第三十捌陣:『神』の目的と兄妹の能力
「まだ、全部狩り終わらないのか?!」
一人の少年が目の前のこうべを垂れる〈レイドクリーチャー〉に怒りを飛ばす。少年の隣にいる彼とそっくりな少女も不満そうに〈レイドクリーチャー〉を見下している。
「早くしろ。お前達の存在価値が霞むぞ」
「早く人間を全部狩らないとね。ねぇ…アハハ」
少年が行けと〈レイドクリーチャー〉に指示すると〈レイドクリーチャー〉は踵を返して人間を狩りに行った。それを見送り、少女が言う。
「『あの子』どうするの?」
「放置」
「まぁそうなるよね。『あの子』は人間に助けを求めてもどうせすぐに手を振り払われる存在の一つ…嗚呼、早く狩り終わらないと」
「だからこいつらを送るんだよ」
少年がパチンと指を鳴らすと何処からか現れた2人の人物。2人の人物は少年と少女に軽く頭を下げた。少女はニィと不気味な笑みを浮かべた。少年も少女によく似た笑みを浮かべる。
「あいつを、殺せ。邪魔な存在は抹消しろ」
「理想郷に邪魔者は要らないから」
2人の人物は口元を歪めて笑い、シュッと消えた。
**…
「アメね、お兄みたいな人になりたいの」
マスター達が話をしている間、天と話をしていた三兄弟。唐突に天がそう告げたために驚いた。
「どうしてそうなりたいの?」
海が聞くと天はネックレスを掲げてみせてくれる。
「アメとお兄はね、すっごい力を持ってるんだよ!でもアメのは…お兄の櫻みたいに答えてくれないの…」
ショボーンと落ち込む天。どういう訳か天とその兄、蘭丸には(先程、自己紹介した)何やら力があるらしい。落ち込んだ天の頭を左眼丸が励ますように撫でる。それに天は嬉しそうに笑う。
「アメちゃん達の力ってなんなの?」
四季がさりげなく話をそちらに持って行く。天はどう説明しようかいくらか悩んだ後、こう言った。
「うんとね、お兄が言ってたの。アメのこの水晶玉には宿らせる能力があってアメは水晶玉に宿ったモノから力を借りる事が出来るんだって」
「…へぇー…」
それを聞いて三兄弟はつまりは水晶玉に宿ったモノから力を借りると言うことかと納得した。どうやって水晶玉に宿るのか不思議でならんが。
そんな三兄弟の考えを総無視して天は続ける。
「でもお兄はアメと違う力を持ってるの。お兄の武器?あるでしょ?あの武器に櫻って云う人が宿ってて、お兄のネックレスはその櫻に力を与える装置の役割してるんだって!お兄って凄いよね!」
「凄いでしょ?!凄いでしょ?!」と兄を褒める天。海が「うん、凄いね」と言うと彼女は満足そうに笑った。
天と違い、蘭丸の武器には宿り主(此処では櫻)がおり、天と同じ水晶玉は彼の力の源…と云うことか。
とりあえず、三兄弟が思った事。
他よりもいろいろ可笑しいし複雑!
「じゃあ、鳴時さんは?どうなの?」
四季がそう問うと天は明らかに頬を赤らめた。それに三兄弟は気づく。
この子、鳴時の事が好きなんだ、と。
「…な、鳴兄も凄いんだよ!颯爽と現れて〈レイドクリーチャー〉を倒しちゃうの!アメやお兄みたいに能力?がないけど劣らないくらい強いの!」
「そんな鳴時さんのこと、アメちゃん好きなんだね?」
四季がそうサラッと言うと天は再び照れてしまう。が小さく頷いた。
「そっかー」
海が笑顔で言って天の頭を撫でた。
**…
一応、蘭丸と天の兄妹の力(能力とも云う)の存在を三兄弟と本人から聞いたマスター達は気になっていた事を聞いた。
「“彼”について分かる?」
響が聞くと蘭丸と鳴時は顔を一瞬青ざめたかと思うと蘭丸のみ憎しみの炎を瞳に宿して言い放った。
「分かるも何も『神』の筆頭の奴の事だろ?!あんな奴ら…オレ達が何をしたってんだ!」
どうやら此処の異世界では“彼”は人間を狩る『神』の筆頭の事らしい。まぁこの現状だ。そうなるのが当たり前のように感じるが。
鳴時が蘭丸を落ち着かせる。
「怒らせてしまったようでごめんね」
「いんや、いいんだ。三日月は悪くねぇ…蘭丸もそろそろ落ち着けよ」
「…っ。嗚呼。ちょっと空気吸ってくる…櫻頼むわ」
「はーい…お兄大丈夫かな」
2振りの刀を天に預け、外へと行く蘭丸。兄を心配する天に鳴時が大丈夫だと笑ってみせた。
「そんじゃ他の話でもするか?」
鳴時がそう言って場の空気を変えた。それにはいと軽く手を挙げて疾風が発言した。
「『神』の人数とか生き残りの人数とか分かんないの?」
「それが分からないんだよなぁ…『神』は異端も合わせれば何十…何百人?…何人いるかは知らねぇがたくさんいるし、人間はどうやっても確認出来ねぇからなぁ…」
遠い目をして鳴時が言った。それに悪い事したなぁと疾風が軽く頭を下げると鳴時は「大丈夫だ」と笑って答えた。
暫くの間、蘭丸が帰ってくるまで話に花を咲かせていた。
が
ーバンッ!!ー
「おい三日月!こいつ治せるか?!」
そう言って慌てたように廃墟の家に入って来た蘭丸の腕の中にはボロボロに傷ついた蘭丸にそっくりな少年がいた。
「響、夜征、疾風、すぐさま治してやれ」
「「「御意」」」
かくして3人による少年の傷治しが始まった。
蘭丸によると外の空気を吸っていたらこちらにフラフラと歩いて来て倒れこんだらしい。
「大丈夫かな?」
「大丈夫だよ」
心配する天にマスターがにっこりと笑って告げた。
過去編書きたいですぅうう!!…ハァ…まだ道のりは長い…




