第五十捌陣:夕食と夜空の輝き
……ちょっと、ちょっと!ブックマーク!ありがとうございます!!嬉しくて叫びました(実際に)
もう、読者に手綱握られてる気がする…
前も言いましたが頑張ります!
思い思いに彼らと時間を共にしたマスター達。気づけば青かった空はオレンジ色に染まっていた。
若葉と鳶丸の案内で東雲と冬の屋敷に移動し、夕食が出るまでの間、また時間を潰していた時だ。若葉からの説明で海風の兄弟の治療に携わっていたはずの疾風が勢い良く障子を開けて入って来た。
「どうしたの?」
響が聞くと疾風は上がっていた息を整えると自慢げに笑った。
「〈白愛治療〉、成功」
それに若葉達が驚愕の声を上げる。マスターや響、三兄弟は「さすが」と疾風に微笑みかける。ちなみに夜征は東雲の手伝いで居ない。
疾風が道を開けるとそこへ海風に支えられた少年が海風と一緒に入って来た。ずっと眠っていたらしいその少年の足取りは眠っていたとは思えないほどしっかりし、その瞳にも表情にも輝きが宿っている。
「空風!起きたんだな!」
「長ーい冬眠、だったねー」
「やっぱり、手伝い呼んで良かったね」
上から冬、鳶丸、若葉が言う。笑顔で、友達の、仲間の目覚めを喜ぶ。それに海風に支えられた少年は気恥ずかしそうに笑う。
「疾風、おいで。お疲れ様」
マスターが疾風を引き寄せて膝立ちにすると優しく頭を撫でる。疾風の額には少年のために〈力〉を大量に使ったがために出たこちらも大量の汗が滲んでいる。響が懐からハンカチを出してがんばった疾風の汗を拭ってやる。
「ちょっ…響兄」
「〈力〉の使い過ぎで汗拭う体力すら残ってないんだろうに」
「うぐっ」
「あはは。ほら、拭うくらいはやってあげる…お疲れ様、疾風」
響に痛い所を付かれて疾風は呻く。響の言う通りで〈力〉の使い過ぎで腕を使ってかいた汗を拭う体力すら残っていないのだ。かろうじて歩く体力は残っていたようだがマスターや響に「お疲れ様」と言われた瞬間に緊張の糸が切れた疾風は座り込んでしまった。
「ふぅ…うん、疲れた」
「お疲れ様、疾風兄ー!」
「さっすが疾風兄!」
「……お疲れ」
「うおっ?!」
と三兄弟の労いの言葉と共に疾風の体は誰かによって後ろに引かれた。トンっと背中にぶつかる感触に顔を見上げれば、左眼丸が疾風を見下ろしていた。疾風は左眼丸に寄りかかって座っているようだ。疾風は照れ臭そうに笑う。
「ありがとう、みんな」
海風に支えられた少年はマスター達の近くに腰を下ろした。
「良かったね、海風!」
「嗚呼」
「心配かけてごめんね海風」
嬉しそうに微笑む海風に少年は申し訳なさそうに言うが海風は気にするなと笑いかけた。そして〈力〉を貸してくれた疾風の方を海風は見て言った。
「疾風、助かった。ありがとう」
「いいよ。元気になって良かったよ」
海風からの礼に疾風はそう答える。
「僕からも言わせて!ありがとう!」
少年が疾風に向かって言う。疾風は手を挙げて答えた。
「僕は空風。海風とは双子の兄弟なんだ!」
少年が久しぶりの会話を楽しむようにウキウキとした表情と声色で言った。
少年、空風は黄緑色のショートで後ろ髪の一房だけが異様に長い。瞳は空色。服は上下共に黒と蒼色を基調とした軍服で下は長ズボンだ。紺色のネクタイを締めている。右腕の中間辺りに蒼の腕章をしている。(室内なので靴は脱いでいるが靴は黒のローファー)…海風とほとんど同じ格好だ。そして空風と海風はとても良く似ている。
「だーーれーーかーー!!手伝ってーー!!」
「はいはーい。暇なボクが行くからごゆっくりー♪」
東雲の叫び声に鳶丸が答えると部屋を出て行った。その後、彼らが楽しそうに話す声が障子越しから聞こえたと云う。
**…
夕食時、それはそれは賑わった。食事を用意した東雲の手料理はとても美味しかった。
両親の片割れが消滅した事により空風が眠ってしまっていたが疾風により回復。それには東雲も多いに喜び、〈力〉の使い過ぎで左眼丸に寄りかかったままの疾風を見て夜征は笑いながら彼の頭を撫でた。
「いやーやっぱ姉貴の飯はサイコー!」
「んー」と伸びながら冬は言う。その隣には海が座っている。2人がいるのは縁側で夕食から飲み会に変わった空気から逃げて来たのだ。逃げて来た、と言うよりは冬に呼び出されたと言う方が合っているが。
「そうだったね!夜征兄や疾風兄の料理も美味しいんだよ!」
「へー食ってみたいなっ!」
笑顔で会話する2人の背後の障子越しから飲み会の会話が聞こえる。何やら若葉や鳶丸、響が飲み比べをしているらしい。笑い声が聞こえる。その笑い声を聞いて冬は遠い目をして満天の星空を見上げた。海は冬の目が気になったが彼に習って星空を見上げた。
「………俺さ、嗚呼やって楽しそうな声が聞こえてるのが一番安心出来んだ」
冬は自分の両足を両腕で抱え込む。先ほどまで楽しそうだった冬の瞳に悲しみが宿る。それが気になり、海は彼を覗き込んだ。
「……変だよね?そんなんで安心出来るなんて」
「冬」
悲しそうに、自傷気味に笑う冬の頭を海は優しく撫でた。それに冬はびくりとしたようだった。海は冬に優しく語りかける。
「安心する方法は人それぞれなんだから気にしなくてもいいんだよ。嫌な事を吐き出すとスッキリするけど」
「………」
冬は海を見上げた後、また満天の星空を見上げるとポツリと海に吐き出した。
「……俺の両親は、突然居なくなる事が多いんだ。母さんも、突然、居なくなった。姉貴が、居なくならないか、みんなが居なくならないか怖い…」
「大丈夫だよ」
「そうかな」
「大丈夫」
「……うん」
少しだけ安心したような冬に習って海も再び星空を見上げた。
海もその気持ちは良くわかる。しかし、わかると言っても人それぞれ、感じ方は違う。だからあえて海は「自分もある」と言わなかったのだ。
「…………大丈夫」
小さく、海は自分に言い聞かせるように呟いた。




