第五十弐陣:それぞれの道へ
お久しぶりです。
「オレ達は『神』を許す気など全くもってない」
「オレ達『神』だって人間のした事を許しなどしない」
久しぶりに晴れ渡っていると云う青空の下。蘭丸と悠鏻が向き合い、相手を睨みつけていた。鈴蘭は喧嘩が起きやしないかとオロオロしておりそれを天と悠憐が「落ち着け」となだめている。他の者達(櫻やカルリヴァも含む)は蘭丸と悠鏻の行方を近くで見守っている。
「〈レイドクリーチャー〉、〈神の使徒〉はオレ達と戦ったので全てだろ?」
「まぁな。せっかく造ったのに完全に存在価値が霞んじまった」
お互い、睨みつけながらも続く会話。と悠鏻が蘭丸から視線を外し、俯くとフッと笑った。
「……罰は自分に与えよう。償いと云う名の罰を」
「そうしてくれ。こんなにしてくれたんだから、作り直すの手伝えよ」
蘭丸が悠鏻に手を差し出すとそれを彼が握り返した。それは新しい和平案。‘償い’と云う名の平和だった。
「悠憐!」
「はいよ!悠鏻!」
悠憐が鈴蘭と天の元から双子の片割れの元へ笑顔で行く。
「えへへ。良かったね悠鏻」
「……嗚呼」
悠憐が笑うと彼は小さく笑った。悠憐は悠鏻の両肩に自身の両手を置く。
「ウチらはこれから他の『神』に新和平案承諾の事を伝えて来るから。もし、裏切りだと思った行動をウチらが取った場合は…わかってる?」
「レ、レン姉様!!」
「いいじゃない、保険よ保険。前例があるんだしね」
反論するように声を荒げる鈴蘭に悠鏻がウインクをかまして安心するように言う。鈴蘭が心配そうに手を組む。それに気づいた天とカルリヴァが顔を見合わせて頷き合うと「『はいっ!』」と元気に手を挙げた。
「?天?」
『えーと、カルリヴァ?どうした?』
天の兄と櫻が問うと2人は悪戯っ子のように笑う。
「アメ達が保険としてついて行く!」
『そうすれば裏切りかどうか一発だしネ♪』
「危ないからダメだ!!」
「『えーーーー』」
その提案に蘭丸が即答すると2人からブーイングが飛ぶ。しかし悠鏻はいい案だと頷いている。2人の案が採用されそうだ。すると今度は鳴時が声を上げた。
「俺も行けばいいんじゃね?それなら安全だろ?」
「うっ…でもさ「ついでに言うと俺はお前が思ってるよりやわじゃないからな」…」
蘭丸がうーんと悩む。天とカルリヴァの期待の眼差しに半分(多分、半分以上)完敗した蘭丸はため息を付くと言った。
「気を付けろよ」
「『やったー!!』」
「決まりねー!」
喜びながらハイタッチする2人を尻目に悠憐が言う。櫻は苦笑いで心配そうに腕を組む蘭丸を見ている。
これからは敵であった両者が‘償い’を行う。先は未知数だ。どうなるかも分からない。全てに保険がいるような現状だ。
マスターは一段落した話の合間を見て告げた。
「それでは私達も元の場所へ帰るよ」
もう、この異世界に留まる必要はない。未来しか見ていないこの異世界に私達のようなまさしく異端は似合わない。
それにあの2人が言っていた言葉。それを紐解けば真実が分かる気がした。
マスター達との別れに蘭丸達が世話になったり仲良くなった人達に話しかけて行く。
「お兄ちゃんと離れるのヤダー」
「アメちゃん、泣いちゃダメ」
天が四季に抱きつきながら涙する。四季は彼女と同じ視線になると言う。
「アンタは強くならなきゃ。もうあの頃のか弱い女の子じゃない…でしょ?」
「…うん、アメ、あたし、お兄達よりも強くなる!」
やる気満々で告げた宣言に四季は笑い、天の頭を優しく撫でた。そしてにっこりと笑う。
「頑張って」
カルリヴァはフワフワと空中に浮いたまま海と左眼丸に話しかけた。
『君らの攻撃とかもっと見たかったケドなー』
「何言ってんの?ちゃんと今まで来なかった分、守ってあげなよ」
