出会い
「はあ、、、はあ、、、」
「大丈夫か、後もうちょっとで安全地帯に着くぞ。」
「ああ、」
うっそうとした森の中、小笠原甚率いる小隊は、敵陣地であるドイツへと向かっている途中だった。
ここなら安全だ。水分をしっかり補給しておけ、と小笠原は言いながら、自分も竹筒に入っている水を口にした。時刻は午後、八時を少し過ぎているぐらいだろう。僕(山田晴太)は水を口にはせず、ただうずくまるだけだった。そのまま意識は遠のいていき、、、。
「山田ア!!ぼさっとするな!」
突然の叫び声。僕の意識は朦朧としており、その叫びの意味に理解が追いつくには時間がかかった。一瞬のことだった。辺り一面、血の匂いがした。銃声が耳を突いた。
「砲撃、止め!!」
凛々しい声が響いた。
長い金髪に、凛々しい表情。敵部隊は砲撃をやめた、のだと後で分かった。
貴様、大丈夫か。という優しい、けれどどこか寂しいような呼びかけで僕は目が覚めた。どこかは分からないが、王宮のようだ。それにこのフカフカしたベッドは。疑問に思い顔をあげると、いつか見た、女性が僕の顔をのぞき込んでいた。
「お前、名はなんという」
女性は聞いてきた。敵軍ではいけないと思い、僕は黙り込んでうつむいていた。時間が止まったかのような空間。どこか分からない地で、誰か分からない女性と二人きりの部屋。なのに心は驚くほど落ち着いていた。
静寂を切り裂くようにぞの女性は言った。
「私はアガタだ。昼食の用意が出来ている。少し落ち着いたら一階に降りてこい」
そう言い、部屋を出て行った。
「なんだこれは」
僕はふと呟いた。何かきらりと光るペンダントのようなものが落ちていた。アガタだっけか、そいつの落とし物かな。後で届けに行こう。僕の体にはいつの間にか傷跡があり、そこには包帯が巻かれていた。