入学式がやって来た-2
マントを翻し高笑いをする青年。
仮面で上の顔半分が隠れているとはいえ、彼が美形の青年であることは疑いもなく、そして仮面の間から見える緑色は鮮やかな色をしている。
その金色の髪も、珍しくはないとはいえこれほどまで華やかな色は、なかなかお目にかかれない。
見間違えようのない人物を目にした私は、真顔になった。
そしてすぐ隣にいる、その新しい学園長と非常に近い“知り合い”であるリオネルの顔を見ると、無表情になってその、壇上に上がり、何か電波を受信したかのような発言をした人物を見ている。
だが目の前の人物が予想通りの人物だとするならば、絶対に今の言葉だけでは終わらず、何かを仕掛けてくるのは経験的な物から明らかだった。
どうしてこうなった、心の中で呟きながら私は、代わりに、
「ねえ、リオネル」
「なんだ?」
「クラウドさんがこの学園に来るって知っていた?」
「に……あの人が来ると知っていたなら、ここには来なかっただろうな」
容赦のないリオネルの言葉に、私は、うん、そうだよねと思った。
そして私自身もここには来なかっただろう、と思う。
そもそもどうして彼、クラウド……本人の影武者でない限りは、本人の自己紹介と思しきことを語っており、あの発言をするような人物が影武者といえど何人もいるわけではない。
否、いて欲しくない。
だからきっとそこにいるのはリオネルの兄であるクラウドなのだろう。
そして周りにいる先生方が、妙に冷や汗を垂らしているように見えるのは気のせいだろうか?
そもそもこの国の次期国王になるクラウドが、城ではなくこんな所で油を売っていていいのだろうか?
というか、いつもの城であればいるようなこの、クラウドストッパーと呼ばれる付き人のイリスさん(女)がいるはずなのだ。
それがどうしてここにいないのか?
私がそんな疑問を思っているとそこでクラウドが、
「そしてこの学園という名の箱庭はこの俺の支配下だ! それ故にお前達は俺の命に従わねばならない。まずは……これだ!」
そう言って、何処からともなくマネキン二つほど取り出した。
どちらもコスプレ衣装のようで、肌の露出度が多い制服だ。
近頃のラノベの表紙絵の女の子よりも肌色が良く見えてしまいそうな服である。
片方は女の子用、もう片方は半ズボンの少年用の服だが……私は嫌な予感がした。
そこでクラウドが嗤う。
「くくくく、そして本日より全校生徒の制服はこのどちらかになった。また、オプションパーツとして、無料で、猫耳兎耳犬耳狐耳に尻尾、肉球付き手袋まで用意した! 好きなものを選ぶがいい、これは学園長であり次期国王命令だ。うわぁあああはははは!」
楽しそうなクラウドだが、彼以外の全員が引いたように沈黙している。
というかこの世界に獣人もいるが、その昔は魔王にくみしたと言って色々あったが、身体能力の高さや獣耳付き人間独特の“可愛さ”に人間が当てられて、このような道具が売られていたりする。
だがどうしてこの場でそれを強制するのかと私が絶望的な気持ちになっているとそこでリオネルが、
「ルカの猫耳に兎耳に狐耳、そしてミニスカニーソ……」
「! リ、リオネル、どうしたの、一体何を言っているの!」
ぶつぶつと呟きながら何かを考え始めたリオネルに私は、慌てて肩を揺さぶった。
だってそうしないと私が大変なことになりそうな気がしたから。
そこで、高らかに笑うクラウドの首に、突如革製ベルトの首輪が巻き付いたのだった。
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