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異世界戦争  作者: Riviy
第壱部隊:妖ノ乱
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第伍陣:前世と情報と夜と

夜姫達によると彼らは旅をしているらしく、その途中の寝泊まりは廃墟となった神社でおこなっていると言う。朱護あかもり神社は昔からよく来ていたらしく、今は亡き神主さんも「使っていい」と許可をくれていたと言う。マスター達はお言葉に甘えて休ませてもらうことにした。

使わせてもらうのは奥の大部屋。時期に夜が明けると言うのでそのまま休憩となった。見つかった連れの紹介は朝日が昇ったら、ということになった。


「さて、みんないるね」


マスターが夜姫達が去ったのを見計らって柱に背を預けて座り、懐からあの古びた本を取り出しながら言った。


「いるよ」

「います」

「いる」

「三兄弟もいるよ!」


各々が返事を返しながら座る。夜征は入り口近くの柱に背を預け、立ったまま。疾風はその隣に座り。三兄弟はマスターの近くに3人一緒になって。響はマスターが座っている柱の横に背を預けて立っている。


「…マスター…あの」

「言わなくて良いよ左眼丸」


左眼丸が謝ろうとしたのをマスターが止める。


「私は当たり前のことをしただけ。謝るのではなくて?」

「…ありがとう」


左眼丸が気恥ずしそうに言う。マスターは嬉しそうに笑うと本を開きながら言葉を紡ぎ出す。


「さて、此処、〈妖京乱華街あやかしきょうらんばながい〉の情報をみんなに提示しよう」


マスターの説明に彼らは真剣な面持ちで耳を傾ける。マスターは本に記載された情報を説明していく。


「〈妖京乱華街あやかしきょうらんばながい〉は数年前まで人間と妖怪、妖と表現もするな、が争っていた。何百年も前から接戦を繰り広げていたが今から70年前、最初の『災い』が起こる。『災い』は異世界それぞれ異なるが此処ではやまいだった。『災い』の影響は運良くかそれとも運悪くか人間にのみ集中した。人間の方では『災い』は不治のやまいとして扱われたそうだ。『災い』により人間は急激に減少。病により人間は弱体化し、妖怪に次々と敗北を許した。そして事実上の妖怪の勝利となった。妖怪がこの地を収めて数十年後、二度目の『災い』が起こる。今度は妖怪に病が蔓延した。症状は妖怪の思考などが狂って同類や仲間を殺してしまうもので対策は殺すことのみ。妖怪はこの『災い』、病を〈血狂骸身ちきょうがいしん〉と名付け、日夜、元同類や仲間を助ける方法を探しつつ、〈血狂骸身ちきょうがいしん〉に対抗している。〈血狂骸身ちきょうがいしん〉にかかる原因は不明だそうだ。質問は?」


情報を説明し、質問を問うと夜征が控えめに手を挙げて発言した。


「人間はどうなったんですか?」

「あーそれ僕も気になるー」


夜征の質問に海も「気になる気になる!」とマスターを見た。


「人間は少数だが残っているよ。でも希少価値が高いらしいけどね」

「そりゃそうだろーね」


疾風が同意するように言う。マスターが彼らを見回し、他にないかを確認する。誰も反応がないので大丈夫と思ったマスターはパタン…と本を閉じ、言った。


「これからは〈武器〉の使用は自らの意志でおこなってくれ」


それに驚きを隠せない。何故、今になって?


