第三十玖陣:怪我を負った未知数の
「…ハァ…ハァ……っ…イッタ」
右肩と背中に刻まれた傷が痛んだ。
早く逃げないと。それだけが思考を支配する。
後ろから追いかけてくる奴らは多分、僕が本気を出して戦えば勝てる。けど今、3人共いないし…!いや、3人?3本?3振り?3匹?どれでもいいや。とりあえず、今のこの状況はフリ!
「…!う、わっ?!」
ーズバッ!ー
あっぶなーちょっと右の髪切れちゃったかな?いやいやそんな事気にしてる場合じゃない。逃げなきゃ!
んん〜あいつらしつこいな〜しょうがない。使うか。
僕は追いかけてくる奴らを振り返って両手に力を込める。ごめんね、ちょっとだけ力借りるね
「快疾…でやぁ!」
ズンッって鈍い音がしてあいつらにたくさんの蝶々が襲いかかる。そのまま蝶々と戯れていればいいよ。んでその内、蝶々と一緒に籠に入っちゃえ!
僕はそのまま逃げようとしてまた駆け出した。
ーズバッー
「へ?」
今度は左足かよ…容赦ない!
痛む体を無理矢理動かし、逃げる。
逃げる中、大量の血が流れて出たから意識が…朦朧としちゃって…
「…うっ」
どっかに来ちゃったみたいで……あれ?僕…これでも…体力ある、方…なのにな……
そ…いえば…3人は…何処?…沙雪…快疾…衣緒…ねぇ…何処行ったの…?
「……」
ドタッ…倒れた。誰かが駆け寄ってくる…誰だろ…
「おい!大丈夫か?!」
僕にそっくりな人?…あ、ダメだ…意識が途切r……
意識を完全に失う前に僕は、3人の姿を久しぶりに見た、気がした。
**…
「…………ん」
「あっ、目、覚ました!」
「マスター!蘭丸さん!鳴時さん!起きました!」
響、夜征、疾風が少年の傷を治して早数時間。空は暗くなり、天は眠くなって心配であったが眠ってしまった。それを三兄弟がお守りとなって見守っていた頃だった。少年がようやっと目覚めた。
少年はゆっくりと起き上がるとこちらに近づいて来た3人、特に蘭丸を見て目を見開いていた。
「良かったな…にしても似てるな蘭丸殿と」
「だよな」
「君、怪我は治したけどどっか痛いとこある?」
マスターと鳴時の会話を無視し、響が少年に問うと彼は大丈夫だと首を横に振った。
響、夜征、疾風の〈治癒力〉は蘭丸や天の兄妹みたいなモノとして認識されたようだ。
「ありがとうございます…」
「良いですよ。お礼なら君を見つけた蘭丸さんに言うことですね」
夜征が笑って言う。少年は自分にそっくりな蘭丸を見上げて、小さく「ありがとうございます…」と呟いた。それに蘭丸は頷いて答える。
「マスターアメちゃんさ、起こさないで明日報告しといた方が良い?」
「そうだな、そうしよう。お前達も寝な。疲れているだろう?」
「まぁ…そうだけど。お言葉に甘えるねーおやすみー」
「……おやすみ」
四季が天を起こさないように抱き上げて向こうのもう一部屋に連れて行く。海と左眼丸も挨拶をしてそれに続く。蘭丸は天がよく懐いた三兄弟に今日はほとんど妹を預けっぱなしである。と言うか子守り?をしてくれて助かっている。
残った彼らは少年を見やる。少年は向こうの部屋に行ってしまった三兄弟と天を見て懐かしむような目をしていた。
「?どうしたの?」
「なんでもない…っ」
と少年が頭を抑えた。痛いのだろうか?近くにいた疾風が〈力〉を使う。それに少年は大丈夫と手をかざした。
「どうして血塗れだったんだ?」
落ち着いたのを見計らって蘭丸が問うと少年はどう説明しようかと迷っているようで両手が空中でてんやわんやしている。
「ええっと…僕、逃げてて…」
「〈レイドクリーチャー〉から?」
「そう、それから逃げてて」
鳴時がそう言うと少年はそれに食いつき、話を進めて行く。それに違和感を持つみんな。蘭丸が問う。
「戦わなかったのか?」
「え、ええ…僕には…出来なかったから…」
その答えにマスター、響、夜征、疾風は眉をひそめた。「僕には出来なかった」?どういう事だ?
同じ事を蘭丸や鳴時も思ったらしく訝しげな表情を浮かべている。一方、少年は自分が変な事を言ったと言うこと自体に気づいていないらしく黙ってしまった彼らを不思議そうに見ている。
「そうか…お前の名前は?」
とりあえず、話を一旦そらそうと鳴時が少年に名を聞く。が少年は名乗りたくないのか口を開こうとせずにだんまりだ。だが開こうとしては閉じる…を次第に繰り返し始めた。それに痺れを切らした蘭丸が怒鳴った。
「言うか言わないかハッキリしろ小僧!!」
「ちょっ…!ちょっと蘭丸殿!」
「はいぃいいいい!!!」
それをマスターが宥めようとすると少年が悲鳴に近い返事を上げて怯えながら名乗った。
「鈴蘭って言いますぅうう!!!」
少年、鈴蘭は山吹色のショートで両方のこめかみが長い。左のこめかみの所に赤のヘアピンを付けており、瞳も山吹色。灰色のパーカーを着て、中には薄い水色だろうか?パーカーのファスナーをほぼ上まで上げているのでよく分からないがシャツを着ている。下は土色のショートパンツ。露出した両足を隠すように紺色のニーハイソックスを履き、暗めの少しヒールの高いブーツを履いている。
そして蘭丸とそっくりだ。性格と身長は似ていないが顔はとてもそっくりだ。
怯えてしまった鈴蘭は何度か深呼吸をして冷静さを取り戻す。
「蘭丸殿!怒鳴って言うものではないだろう?この子にはこの子なりの事情があるんだ。察しろ」
「そうだぜ、蘭丸。大人気ない」
「う"…」
マスターと鳴時の言葉がグサリと来たらしい蘭丸は苦虫を噛んだような表情をした。そしてようやっと落ち着いた鈴蘭を見た。
「おい」
「うひゃい?!」
「…ごめんな」
何かまた怒鳴られると思った鈴蘭は身を固くしたが蘭丸が謝ったので少々、戸惑ったようだったが「大丈夫です」と笑った。そして響が先程の疑問を口にした。
「さっき‘僕には出来なかった’と言ったよね。どういう意味?」
鈴蘭は戸惑ったように笑うと答えた。
「ええと…僕はある人達の力がないと戦えないんだ…」
「そのある人達は?」
「今…はぐれちゃってて…」
明らかに悲しそうに言う鈴蘭。それが合図となってお開きとなった。鈴蘭は今夜はこのまま一緒に寝る事になった。
なんか学園モノを書きたい…が、ウチはなぜかファンタジーを入れてしまう症候群でしt…あ、学園ファンタジーにすればいいのか!!




