第五十肆陣:新異世界への転移
この章も長くなります!話が進みますよー!
緑色の葉が生い茂る木の枝に座っている者。此処から見る眺めはどちらかと云うと最高だ。それに此処からだと全てが見える。
「ん?」
雲ひとつない青空に突如として現れた深緑色の光。その光はゆっくりと、下降して行った。
「…ふーん、呼んだんだ。見に行こっ」
バサリとその木の枝から翼が羽ばたく音がした。そしてそこに残ったのは空中をヒラヒラと優雅に漂う鳶の羽のみだった。
**…
「うっ?!」
「わっ?!」
「ぐぇ?!」
そんな変な声を上げながら着地に失敗した四季、海、左眼丸は見事な三兄弟ピラミッドを作り上げた。
「おー見事な三兄弟ピラミッド。よっ」
その真横に疾風が華麗に着地する。その隣に夜征もなんなく着地し、疾風の言う通りの‘見事な三兄弟ピラミッド’を見てクスリと笑った。
「おや、これは……大丈夫ですか?」
「大丈夫だったらこうなんないよ…夜征兄…」
夜征の言葉に海が苦笑して言う。三兄弟がピラミッドを崩して次々と立ち上がり出す。
「怪我はない?3人共」
その声の方へ顔を向けるとこちらも綺麗に着地した響がいた。そしてその背後からはいつの間に着地したのかマスターが現れ、心配そうな雰囲気を漂わせていた。
「大丈夫だってーの!」
「……平気、平気」
四季が両腕を挙げて叫び、左眼丸も大丈夫だと安心させるように言うとマスターは安心したようで口元が微笑んだ。
「ところで…此処は…」
マスターの言葉に兄弟達が周りを見回す。そこは緑溢れる木々が生い茂り、近くには和風様式の庭と小池がある。何やらあの時(第壱陣の時)と似ているようにも見える。所々から小鳥のさえずりが聞こえてくる。
ザクッと草を踏む音が聞こえ、その方へ全員が顔を向けると一人の青年が立っていた。反射で兄弟達はマスターを背にかばった。それに青年はクスッと笑う。
「ようこそ、少々手荒な真似をしてごめんね」
それに全員はあの深緑色の光を操る(?)正体かと確信した。全員、この異世界に認識がないため歓迎しているが敵の可能性もある。
「そう警戒しないで。ほら、私は何も持っちゃいない」
警戒する彼らを安心させるように両腕を広げ、武器を持っていないことをアピールするがマスター達のように出現させるものだったら意味がない。
それでも警戒を解かないマスター達に青年は呆れることもなく穏やかに笑う。まるで「予想はしていた」とでも言わんばかりに。
青年はクルリとマスター達に背を向ける。マスター達が不思議そうにしていると青年が言った。
「まぁ、立ち話もなんだから屋敷においで。案内するから…大丈夫だって」
警戒するマスター達にそう告げ、歩き出す青年。マスター達は一応、敵ではないと踏み、彼の後を追った。
**…
青年が案内した屋敷はやはり、あの時と似た屋敷だった。いや、武家屋敷と言った方がしっくりくる。古い建物ではあったが古い建物なみの温かさがそこにはあったように感じた。
青年は縁側へ行くと中へと身を乗り出して叫んだ。
「海風!お客さん連れて来たからお茶の用意お願い出来る?」
青年の問いに中から少年の、淡々とした声が返って来た。
「お客さん…?…分かった。誰を連れて来たのかは知らないけど…何人分?」
「えーと…私と海風も入れれば9人だよ」
「分かった」
パタパタ…と屋敷の中で動く気配と音がする。青年はクルリとこちらを振り返って言う。
「どうぞ、上がって。話はそれから」
屋敷に上がることになりました。
**…
屋敷の居間に案内されたマスター達。中もあの時と同じで畳に低いテーブルだ。そのテーブルを囲むようにマスター達が座り、その反対側に例の青年が座っている。お茶を用意した少年は全員の前にお茶を出した後、近くの壁に寄りかかって立っている。
「……聞いてもいいかい?」
「どうぞ」
ようやっとマスターが言葉を搾り出す。何から聞こうか…
「此処は何処だい?何故、私達を連れて来た?」
マスターが真剣な声色で尋ねる。青年は深呼吸をすると言う。
「此処は、いろんな呼び名を持っている。〈和の京〉だとか〈憩いの地〉だとか…でも此処に正式な名前は存在しない。“彼”が創った異世界では無く人工的に創られた異世界…此処までで分かったでしょ?」
青年の瞳がマスター達を射抜く。
“彼”が創った異世界ではない。人工的に創られた異世界…そんなの、‘唯一’しかないじゃないか。
「…異世界の神の子が集う異世界、通称〈神様天国〉」
「正解。やっぱり、知ってる人は知ってるんだね」
響の答えに青年はのんびりと答えるとお茶をすすった。
「で、何故連れて来た?」
響が再び問うと青年は言う。
「理由は色々あるんだけどね…一人、彼の手伝いをしてもらえないかな?」
青年が壁に寄りかかって立っている少年を示した。少年は驚いたようで目を見開いた。
「なんで?理由言ったらいいじゃん」
四季が不貞腐れたように反論を述べると青年はクスクスと笑って言った。
「こっちの都合上、悪いけどすぐに話すわけにはいかなくてね。〈神様天国〉にまだ残っている住人と少々触れ合って貰いたいんだよ」
「そっちの都合上、ですか…どうしますマスター」
夜征がマスターに答えを聞く。
いや、答えは決まっているも当然ではないか。情報のためならば、出来る限りのことをしよう。“彼”を探して此処まで来たのだから。
「良いよ。そっちの都合に付き合おう。さて、その少年の手伝いを…疾風、お願いするよ」
「了解、マスター」
「承諾してくれるとは…ちょっと驚いているよ」
青年にとって予想外だったようだ。目を丸くしている。マスターはそんな青年を見て、クスッと笑った。
「私達はもう少しで真実に辿り着くと分かっている。真実のためだ。それに…休憩も良いかと思ってね」
マスターの答えに青年が笑ったのは言うまでもない。