「どういうこと?」


響が顔を覗かせて問うとマスターはこう答えた。


「この先、異世界は戦いが多くなることが予想される。私の許可を待っていたら攻撃される可能性もあるからな。それを踏まえての判断だ、良いか?」

「了解」

「そういうことでしたら、御意」

「うん」

「OK!」

「大丈夫!」

「……応」


彼らは承諾した。それにマスターは口元を綻ばせると言った。


「さあ今日はもうお休み。ゆっくりと休むのも良いことだよ」


**…


夜征はマスターに休めと言われたが外にいた。外のお社の階段に腰を下ろし、見えることがない月を見上げる。


「何をしてる?」

「見えない月を探していただけですよ」


夜征は背後から聞こえた声に振り向かずに答える。声の人物が夜征の座る段の上の段に腰を下ろす。


「青藍さん」

「呼び捨てで良いと言わなかったか」

「そうでしたっけ?すみません」


声の人物、青藍が不機嫌そうに言ったので夜征はクスリと笑って言った。


「連れは無事か?」

「ええ、無事です。今は兄弟と共に熟睡している頃でしょうね」

「そうか。なら良かった」


青藍が安心したような声色で言う。それを横目で見ながら夜征は再びクスリと口元を押さえて笑った。


「…なんだ?」

「いいえ…ただ…」

「ただ?」


そこまで言って夜征は言葉を切って、一瞬考え込んだ。そして何もなかったかのように彼を見上げる。


「いえ、なんでもありません」

「?本当にか」

「ええ。失礼しました」


青藍は訝しげな顔をしていたが聞くのを諦めたようだった。ふと、青藍の目に夜征が右耳にしている龍をかたどったイヤリングが写った。


「なあ」

「はい?」

「お前がしてるイヤリングの龍って何か名前でもあるのか?」


青藍がそう聞くと夜征は右耳のイヤリングを一撫でし、答えた。


「桜の龍です」

「そうか。不思議な形だな」

「そうでしょうか?」

「嗚呼」

「ふふ。面白いですね、青藍は」


夜征にからかわれたような気がして青藍はムッとした。それに夜征が機嫌を悪くしたのに気づき、「すみません」と軽く頭を下げた。


「あ」


その声に夜征は顔を上げた。見えなかった月がこんばんはと顔を出していた。


「良い月だね。月見酒には持ってこいだ」

「…兄さん」


と今度は酒瓶と3個の盃を持った響が現れた。


「酒か。何処から持ってきた?」

「ハハ、秘密」


青藍の問いに響は笑って答える。と青藍の隣に腰を下ろすと2人に盃を渡す。それを受け取る2人。それに響は酒瓶の酒を並々と注いでいく。


「よっと」

「多い多い。零れるぞ」

「その前に飲めば良い話だろ?ねぇ、夜征」

「えぇと…青藍の言う通りだと思います」

「…あれ?」

「ははははっ!」


青藍が笑うと響と夜征もつられて笑った。笑った後、響は自身の盃にも酒を注ぎ、3人は盃同士をカツン…と合わせて乾杯すると冷たく、美味な酒を喉に流し込んだ。


「やっぱ、月見酒は最高だね」

「兄さんは飲み過ぎ注意ですからね!青藍も飲み過ぎないでください。私は男2人も運べませんからね!?」

「分かってるさ、夜征。これでも俺は酒に強いぞ。酒が強いって言う香と比べたが勝ったくらいだ」

「ほぉー…凄いな」

「………余計に心配ですよ…」


「飲め飲め」と響が青藍の盃に酒を注ぐ前で夜征は心配そうに笑いながら酒を含んだ。


**…


「………眠れない…」


疾風は一人、廊下を歩いていた。眠れないのだ。眠れないから廊下の冷たい空気にでも当たろうと廊下を歩いていたのだ。大部屋には熟睡中の三兄弟と3人を微笑ましそうに見守りつつも寝てしまったマスターがいる。響や夜征は「眠くない」と言って何処かに行ってしまっていた。大部屋の4人を気にしつつも疾風は廊下を歩いていた。

今まで眠れなくなる事はあったが今回は久々過ぎる。


「眠いのになぁ…ああもうっ!」


疾風が廊下で前髪を苛立ちで掻き上げる。


「疾風?」

「?!」


突然、前方から声がした。前方は廊下の壁に灯りがついているが暗い。疾風が前方に目を凝らす。と人影が浮かび上がる。誰…


「こんなとこでなにしてんだ?」

「…香か。君もじゃん、質問をそっくりそのまま返すよ」


人影は香であった。疾風に質問を返されて彼は即答した。


「眠れん」

「え…?香も?」

「俺もって…疾風も?」

「うん」


なんと2人揃って眠れないらしい。そんな偶然に2人は声を潜めて笑い合った。


「なんだか俺達似てるなー」

「そうだね。どうする?僕は眠れないけど部屋に戻らないといけないから行くけど」

「俺もそっち行っていいか?」

「え」


香のまさかの提案に疾風は素っ頓狂な声を出した。それに香はこう答えた。


「俺の方は連れが2人起きててそのまま酒盛り始めたんだ。今夜は飲む気になれなくて断ったが戻ったら絶対、絡まれて余計眠れんだろうし」

「なるほどねー…いいよ、来なよ。香なら誰も文句言わないだろうし。僕が誘ったって言えばいいしね」

「恩に着るぜ」


と、云うことで疾風は香を連れて大部屋に戻って来た。障子を静かに開けるとスヤスヤと3人寄り添って眠る三兄弟とその近くには三兄弟と同じ毛布に猫のように包まったマスターが寝ていた。


「…お前のとこのお頭はあんな寝方で大丈夫なのか?」

「大丈夫大丈夫。マスターはああしないと眠れないんだって」

「なるほどな」


2人は静かに部屋に入り、彼らが寝ている反対側の壁に並んで座る。


「で、どうする?」

「話でもするか?」

「なんのだよー」

「アハハ…いやな、俺、お前に会ったことある気がするんだ」

「……」


香が体育座りをし、顔を伏せながら言う。それを疾風は黙って聞いていた。


「気がするだけだからよく分からないが、こう、なんだろ…初めてじゃない。昔からの知り合いみたいに感じる…ハハ、悪いな。変な事言って」


香が自分を嗤う。


「前世…」

「え?」


ポツリと言った疾風の言葉を拾い、香が訝しげな顔をして彼を見る。


「前世じゃない?もししたら僕と香は前世で知り合いだったのかもね」


クスリと笑って疾風が言えば、「なるほど」と香は思った。前世…そこまでは考えてなかった。


「前世かぁ…だったら凄いな!前世でも今でも疾風と知り合えた。改めて宜しくな」

「なんで改めるんだよ…まぁいいけど。宜しく」


2人は改めてに可笑しいなぁと小さく笑いながら握手を交わした。



暫くして香は疾風の隣でスヤスヤと寝てしまっていた。疾風と色々話している間に眠気に襲われたようだ。

疾風は香を見て、嬉しそうに小さく呟いた。


「…嬉しいよ、僕の事、覚えててくれて」


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