第四十陣:彼の過去と、その発言
文才が欲しいです。アイディアも欲しいです。遅くなりましたが投稿します!今週はペースゆっくりです!
翌朝、起きた天と三兄弟に鈴蘭の事を話した。天は兄にそっくりな鈴蘭を気に入ったらしい。マスター達と蘭丸達は『神』の思惑を探ると云う目的が一致していたためしばらくの間、同行する事になった。鈴蘭は蘭丸達が保護すると云う事で落ち着いた。
マスター達は『災い』が何かも分からないがその影響で本には何も出てこない。そのためマスター達は蘭丸達から情報を得るしかなかったため同行するしか方法がなかった。
廃墟の家を出て廃墟となった街を歩いているとある建物の前で蘭丸と鳴時が止まった。2人を少し追い越して残った彼らが2人を振り返った。
「お兄ー鳴兄ーどうしたのー?」
四季に抱かれた天が聞く。鳴時がニィと笑って立ち止まった建物を指差す。
「水があるぜ。久しぶりの風呂だ」
「そんな事どうして分かるの?」
それに鈴蘭が主に蘭丸の顔色を伺うように問うと蘭丸が静かに、と指示。みんなが静かにすると…チョロチョロ…と水の流れる音が聞こえた。
「驚いた。よくこんな小さな音がわかったね」
「そりゃ、〈レイドクリーチャー〉に怯えて暮らしてんだから音には敏感さ。ほら、行くぞ」
響の問いに蘭丸が自慢げに答えて建物へとさっさと入って行く。それに鳴時が続く。
蘭丸の答えに鈴蘭がビクリとしたが誰も気づかなかった。
「行こっ」
「……」
海が手の空いている左眼丸の手首を掴んで引っ張っていく。左眼丸はそれに逆らう事なく従う。
「では、私達も行こうか」
「そうだね、マスター。お先にどうぞ?」
「おや、それではお言葉に甘えて」
響がお先にどうぞとマスターに右手を差し出す。とマスターは少々嬉しそうに答えて先に行き、それを追って響が行く。
「アメ、お風呂好きだけど泥水のお風呂はキライ」
「泥水のお風呂?!どういう事?!」
「それくらい現状が現状なのでしょうねぇ」
天がポツリとそんな事を呟く。それに四季が「ウソでしょ?!」と反応し、夜征が「しょうがないんでしょうかね」と吹っ切れたように言いながら続く。
「……あのさ」
「うひゃい!…あ」
「そんな怯えてると余計に怪しいよ」
ビクビクしている鈴蘭にそう一言告げ、疾風は兄弟の後を追って行く。一人残った鈴蘭は俯き加減に小さくいなくなった疾風に同意するように頷くと彼らを追って走り出した。
**…
蘭丸と鳴時が見つけた建物は元は旅館のようだった。旅館の人は〈レイドクリーチャー〉に殺られてしまったのかある一室の壁が真っ赤に染まっていた。が何故か唯一、男女の露天風呂だけはお湯が張っていた。それをいい事に彼らは久しぶりの風呂と洒落込むことにした。天は女の子だが一人は危ないと今まで蘭丸と鳴時と交代で見張っている間に済ませていた。が今回は人が多く…
「じゃあ、私と一緒に入ろうか」
「「え??」」
マスターが天に言った言葉に蘭丸と鈴蘭が声を合わせて驚愕した。
え、今、「一緒に入ろう」って言った?天に?…って事は…
「お…お前、女だったのか?」
「やだなぁ蘭丸。気づかなかったのか?」
「お兄、知らなかったの?アメすぐ分かったよー!」
何を今更と云うように鳴時と天が言う。鈴蘭は今だ困惑中。
そう、マスターは女性だ。やっと性別が判明したが場面がお風呂なのは申し訳ない。しかし、大体は予想出来ていたのではないだろうか?現に鳴時や天がその代表だ。
「マスターったら自分の性別気にしない感性の持ち主だからねー」
「顔隠してるからわからなくて当然でしょー」
「………当たり前…」
「マスターですしね」
「ねぇー」
「分かってると思ってたけど…」
「そんなに意外だったかな?」
マスター達の発言に分からなかった蘭丸と鈴蘭は納得した。こいつらがこうじゃ分かる訳ねぇわ!!
