日記拾伍頁目:さあ、遊びましょう〜七音〜
「カラコロと転がる飴玉と」
「莢ー」
「んー?」
七音は自分の目の前で別の作業に集中しすぎて適当な返事になっている莢を暇そうに見ている。と七音が何かを思い付いたようでニヤッと悪戯っ子のように笑った。
「莢!」
「っっ!あー!ミスった!どうしてくれんだ七…プ?!…んん?!」
「あはは!どぉー?」
突然呼ばれて細かい作業中だったらしい莢は怒った様子で顔をあげると口の中に何か入れられた。入れられた何かを舌でカラコロと転がす。飴玉のようで舌に飴玉の味が染み込んで行く。七音は成功したのを喜ぶように笑いながら言った。
「珀から貰った飴玉だよ。莢には葡萄味にしたの。良かったでしょ?」
「ん、まぁね」
カラコロと飴玉を転がす莢。次第に機嫌が良くなって来たらしく彼は中断していた作業を再開し始めた。それを見届けて七音も貰った飴玉を口の中に放り込み、カラコロと転がした。
莢の作業が終わった頃。泣きながら珀が部屋に入って来た。狐耳が垂れ下がっている。莢は当たり前のように両腕を広げた。するとそこに珀が抱きつき、莢は泣く彼の頭を優しく撫でる。莢の胸で珀は泣く。
「ったくホントあいつムカつく!!」
何故、珀が泣いているのかが分かっている七音は憤怒の表情で拳を握りしめながら言う。それに莢もそうだと言わんばかりの表情で顔をあげ、頷いた。
「う"う"〜莢ぁ〜」
「はいはい分かってる分かってる。珀の妖狐の力は凄いもんね、大将はそれを分かっていないんだよ」
「泣き止んでよ」
珀を慰める七音と莢。次第に涙が枯れ始めた珀は赤くなった目元を擦りながら莢から離れた。
「……………すいませんでした…」
今だしょんぼりと狐耳が垂れ下がっている。珀を笑顔にしようと2人は笑って言う。
「大丈夫だって!」
「珀は悪くないよ」
2人の言葉に珀の顔から笑みが零れた。「さて」と前置きをし、莢が口を開く。それに珀の表情が硬くなったが七音は「違うよー」と肩の力を抜くよう促した。
「はいコレ」
「…………それがどうしたんですか?」
莢が珀に掲げて見せたのは小さな小さな藤の花がついたイヤリングだった。しかし、珀には何故それを見せられたのかまでは理解できなかった。七音が笑いながら教えてやる。
「莢が珀のためにさっきまで作ってたんだよー」
「七音が邪魔して来たから一個無駄になったけどなっ!こんのやろっ!!」
「イッタ?!」
莢が「邪魔した罰だ」と七音に一発ゲンコツを食らわせる。七音が大袈裟に痛がりながら頭を抑える。
「だって莢が適当な返事するから!」
「集中してんだからしょうがないでしょ?!」
「でも!!」
ギャーギャーと言い争い出す2人。言い分はどっちもどっちだと蚊帳の外の珀は思う。そしていつもの2人の光景にクスリと笑う。それに2人がこちらを向き、それに驚いて両手を振って言い訳を叫んだ。
「な、仲良しだなって!!」
「「まだなんにも言ってないし」」
「…………ふへ?」
何も言ってないのに何故言った。
珀の阿保顔がツボったらしく七音が笑い出す。それにつられて2人も笑い出し、しばらくの間、話題すら忘れて笑っていた。
「ははは…はぁ…あ。忘れてた。んでイヤリングをね、珀に作ってたの。お守りー」
「え…お守りですか?」
「そっ。着けてあげる」
ようやっと話題を思い出した莢は持っていたイヤリングを面食らったような表情の珀の右の狐耳に付けた。
「いいじゃんいいじゃん!完璧!」
「俺が言うのもなんだけど、やっぱり藤で合ってたね!最高の出来!」
「あ、ありがとうございます…」
えへへと照れ顔で珀が着けて貰ったイヤリングを撫でる。自分と同じ瞳の色を持つ花。同じ年の兄弟が情けない自分に手間をかけて作ってくれたお守り。嬉しくて嬉しくて。言葉に言い表せない。
照れ顔の珀の頭をこれでもかこれでもかと云うほど、七音と莢が撫でる。その仕草に子供扱いが見えるがこれが珀にとっては心地よい。
「お礼です!」
「モッフモフぅうう!!!」
お礼と称して狐の尻尾を大きくする。とモフモフ好きな七音にはたまらない。モフモフの珀の尻尾に飛び込んだ。それを莢がまた笑う。珀も、七音も笑う。
仲良しな3人で過ごす時間は何よりも大切だと七音は微睡む意識の中、そう強く思った。
過去編書けて満足です(頑張ります)




