第四十捌陣:三兄弟と天の祈り
「アメちゃん!」
「ふぁわい!」
四季が〈レイドクリーチャー〉に攻撃されかけていた天を横から抱き上げると真ん前の敵に大鎌で攻撃し、倒す。
「はい、ど・け!」
バンッッ!!海が放った銃弾が〈レイドクリーチャー〉に被弾する。乱射された銃弾は〈レイドクリーチャー〉の急所を貫いて倒して行く。
「……覚悟はいいか」
バッと左眼丸が大量のお札を投げた。それが〈レイドクリーチャー〉に引っ付く。薙刀で別の敵を薙ぎ払いながら発動させるとお札が張り付いた〈レイドクリーチャー〉は感電や炎に包まれて倒れる。
だが3人が何度も何度も攻撃しても気持ち悪いくらいにうじゃうじゃいる〈レイドクリーチャー〉は減るところを知らない。なんか増えてる気がする…
「お兄ちゃんー降ろしてー」
「ああああ!ダメだよアメちゃんー!どうする?」
「うーん…一気に、少しでも多く倒す方法…あ!」
「……あったな」
三兄弟が顔を見合わせ、同じ事を思いついた事にニィと笑い合う。それが分からんと天は四季の腕の中で首を傾げていた。
「でもさ」と海が残念そうに顔をしかめる。
「時間かかるよね、あれ」
「………誰かが時間……稼ぎ…しない、と」
「でも1人でも抜けたら成功しないよ?!」
「う、うぅーん…」
「じゃあ、アメが時間稼ぐよ!!」
「「「は?!」」」
その発言に三兄弟は素っ頓狂な声を上げた。そしてその無謀ともいえる発言に三兄弟は天を見た。天は笑いながらネックレスを掲げる。
「もう少しで出来そうなの!」
「でもそれだとアメちゃんが一時的とは言えっ、無防備にっ」
海がマシンガンで近付いて来た〈レイドクリーチャー〉を蹴散らしながら言う。そう、一時的とは言え、攻撃手段を持たない小さい女の子が無防備になるのだ。いただけない。
それでも大丈夫だと笑う天。天は三兄弟の止める声も聞かず、四季の腕の中から飛び降りるとちょうど〈レイドクリーチャー〉が作った円の中にうまく空中で回転して着地する。〈レイドクリーチャー〉は突然現れた小さい女の子に仰天しているようだった。
「こんにちは」
天はにっこりと敵である〈レイドクリーチャー〉に向かって笑いかけるとネックレスを強く握りしめ、祈り乞う。
「お願い!!」
そう叫んだ。〈レイドクリーチャー〉がこれ幸いと天に襲いかかる。三兄弟が助けに向かおうとするが道を塞ぐ〈レイドクリーチャー〉の群れで移動出来ない。〈レイドクリーチャー〉の鋭い爪が天に向かって迫る。
がその爪は突然、スパッと切られた。呆気に取られるその雰囲気を壊す声が突如響き渡った。
『はーい♪あたしの主サマに手出しさせないよ〜!』
「「「……え」」」
天の隣にフワフワと足を組んで浮かぶ少女がいた。ウインクをかましながら天を攻撃しようとしていた〈レイドクリーチャー〉に下がれよと威圧する。
「出来たぁ〜!!」
『よっろしくね〜あたしの主サマ!あたしはカルリヴァ=シード。話は聞いたからお任せ、あ・れ!』
笑顔で嬉しそうに言う天にその少女は告げる。天の力が上手くいったようだ。
少女、カルリヴァ=シードは櫻のように透明な体で頭から腰辺りまである白い生地をかぶっている。そのため顔は見えないが服は朱色と黒を基調とした軍服のようで両肘と両膝に当てをつけている。
「よろしくね!」
『あいよ〜じゃあ、おいで!あたしの愛しの武器!』
カルリヴァが手を出すとそこに一振りの刀が現れる。それを天の前にかざし、〈レイドクリーチャー〉を威嚇する。
「お兄ちゃん!やって!こっちはアメとカルリヴァに任せてぇー!!」
天が驚いたまま固まっている三兄弟を振り返り、手を振る。〈レイドクリーチャー〉は新たな敵に視線が釘付けなため三兄弟の思惑に気づいていない。