「ただ単にお前ら2人が鈍いだけだ」
鳴時のその言葉が2人の心にグサリと来たのは内緒である。
と云う事で女性であるマスターと天が女湯、残り全員の男が見張りと入る者に分かれる事になった。
マスターが天の手を引いて天が楽しそうに女湯に消えて行ったのを見届けて見張り役の鈴蘭が口を開いた。
「どうして…女性って分かったの?」
その質問に同じく見張り役の鳴時が答えた。他にも見張り役として残っていた響と海も興味深そうに2人の話に耳を傾けている。他の男性陣は既に男湯に行っており、4人がいるのは男湯、女湯の破れた暖簾がかかった反対側の壁際である。ちなみに全員立っており、鈴蘭、鳴時、海、響の順に立っている。
「んーそりゃあミカは所々三日月や桜舞達と違う雰囲気だったしな。それにあいつらが気ぃ使ってるって事は女性の確率が高いしな。女性は男性よりも大変だろうし」
「よくそこまで考えたもんだね」
海が鳴時の答えに感心したように言うと彼は笑って自身の頭を指差した。
「長年の経験だ」
「す、凄い!」
「……鳴時ってさ、蘭丸と天以外にも連れいたでしょ」
響が唐突に告げると鳴時は響の方へ身を乗り出して
「なんでそぉ思うんだ?」
と問った。海は響がどう答えるのか気になったのか隣の彼を見上げる。鈴蘭もさっきとは打って変わってどう答えるのかと鳴時のように響の方へ身を乗り出していた。響は両腕を組んで言う。
「まぁこれと言った決定的な事はないんだけどね。違和感かな。鳴時は蘭丸と天と一緒に行動し始めてまだ一年経ってないかくらい。それなのにそこまで思考が回ると云う事は別のタイプの連れと以前まで一緒だった。そこでも蘭丸みたいな人がいたんじゃないかな?…どうかな?」
響の答えに鳴時は一瞬、目を丸くした後、クスッと笑った。
「正解だ。でも正確には蘭丸達とはまだ半年の付き合いだ。三日月の言う通り蘭丸達より以前は別の連れがいたが…こっから先は有料な」
そう言って人差し指を口元に当て片目を閉じて言う鳴時。それに聞いてはいけないと感じ取った響は片手を振ってその話題を終わらせた。海は響の動作の意味が分かったが鈴蘭は分からなかったらしく爆弾発言をした。
「死んだの?」
「っ!」
「鈴蘭!ちょっと!!」
海が何言ってんだと叫ぶ。鳴時は苦しそうに、辛そうに顔を歪ませた。響は鳴時の様子が可笑しいと気づき、心配そうにそちらへ身を乗り出した。一方、爆弾発言をした当の本人は天然なのか変な事言った?と首を傾げている。
「何言ってんだよ鈴蘭!」
「え、だって‘以前’はいたんでしょ?んで今は蘭丸さんと天ちゃんと一緒に行動してるんでしょ?普通、死んだと考えた方が妥当じゃないの?」
「あのね、人の友好関係に…この場合は鳴くんね、そんな簡単に死んだとか言わないの!生きてるかもしれないのに。人には人の秘密があるんだ。鳴くんの気持ち考えろよ!!」
海に説明されて鈴蘭は納得したようにパンッと両手を叩くとにこやかに笑って言った。
「じゃあやっぱり死んだんだ」
「黙れ」
ダンッ!鳴時が鈴蘭の胸倉を掴み上げ、壁に押し付けた。その行動だけでどれだけ鳴時が怒っているか容易に想像できる。鈴蘭は何が起きたのか分かっていないらしく混乱したように鳴時の手を見つめている。海が止めに入ろうとするがそれを響が彼の肩を掴んで止めた。
「………」
「えーと…鳴時さん?」
「…勝手に…」
「え?」
鳴時が顔を上げ、鈴蘭にその怒気を含んだ声色で告げる。
「勝手に俺っちの仲間を殺すな。てめぇに俺っちの仲間の何が分かる。分かったように死んだ死んだと連呼すんじゃねぇよ。今は此処にいねぇかもしんねぇが…大切な、大事な仲間をこれ以上穢すんだったら本気で相手してやるぜ?」
「……っ……あ…僕が……無神経、でした…すいません…」
鳴時の怒気に気圧されたのか鈴蘭は自分の行いの間違いに気づき、怯えを通り越して冷静に彼に謝った。鳴時はよしとしたのか胸倉を離した。途端に鈴蘭が床に落ちる。床に座り込んだ鈴蘭を見下ろし、鳴時は凍り付くような、ただ単に冷たい声色で言う。
「次からは自分の発言に気をつけろ」
そして踵を返して男湯の方へと歩いて行く。とちょうど夜征が上がったらしく髪に滴を数滴つけ、首元を緩めた状態で出てきた。
「上がりましたよ…って、え、鳴時さん?」
明らかに怒ったような鳴時が横を通って行ったので何があったと外の3人に視線を投げかける。海がごめんねと夜征に軽く頭を下げて男湯の暖簾をくぐる。
響は座り込んだままの鈴蘭に一応優しく言う。
「君がどんな状況で此処まで来たのかは知らないけれどちゃんと考えてね。今、俺達は一緒に行動してる身なんだから」
こくりと小さく頷いた鈴蘭は立ち上がって「すいませんでした…」と響に謝ると急いで先程の2人を追った。夜征は響の背後に来て言う。
「どうしたんですか?」
「んーちょっとした喧嘩かな。ごめんね心配させて」
そう言って響がポンとすれ違いざまに夜征の肩を叩くと彼は「いいえ」と答えた。それに響はクスリと口元をほころばせて暖簾をくぐった。




