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異世界戦争  作者: Riviy
第漆部隊:過去編、彼ラノ悲シミノ夢
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日記伍頁目:パラドックスとアンチノミーの思い出〜桜樹〜

「知らぬ事は何よりの罪だ」




「ヒマだね〜兄さん」

「暇とか…呑気だなお前は」

「だってホントにヒマなんだもーん」


兄である桜樹の言い分に葉樹は子供っぽく、プクゥと頬を膨らませた。それにケラケラ笑う桜樹。

陽戒が狂い、本物に近い“荒神”となって数週間が経った。特に変わったことは陽戒以外になく、単なる日常が続いていた。


最近、大将の暴力がある特定の人物には向いていない事が分かった。それを知ったのは桜樹ではなく、友人の雅で、弟である双子の治療をおこなっていた後に聞いた事だ。


「化け物っていつなくなるのかな?装置壊しちゃえば良いのに」


何気ないその疑問に桜樹は答える。


「管理局でもそこまで把握はしていないんだ。化け物が隠したからな」

「へぇ〜やっぱ兄さん物知りー」


コロコロ変わる表情はこの地獄のような中ではかけがえのない希望となりつつあった。

そして、桜樹は弟に真剣に聞こうと口を開いた。


「葉樹」

「ん?なーに?」

「大将の事、どう思う?」


その問いに葉樹はキョトン…とした。

雅から聞いた事、それは『葉樹のみが大将の暴力をまぬがれている』と云う事だった。葉樹は大将が一番最初に使役した“荒神”でこの中ではどちらかと云うと古参メンバーであった。最初と云うことかそれとも何か意図があってか、葉樹のみに優しいのは可笑しかった。というか葉樹自体がこの騒動に気付いていないふしもある。


「………大将様?大将様は良い人だと思うよ」

「………そうか。悪かった。気にすんな」

「う、うん…?」


何故そんな質問をしたか分からない兄に首を傾げる葉樹を残し、桜樹は自分達の部屋から出て行った。

一人、いつもの裏へと歩きながら桜樹は誰と云うわけでもなく、聞こえないように小さく呟いた。


「………葉樹が、最後の希望で、砦だ…」


***


一週間前から日課となった、家の裏の大木の下で雅と2人で色んな話をする時間。そこだけ、穏やかな空間だった。


「当たっていたんですか…」

「嗚呼。きっと、葉樹は俺達の希望だ」

「ふふ、そうかもしれませんね」


そう言って笑った雅から笑みが途端に消えた。それに桜樹はどうしたと首を傾げると雅は言った。


「……………また、兄様によって仲間が逝きました…それも…一番下の弟です……彩葉も今だあいつから暴力を受けています………暴力は殆ど全員に浸透している……いつ、誰が狂うかわかりません…私がこの手で兄様を…」


雅が恐怖をたたえた表情で自身の両手を、震える両手を見つめる。桜樹はとっさにその両手に自身の両手を重ねてハイタッチした後のようになる。雅が驚いたように目をまん丸くし、桜樹の手を見つける。


「ねぇ雅」


桜樹の右耳で揺れる龍が小さい音で何かを囁いた気がした。


「前にも言ったけど、俺が止めてやるから。雅は自分の事を大切にしな」

「………ふふ、やはり、桜樹には敵いませんね」


口元に手を当て、可笑しそうに笑う雅の顔にはもう恐怖は宿っていない。それに安心して桜樹も笑う。


「桜樹が言うとなんだかどうにかなってしまう気がします。これからも宜しくお願いしますね?」

「……ハハハハッッ!あったり前だろ?」


大笑いして桜樹は差し出された雅の手を力強く握った。

闇がなんなのか、分からないし光がなんなのか、“荒神”は知らない。けれど、お前と云うゆうじんがいて良かった。この地獄に、意味を見出せるから。だから、お前が過ちを犯したとしても俺が止めてやるから。友達だもんな。


「さっ、そろそろ行こう?戦争は待ってくれないぜ?」


桜樹が立ち上がりながら言う。それに「呼ばれてもいないのに?」と雅が首を傾げる。桜樹は雅よりも耳が良い。そのため、呼ぶ声が聞こえたのだ。桜樹は顎で呼ばれた方向を示す。と雅にも呼ぶ声が聞こえたらしく立ち上がった。


「そうですね、では参りましょう」


パチンッといい音を立てて2人はハイタッチをかわし、今日も戦争に繰り出すのだった。


***


「桜樹も無茶するんだね」

「本当ね、アキ包帯」

「はいよツル」


本日の戦争後、負傷してしまった桜樹は雅の弟達、双子に治療してもらっていた。とても息ピッタリの双子の治療を見ながら桜樹の腕には白い包帯が巻かれ、血がにじむ。


「出来たよ桜樹。雅兄さんが心配してたよ」

「ねーツル」


出来たと言う千鶴に同意するように頷く千秋。やっぱり、似ているなぁと内心思いながら桜樹は立ち上がる。


「ありがとな」

「いえ?明日も一応診察に来てね」

「分かった」


と双子に後ろ手で振りながら部屋を出ようとし、扉越しに双子を振り返った。双子はなんだろうと首を傾げる。それに桜樹は「悪いが」と前置きをしてから問った。


「雅何処?」

「「………プハっ」」


双子は顔を見合わせ、なんだそんな事かと笑う。


「「書斎」」

「ありがと」


桜樹は書斎へと足を動かしながら「雅に怒られるだろうなー」と未来の自分を苦笑した。それは図らずも当たるになるが。

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