のままではいられないし、王子様としての責務も果たさなければいけないのだ。

 だからいつまでも私と子供の用に遊びまわっているわけにもいかない。


 それにそろそろ私だって、


「今、ルカは彼氏が欲しいと思ったな」

「なんでばれた!」

「いや~、そろそろ彼氏が欲しいなと、よくいっていたからな。でも無理だと思うぞ」

「! なんで! 私が一体何をしたというの! というか何でそんなひどい事を……これだからイケメンは!」


 私が涙目で怒る。

 そうなのだ、このリオネルはとても美形なのだ。

 しかも王子様で……おかげで男性とお近づきになる機会がない。

 この美形っぷりに皆遠慮してしまうのだ。

だから私がリオネルの傍にいるだけで、私は彼らの眼中になくなってしまう。

 

 そう、それこそ添え物、オムライスに添えられたパセリになってしまうのだ!

 パセリ(私)だっていい香りがして美味しいのに、皆、オムライス(リオネル)ばかりに気をとられて全く気づかないし、気づいてもまあいいかという風な扱いをされてしまうのだ。

 でも私はリオネルの性格や魅力を間近で見て知っているので彼ら達の気持ちは分からなくもない。


 それにリオネルは私にとって一番の“親友”なので、無碍にもできない。

 今だに昔の可愛くて綺麗なリオネルを覚えているので、あまり強く言えない部分もあるような気がするが。

 だが私は今度こそ一人、ただの“ルカ”としてファンタジーな異世界学園生活、それも平凡なそれを楽しみたかったのだ。


 リオネルに連れられて王宮で様々な事を勉強させられたとはいえ、やはり学園というか学校に通いたいのである。

 だがその平凡学園生活を過ごすためには、このリオネルという王子様は……邪魔だ。

 遠回しにリオネルから離れる策略は失敗した。


 だから面と向かって言う事にした。つまり、


「リオネル、私、普通の学園生活がしたいから、王子様であるリオネルの存在がいると困るの」

「酷い! ずっと一緒に居た俺にルカはなんてことを言うんだ! 昔は一緒に寝るような仲だったのに!」

「分かっている、リオネルは私の一番の“親友”でもある。でもそうであると同時に貴方は王子様なんだ」

「うん、だからちょっと細工して、俺の経歴をこう、ね」

「……まさかここに通うために……」


 どうやらリオネルは自分の経歴に何かをしたらしい。

 下手すると王子ではなく農家の息子になっているかもしれない。

 というか、


「どうしてそこまで私を追ってくるのよ」 

「俺は、ルカと一緒にこれからも馬鹿をやったりしていたいんだ! 何せルカの近くにいると自動的に厄介ごとが舞い降りてくるからな」

「人を何だと思っているのyp。私自身は何もしていないけれど、たまたま街を歩いていたら逃げ出した奴隷と遭遇したり、森にピクニックに行こうと思って遠出をしたら山賊がいて、その山賊が奪った財宝の中に邪教集団の宝物が混ざっていたとか、偶然遭遇した“だけ”じゃない!」

「普通はそんなのと遭遇しないからな~、というわけでよろしく」

「うう……これで私は、普通の男性との接点がまた無くなってしまう」


 絶望を感じながら私が呟くと、


「でも俺、ここ受けることが決まっていっるから諦めてね」

「そ、そんな……」

「それともこれから試験も受けずに俺と一緒に都市に戻るか~」


 むしろそっちの方がいいけれど、とリオネルは言うが、私はここまで来て他の学校を受けるよう手続きなんてできない。

 というかこの学園の試験が特に遅い方だったので、もう他は全て終わっている。

 まさかこんな事になるなんて、そう私が思いつつ、心の中で涙を流しならリオネルに告げた。


「私はここの試験を受けるよ。そして最低のFランクを取るんだ」

「え? なんで? 折角だからどちらが一位を取れるか競争をしようよ」

「……私の魔力は、“測定”が出来ないから」

「あ~、そういえばそうだった。見かけ上、“ゼロ”だったな」

「そうそう。だからあとは試験にギリギリよりちょっと上位で合格すれば、Fランクの魔法科入学者になれるんだ!」

「下から数えた方がいい程度に実力を抑える……そこまで目立ちたくないのか」

「うん!」


 私は自分の気持ちに正直になり、大きく頷いた。

 リオネルがそんな私に微笑みながら、


「よしわかった。この俺が、全力でルカを目立たせてやる」

「な、なんで!」

「いや、ルカの才能を埋もれさせるのはどうかなと思って」

「い、要らないよそんなお節介! こ、こうなったらリオネルだけでも都市に今すぐ転送を……」


 私がリオネルを都市に転送しよう、そう考えた所でリオネルが私の手を握り、


「本当に俺がルカの傍にいると迷惑か?」


 などと、イケメンが悲しそうに私にうったえかけてくる。

 一応親友で、昔から気に入っている相手でも会ったのでこうされると私は、リオネルに逆らえない。

 私はリオネルに“甘い”というが、他の人だった甘いわけで、えっと……。


「うう……そんな事はないよ」

「そうなんだ、よかった~、もし迷惑何て言われたら……」

「言われたら?」


 私はうんざりしつつも聞き返すと、その時一瞬リオネルが冷たく嗤った気がした。

 えっと思ってよく見るも、リオネルはいつものような笑顔でいるのみで、どうやら私飲み間違えだったようだ。と、


「どうしようかな~、まあ、そのとき考える。あと、そろそろ行かないと試験が始まるな」

「! もうこんな時間、行かないと!」


 こうして私とリオネルは、この学園の試験に向かったのだった。



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