日記捌頁目:うそつきの代償〜千秋〜
「久々のこの時を、刻み込んで」
「待って、待ってキィ!タンマタンマァアアアア!!」
「ふっふー僕が待つと思いで?そぉら王手!」
「ウワァアアア…負けた」
はい、何やってんだと思い気や将棋でした。勝者はお分かりの通り千秋、敗者は葉樹。今日は久々に要請がなかったため、楽しく遊んでいた。といっても大将からの暴力はいつも通りなわけで。それから逃げるように本棚があって入り組んでいる書斎に転がり込んだ次第だ。意外にも本日の大将は穏やからしい。部屋から一歩も出てこない。毎日そうであったなら実に良いんですけどね。平和で。
「葉樹弱いなぁ」
「だって兄さーん!キィが強いんだもーん!」
「片目隠してる男がもんはない。もんは。よし、だったら兄対決で行くか!」
「「おぉー」」
2人の対決を眺めていた桜樹が立ち上がってそう言うと千鶴と千秋がハモる。桜樹の提案に呼ばれた雅は嫌そうに顔をしかめた。
「……私、ですか」
「雅やるぞー」
「えぇ…しょうがないですねぇ」
呆れ顔をしつつ雅も立ち上がり、千秋と入れ違いに将棋の台の前に座る。そして桜樹と雅は対決を始めた。中々決まらない対決に他の仲間が取り囲むと云う始末だ。そのせいで観戦が不可能となった双子は彩葉、葉樹と共に壁際に避難していた。
「雅兄さんは将棋強くなかったか?」
「「あ……」」
「……兄さんどんまーい」
彩葉の言葉に双子と葉樹が桜樹に同情する。「「「おー」」」と取り囲む彼らから歓声が上がる。それと同時に桜樹の悔しそうな声も聞こえてくる。それに4人は「あー…」となる。
「まっ、いっか」
「そうだね」
「千秋兄さん、そこの本取ってくれ」
「あーチィのその難しそうな本何ー?!」
そしてそれぞれ、思い思いに動き出す。千秋は彩葉に頼まれた本を取り、葉樹は千鶴の読んでいる本を覗き込み。
「…………うーん…」
「お手上げですか?」
唸る桜樹に雅がそう助け舟を出すと桜樹はニッと笑い、挑戦的に言い放つ。
「んなわけないだろ!これで、どうだっと」
パチンッ!と良い音を立てて戦況が変わる。周りが「「「おー」」」と声を上げる。雅はクスリとこちらも挑戦的に笑い、パチンと動かした。
「私も、これでどうですか?」
「うっ…うー」
思い思いの、ひと時限りの楽しい時間を今は思いっきり楽しんで。
これが、いつ最後になるか、分からないから。
ーカツンッー
何処かで2つの足音が響いた。




