第七十壱陣:明かされた‘真実’
「うっわ…マジかよ…」
冬は不穏な風に煽られて飛んで行ってしまいそうな軍帽を抑え、そう呟く。
これは、現実?父さんが言ってたような戦場でもなければ母さんが言ってたような戦闘でもない。此処は安全な…いや、安全だと思われていたはずなのに…
「冬!待ってよ!」
「速い…」
後ろから四季と海が追って来る。冬は気持ちを悟られぬよう、2人を振り返って言った。
「戻ろう」
その背後には黒く焼け焦げた、大きな大きな大木、元、神樹と呼ばれていたものがあった。
**…
「若葉殿、君の友人か兄弟に‘零慈’と‘響薬’と云う姉弟がいたりは…「なんで」え?」
若葉が目を見開き、驚愕した表情と安心した表情がごちゃ混ぜになった表情で2人を射抜く。
「なんでその2人の名を知ってる?!」
「やはり…か。響、本持っててくれ」
マスターは持っていた本を響に持たせるとふところからあの本を取り出した。なんとなく若葉から貰った本と似ている。マスターは本を開き、〈bitcore〉で写したある少女の記録を若葉の顔面に背伸びをして見せる。響がきつそうだなと代わって貰ったが。
若葉はそのページのある一点に目を奪われ、紙に穴が空いてしまうのではないかと言われるほど見ていた。
「この反応って…マスター、左眼丸は何を言ったの?」
響の問いにマスターは「全員の前で言うつもりだったが」と前置きをしてから言う。
「左眼丸はな、姉弟の名前を聞いたことがある気がしていたんだと。それでこの少女の記録と自身の記憶を組み合わせて出来た仮説が‘私と“彼”以外にも異世界を移動する〈力〉を持つ者がいる。その一例が零慈と響薬だ’と。もし仮に左眼丸の仮説が合っているとしたら〈NGRLI〉=“彼”の〈力〉は成立する」
マスターの説明に響はなるほどと頷き、言葉を受け継ぐ。
「異世界を移動出来る〈力〉はマスターを除けば“彼”のみ。同じだと仮定していた少女達自身が物的証拠だとは誰も思わないからね。でも、なんで自分自身が〈NGRLI〉だと気付かなかったんだろう?何故、異世界へ?」
「…〈NGRLI〉…だっけ?そうとは知らなかったんだろうね。あの姉弟は」
放心状態だった若葉が本から視線を上げ、2人を真剣な瞳で見据える。
「他の異世界ではどう呼ぶか知らないけれど、私達で云う子供達…〈神の子供〉が〈NGRLI〉に当たるだけのこと。つまりは、そういうことさ」
若葉の言い分から行くと零慈と響薬の姉弟は〈神様天国〉の〈神の子供〉=〈bitcore〉の〈NGRLI〉と云う事を知らずに調べていた。
調べていくにつれて〈NGRLI〉=“彼”の〈力〉が浮かび上がり、つまりそれは〈神の子供〉=〈NGRLI〉=“彼”の〈力〉と云う事になる。
「でも、零慈ったら間違えてるよ…私達は…“彼”の〈力〉とイコールじゃない」
「「?!」」
若葉の言葉に2人は耳を疑う。もしかして…此処までの仮説が全て覆される?!
「どういう事だい?」
「…単純さ。自分の異世界と〈神様天国〉を移動したが為に身についた副作用なんだよ、それは。その副作用で、2人はその〈bitcore〉へ行き、時を過ごした…」
「副作用?なんでそんな事が分かるんだい?」
マスターの問いに若葉はクスリと自分を嘲笑うかのように嗤うと告げる。
「ごく稀に副作用を持って〈神様天国〉に来てしまう子供が昔からいたんだ。異世界へ移動する〈力〉もその副作用の中に含まれていた。その〈bitcore〉に昔の〈神の子供〉の誰かが行ってしまい、〈NGRLI〉が生まれたんじゃない?」
「……言えてるが、〈NGRLI〉の親世代は政府に改造され…あ」
マスターが‘まさかの偶然’を思いつく。
「〈NGRLI〉の親世代がたまたま、〈神の子供〉と同じだったら?」
「!!偶然にも政府が作り出した〈NEXT CROSS〉が〈神の子供〉と全てが一致した!それだったら彼女達が行って〈NGRLI〉=“彼”の〈力〉と思ってしまうのも物的証拠が自分自身だと気付かないのも頷ける!昔の〈神の子供〉が自分がやって来た異世界で自分と全てが偶然一致なんて誰も思わない。逆に別の存在として考えてしまう。…つまり」
「〈NGRLI〉=〈神の子供〉で“彼”の〈力〉は関係ない…?」
「そういうこと」
マスターと響のまとめに若葉が終止符を打つ。
ある意味、振り出しに戻ってしまったようだ。
簡単にまとめると〈NGRLI〉=〈神の子供〉であって“彼”の〈力〉とイコールにはならないと云う事だ。
「なら、“彼”は、“彼”の〈力〉はなんなんだ…?移動が副作用で起こる、出来るなら移動はとりわけ特別な〈力〉ではない。なら“彼”はどう云う…?」
そう別の問題に差し掛かろうとしていた時、風を切る音がした。それに彼らは顔を上げ、外に飛び出す。外には速く移動する為であろう白虎化した疾風と桜龍化した夜征がいた。2人の背にはそれぞれ兄弟達や子供達が乗っている。
「若葉!やられてた!」
冬の報告に若葉は顔を歪ませた。
「クソッ!」
「ねぇちょっと、話について行けないんだけど?」
白虎化したままの疾風が問うとその背にから降りた海風が言った。
「神樹、〈神様天国〉の核たる御神木様だ」
「……ん?って事は青年達、御神木様が目的だったの?!」
空風がそれに続いて飛び降りながら叫ぶ。そして「ありがとー」と白虎の疾風を撫でる。
「その神樹がやられてたって事は…ヤバッ?!若葉!早く、早く!!」
「うわっ?!なんですか?!突然飛び立たないでください!」
突然、叫びながら鳶丸が桜龍化した夜征から飛び立つ。それに夜征は空中でバランスを少々崩したようだ。鳶丸は頭を下げて苦笑いをしつつ夜征に謝ると若葉の前に降り立つ。
「神樹がやられたんなら〈神様天国〉から早く逃げなきゃ!!滅亡するよ?!」
『………はぁあああ???!!!』
鳶丸の言葉に兄弟達が驚いて叫んだのは言うまでもない。
よく分からなくなったら「へー(棒読み)」で結構ですよーウチ(作者)だって此処らへん、悩みましたもん。
よく考えたら小説家になろう始めて1年経ったんですよね…もう3作目て…ペース速過ぎないか…今週はすみません、スローペースで行きます。また用事がねぇ…ちくしょうー