「でもっ」
「四季、ああ言ってるんだし甘えさせて貰おう」
四季の肩をポンッと叩いて海が言う。それに四季は少し悩んだ後、うんと頷く。左眼丸もよしと瞳で同意し、それを天に投げかけると天は「はいっ!」と敬礼して笑った。
カルリヴァは組んでいた足を崩して〈レイドクリーチャー〉に切りかかった。そして次々と倒していく。天はネックレスを握りしめ、カルリヴァに力を与えている。
三兄弟は背中合わせに立つと武器を目前にかざす。息を吐き、落ち着くように深呼吸をする。
さあ、やろう。
三兄弟は自らの武器に集中し、〈力〉をこめる。武器がそれぞれの色に輝き出す。
「いける?」
「いけそう」
「…うん」
四季が聞くと兄弟が答える。
「‘ ‘ 我らの意志と ’ ’」
「‘ ‘ 我らの思いと ’ ’」
「‘ ‘ 我らの力よ ’ ’」
「「「‘ ‘ 我らの敵を滅ぼせ ’ ’」」」
最後に三兄弟ぴったりに叫ぶと三兄弟の武器の光がバッと波紋が広がり、天とカルリヴァを狙っていた〈レイドクリーチャー〉全ての動きを止めた。ピタリと、時間が止まったかのように動きを止めた。〈レイドクリーチャー〉は抵抗して三兄弟に攻撃を飛ばすが三兄弟の武器から放たれる光によって消される。三兄弟が一斉に空へ高く高く、跳躍する。光輝く武器を動きを止めた〈レイドクリーチャー〉に向ける。
「この刃で逝けっ!!」
「粉々にしてやるよ!!」
「チリも残らぬと思え!!」
三兄弟の武器から放たれる光と大きな攻撃が真下の大量の、身動きがとれない〈レイドクリーチャー〉に向かって放出された。土煙が舞う中、〈レイドクリーチャー〉が次々と三兄弟の攻撃によって倒れていく。
『うっひょーー!!??ナニコレスッゲェー!!主サマーいるー?』
「アメ、いるよー!」
カルリヴァが楽しそうに笑いながら小さな天を生地の中に手繰り寄せ、守る。バッタバッタとドミノ倒しのように倒れていく〈レイドクリーチャー〉の群れ。土煙が濃くなる。
しばらくして攻撃の音も倒れる音もしなくなった頃、土煙が晴れた。そこにあったのは無数の亡骸。〈レイドクリーチャー〉の亡骸の山だった。
『おおーーー!!一気に倒したねぇ』
カルリヴァが感心した声を上げたながら〈レイドクリーチャー〉の亡骸の山を愉快そうに見やる。天はキョロキョロと三兄弟を探す。見つけたようだ。パァァと天の顔に笑顔が広がる。
「お兄ちゃん!!」
天がテテテと走り、亡骸の山の影から出てきた四季に抱きつく。四季はそれを抱き上げ、きゃっきゃと笑う天に笑顔を返す。
「上手く行ったね」
「ねぇ〜」
「……大成功」
「「イエイ☆」」
パンッ!と三兄弟が笑顔でハイタッチをかわす。天も三兄弟とハイタッチをかわすと一人空中に浮いていたカルリヴァを呼んだ。
『なぁーに主サマ?』
「えぇっと、ね?」
天は四季に抱かれながら、カルリヴァを見上げる。何か言いたそうであるが恥ずかしいようだ。後ろから四季や海、左眼丸が小さい声で応援を飛ばしている。よしっと意気込んで天が言う。
「来てくれてありがとっ!すっごく嬉しいよ!これからも…ずっとよろしくね!!」
『っ!』
笑顔で言われたその言葉にカルリヴァは生地に顔をうずめ、手にしていた刀を両腕で抱き締めるように持つと叫んだ。その瞳には嬉しさが宿っている。
『こっちこそ!!ずっとよろしくするよ!!このあたし、カルリヴァ=シードとあたしの愛刀、まーちゃんはずっと主サマと一緒だよ!』
「ありがとう、カルリヴァ!」
微笑ましい光景なのだが場面が場面すぎて少し残念だなと左眼丸が思ったのは此処だけの話。




