第四十陸陣:『神』と人間の真実 Ⅰ
「記憶は…時に、自我をも乱す」
ひしめき合う〈レイドクリーチャー〉と『神』、そして驚く彼らを廃墟の建物の屋上に座って見ていたその人物は唐突にそう呟いた。足を空中に投げ出し、ブラブラさせる。
「……囚われすぎて、囚人に成れ果てるのは簡単…でも、向き合うのは…簡単ではない…」
人物は立ち上がり、隣にやって来たもう一人を見やると武器を抜き放つ。
「だったら…手伝って差し上げましょう…記憶に、過去に囚われすぎた愚か者に…“彼”から与えられた…罰を」
そして2人は闘い始めた群れの中に身を投げた。
**…
「やっと見つけたのか」
「遅かったね」
クスクスと無機質な冷たい瞳で嗤う少年と少女。〈レイドクリーチャー〉は今だにこうべを垂れている。と2人は鈴蘭を見ると一瞥した。
「何故…オレ達、人間を狩る?!オレ達が何をしたと云うんだよ?!」
蘭丸が天から離れ、立ち上がると右の刀を少年と少女に向け、叫んだ。それに少年がクスッと嗤って言った。
「何をした?忘れたのか。‘あの日’の事も」
「‘あの日’?あの日っていつの日?お兄」
天が意味が分からないと首を傾げる。だが蘭丸と鳴時、鈴蘭だけでは分かっていた。マスターはまさかと思って懐から本を取り出すと〈大罪楽園〉のページを開く。そこには今まで書かれていなかったこの異世界の情報が書き込まれ始めていた。血のような紅い色が白紙に文字を刻みこんで行く。そして浮かび上がったのはーーー
「‘あの日’…まさか…‘あの日’の事か?アレはもう解決したはずだぜ!?」
鳴時が左手を横に振り、言う。それに少女は憎しみを宿した瞳で鳴時を見やった。鳴時は驚いたように少し後退りする。
「解決してないからこうして狩ってあげてるんでしょ?!」
「ぐあっ!」
バッと少女が右手を横に空を切ると鳴時を何かが襲った。その何かを鳴時は両腕で防ぐ。怪我はないようだ。
「大丈夫?鳴くん!」
「平気だ」
四季が心配して叫ぶと彼は大丈夫だと笑った。
「‘あの日’、オレ達『神』に全面戦争を仕掛けたのは人間だったよな。仕掛けた理由が理由で笑ったぜ…『神』のせいで全てが台無しだって?!巫山戯んなよ!!」
少年が叫ぶ。その声色には怒りと憎しみが宿る。蘭丸が険しい顔付きで叫び返す。
「アレは人間最大の過ちだ!乗せられたんだよっ!終戦した後、過ちを認め、謝っただろう?!」
蘭丸の弁解に少年も少女も耳を貸す気はないようだ。少女が叫ぶ。
「嘘つき!なら何故あの時、君達は『神』を殺したの?!」
「っ」
「『神』を殺せば良いと思ったの?馬鹿だよね…余計に裏切るだけなのにっ!」
少女の目尻には涙が溜まっていたようでその涙が飛び散る。
〈大罪楽園〉で起こった人間最大の過ち。『神』に全面戦争を仕掛け、『神』を裏切った。終戦後、『神』と人間の和平案成立時に『神』が一人、人間によって殺された。『神』は人間の知らない間に怒り狂い、そして決めた。裏切り者を理想郷から排除することを。
蘭丸は唇を噛みしめる。全部、オレ達人間のせいかよ…これが人間の末路かよ!!