「……お前が強い事は間違いない」
「ほら、左眼丸もこう言ってるし」
海と左眼丸の言葉にカルリヴァはやる気がみなぎって来た。そして腕を天高く挙げた。
『まっかせなさーい!!まーちゃんと一緒にやってやるんだから!!』
「その行きその行き!」
「…頑張れ」
鳴時は櫻を連れて夜征と疾風の元へ行った。2人を2人は笑顔で迎えてくれた。
「桜舞、疾風。言い忘れた事があるんだ」
「?なんですか?言い忘れた事って?」
「気になるね夜征兄」
鳴時の言った事に2人は首を傾げる。そして何やら以前は見なかった笑みを浮かべる櫻を一目見た。鳴時はそれを尻目に言った。
「‘会った時から俺達引っかかってた’って言ったよな?その‘俺達’ってのが櫻なんだ」
『鳴時から話を聞いて思い出した。俺も転生したんだ。覚えてるかな?』
鳴時と櫻の衝撃的な発言に夜征と疾風は驚愕したようだったがなんとなく納得してしまっていた。会った時から違和感があったのはこちらもなのだ。疾風は「もしかして…」と前世、過去のこの人ではないかと模索する。
「…葉くん?もしかして…」
『正解。久しぶり、2人共』
「葉樹だったんですか。なんか納得します」
疾風が告げた名が当たっていたらしく櫻は容姿にはあまり合わない笑みを浮かべた。そして見事正解した疾風の頭を透明な手で撫でた。納得したように夜征が手を叩く。
櫻と疾風が楽しそうに喋る横で鳴時は最後になるであろう名を口にしつつ、別れを告げる。
「何処かで…いや、来世でまた会えるといいな、雅」
「次は平和な世の中が理想ですね、桜樹」
2人は笑って固い握手を交わす。きっともう今世では会えない。そう、確信した握手だった。それを見て、喋っていた2人も固い握手を交わした。
『元気でね、チィ』
「そんな呼び方するの君くらいだよ葉くん」
鈴蘭はマスターと響に近寄り、バッと顔を上げ、言った。
「あ、の、色々お世話になりました!ありがとうございました!」
ガバッと2人に頭を下げる鈴蘭。それに2人は面食らったようにキョトンとして顔を見合わせた。
「オレからも感謝する。ありがとう」
「わっ、蘭丸さんっ」
唐突にやって来て蘭丸は鈴蘭の頭を撫でた。それに鈴蘭が驚きつつ頭を上げる。
「いいんだよ。私達がしたかった事だ。迷惑になっていない事の方が不思議だね」
「ハハ、かもね」
マスターが冗談交じりに言うと響が可笑しそうに笑う。それに蘭丸と鈴蘭も笑う。
「お元気でっ!」
「そちらもな。こちらも世話になった」
両者が別れの言葉を交わして行く。
そうして何時間後かには彼らは別れた。二度と会えないと知りつつも。蘭丸や鈴蘭達はあの2人が言った事を聞いて来なかった。遠慮したのかはたまた知っていたのか。今となっては不明だ。
**…
「んじゃ、この3人借りるよー」
マスター達と別れた蘭丸達。今度は天とカルリヴァ、鳴時が双子と共に旅立つ番であった。蘭丸は妹に何度も何度も確認を繰り返し、カルリヴァと鳴時に飽きられていた。
双子は3人 (うち一人は既に浮いている)が空中散歩出来ないと云う事で徒歩に決定し、「数日で戻る」と言い残し、旅立った。
3人だけとなり、櫻が唐突に呟いた。
『終わった…実感がないや』
「そうだな」
クスリと笑う櫻に蘭丸も笑う。と鈴蘭が「あっ」と声を上げた。
「?どうした鈴蘭」
「…結局、僕が探してる人達、見つからなかったなって…」
悲しそうに、沈んだ声色で告げる鈴蘭。鈴蘭が以前言っていた‘ある人達’の事だろう。櫻は透明な手で優しくポンっと鈴蘭の頭を叩いた。
『きっと見つかるさ』
「!!…はい!!」
力強く頷いた鈴蘭は蘭丸から見ても始めて会った時とは見違えるほどに成長していた。




