入学式がやって来た-6
学園長室に私は呼び出された。
つまり先ほど突如現れたリオネルのお兄さんと、その付き人であるイリスがいる場所である。
そちらに向かっていくリオネルが、ポツリと暗い顔で、
「俺、逃げたい」
「私もだよ。今度は何をやらかすんだろうね」
「そうだな。もう少し兄であるわけだからしっかりとするべきだよな」
小さく呟いたリオネル。
けれど愚痴を行った所であのクラウドがまともになるわけでもないので、諦めるように嘆息する。
そうすると学園長室が見えてきた。
学園長室といった札を付けられた、簡素な木の扉。
そこを2回ほど私はノックするも、誰の返事もない。
「でも中に人はいるみたいなんだよね。でも、うーん、こうなるとまた、かな?」
「だろうな。かといって、しばらく待っていても、なんで待っているんだと怒るしな。面倒だから開けてしまおう」
「がちゃっと、鍵はかかっているみたいだね。蹴破る? 魔法攻撃でいっちゃう?」
「そうだな、身体強化で蹴破るか。……派手な爆発で人が集まると、イリスさんが実家に帰っちゃうかもしれないからな。それだけは避けたい」
「案外イリスさんがいなくなったら、まっとうな王子様になったりして」
私が冗談半分で推測を言うとリオネルは、ちょっとだけ黙って考えてから空を仰ぎ見るように天井を見て、
「そんなリスクは犯せないな。現状で兄さんをどうにか出来るのはイリスさんだけだし、兄さんもイリスさんが大好きだからな」
「そう言われるとそうかも。さてと、どっちが蹴破る?」
「じゃあ共同作業で」
「分かった。よし、では早速……せーの!」
そこで私とリオネルは身体を強化して、一斉に学園長室の扉を蹴破った。
中には、ちょうどイリスさんを机に押し倒そうとしていた学園長であるクラウドが、首輪をつけたままでいた。
と、恨めしそうにクラウドが、
「確かに呼んだが、これから押し倒せそうなところだったのに」
「でも待ってたら私達がイリスさんに怒られてしまいます。というわけで、どうして私達を呼んだのかそのままで結構ですので、説明を」
私が早くこの場から逃げたがっているのを感じ取ったのか、深々とクラウドがため息をつく。
因みにこの時、イリスが何かをいいたそうにしていたが、クラウドに口をふさがれてした。
そして、クラウドが、
「最近、凶悪な魔物のが増えているらしいちった話があってな。それで情報源は言えないが、この学園と関係があるらしい」
「あ~、えっと、リオネル、おまかせしていいかな」
私は、平凡な学園生活が送れない予感がして、リオネルに全部押し付けて逃げようとした。
しかしぐっと手首を掴んだリオネルが、
「ルカ、ルカ一人だけ逃げていい思いはさせないぞ」
「い、いやだ。どう考えても大変で、私が頑張らないといけなくなるような、私の特殊能力が必要になりそうじゃないですかぁあああ」
「ルカの能力が必要な時は相当大変なときだろう。流石にそこまで大変な自体にはなっていないんだろう? 兄さん」
リオネルが笑いながらクラウドに聞くが、クラウドは黙ったまま。
それにリオネルも沈黙したのだった。
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