「嘘つきはそちらではなかろうか」
「は?」
マスターが一歩、前に歩み出て言う。マスターの発言に少年と少女の顔が歪む。何が言いたい、そう言わなくても予想はついた。マスターは淡々と告げる。
「蘭丸殿、人間は『神』を戦争以外で殺したか?」
マスターの質問に蘭丸は怪訝な顔をしつつも即答した。
「オレが知ってる限りでは殺していない。和平案成立の時だって武器の持ち込みは厳禁だった。それに…全員、『神』に謝りたいと自ら申し出た人達で構成されていた…」
「だ、そうだ。もしその中に本当の裏切り者がいたとしたらどうやって『神』を殺す?現にそう云う情報は知らないと証言している。鳴時殿もそうかな?」
突然振られた話に鳴時は動揺しつつもそうだと力強く頷いた。それにマスターはやはりかと「うむ」と唸った。蘭丸達からしたらマスターは真実を炙り出そうとしているのかわからないし少年と少女に至ってはこいつは何が言いたいと云う感じだ。だが響達はマスターがやろうとしている事に気づいているらしい。
「っ。でも現に人間は『神』を殺した。グルだった構成員全員、罰を受けて死んだ!!最も重い銃殺で!!」
少年の言葉に蘭丸と鳴時は驚いたように目を見開き、その口からは「可笑しい…」と零れ落ちた。
「なんでそれを『神』が知ってんだよ…銃殺の罰は、人間しか知らないはず…!」
「………………っ」
蘭丸の驚いた声が告げた真実に少年と少女は顔を歪ませた。マスターは細く微笑む。
もう少し。もう少しで真実が浮かび上がる。
「だ、そうだが何故『神』は知っているのかな?『神』であろうとも人間にしか知らされていない情報は入手出来やしない…『神』の唯一の弱点とも言えよう」
「嘘つきの嘘はもう、暴かれた。‘和平案成立時、人間は『神』を殺していない’「ハハハ!!!本当、お前達は馬鹿だな!!」…何」
マスターに続いて響が言おうとしたのを少年が高笑いと共に遮る。少年の高笑いに隣の少女はクスリと勝利を確信したかのように嗤う。
マスターは思う。まさか…殺された『神』と云うのは…
「『神』は殺されたさ。和平案成立時にな。でも…お前達人間が決して知り得ない『神』だがなっ!」
「俺達が‘決して知り得ない『神』’……!!!まさか…」
「ふふふ、ご名答ね!人間は殺したのよ、『神』にカウントされない異端の『神』を!和平案成立時にウチらの目の前でね!!」
少女が不気味に嗤う。両目から流れる涙は薄い水色のはずなのに紅い血涙に見えて仕方がなかった。
鳴時が憎しみと恐怖、驚愕で目を見開く。
「構成員は武器は持ち込んでいなかった。ちゃんとこっちも確認したしね。でもあいつら…違うのを持っていた…呪具を持ってたんだよ?!その呪具の隠し場所何処だかわかる?目だよ、目の中!!」
少女が興奮気味に叫ぶ。目の中に隠されちゃ手出しは出来やしない。
「その目の中に隠された呪具で異端の『神』を殺したのか、人間は」
「そうだ!上の奴らだけ知ってて罰を受け、下の奴らは罰を受けずにのうのうと暮らしているのが腹立たしいんだよ!」
「だからってアメ達を消すの?」
天が悲しそうに問うと少年と少女は彼女と同じように悲しい顔をした。
「ごめんね、これは君達への罰と共にウチらへの罰なの」
「『神』、への罰?」
少女の答えを蘭丸が復唱する。それに頷く少女。
異端でも『神』である者を殺した人間は理不尽だが罰を受ける。全面戦争を仕掛けたのはこちらで、あちらが悲しみに暮れていてもお構いなしにのうのうと暮らしていた。『神』からの罰。
『神』への罰とは一体どういう事なのだろうか。
「こんなになるまで放置した罰。粛清を下すのをためらった…そうだよね、〈神の花魁〉…」
少女が愉快そうに嗤い、視線を投げる。その視線の先を全員が振り返る。
「嘘、だろ…」
「ふぇ?」
蘭丸達の混乱した声が響く中、蘭丸はその人物を見据える。その人物は先程まで俯いていた顔を上げ、その瞳を少年と少女に向けた。
自分で書いといて途中からこんがらがるキセキよ一体(笑)
多分、そんな重要ではないと思うので難しく考えなくてもOKです(←)




