第三十陸陣:雨霧の名残り
「アメちゃんかーよろしくね」
「うん!ありがとうお兄ちゃん!」
四季が笑って言うと天は彼に礼を言って笑った。夜征は「そうですか」と笑って天の頭を撫でた。それに天はくすぐったそうに身を捩る。
マスターは本のページを穴があくほど見たが何も書かれなかった。ハァとマスターはため息をつくとこちらを見ていた響にダメだと首を振り、本をしまった。そして天と話す彼らを見る。楽しそうに笑って話しているのを見てマスターは少し寂しくなった。何故かは知らないがそれに気づいたのか響がマスターの頭をポンッと撫でた。
「?なんだ?」
「母親の悲しみ堪能してるみたいだったから」
「つまりは?」
「寂しそうだったから」
「それはありがとう」
少し照れたようにマスターが呟きながら彼らの元へと行く。響はそれに「いいえ」と言い、後を追った。
「アメね、怖かったけどお兄ちゃんのおかげで怖くなくなったよ」
「良かったね〜四季」
「……褒められてる…」
「うるさいな…」
「照れてる」
「照れてますねぇ」
「嗚呼もうッ!!」
天が言ったことに対してみんなが四季を褒めつつも笑う。照れたように四季は頬を赤くした。
天は亜麻色のウェーブがかかった髪でサイドに一つに結んでおり、少々髪を結ばずにおろしている。瞳は黄色で中に他とは珍しい水晶玉のような模様がある。首には鈴を模した形をした水晶玉のネックレスをしている。薄茶のツーピースと云う服(ワンピースに近い)を着ている。靴はオレンジに近い色の膝下のブーツを履いている。
「やあ、こんにちは」
マスターが天にそう挨拶する。四季の身長が高いため見上げる形になる。天はマスターを見下ろして「こんにちは!」と元気に挨拶した。
「私はこの子達の仲間だ。お…君は何故此処に?」
「…お兄と鳴兄と離れちゃったの…怒ってるカナ…」
「そのお兄と云う人と鳴兄と云う人はどこにいるかわかるかい?」
「多分…」
「案内して貰っていいかな?」
それに天はうんと頷くと片手を伸ばして方向を示す。彼らは天が示す方向へと歩き出した。
「あのバケモノは何だったの?」
廃病院を出て天が示す方向へと歩いていると海が天に聞いた。本に情報が記載されない以上、此処の住人であろう彼女からしか情報は得られない。
「ん?あれ?あれは…〈神の使徒〉。アメ達を狩ろうとして放たれたバケモノ…『神』様はアメ達を消したいんだよ…」
声が段々と小さくなって行く。よほど苦痛らしい。
つまりこの〈大罪楽園〉では『神』が〈神の使徒〉、通称〈レイドクリーチャー〉を使って人間を狩っているらしい。理由は知らないが他の異世界以上に大変な事は間違いない。
「異世界さ…前よりも異常だよね…(コソッ」
「まぁ…そうですねぇ…戦いと云うか殺し合いと云うかそこは同じですが…(コソッ」
疾風と夜征がコソリと言い合う。それに気づかない様子で天は話を続ける。
「でもアメもお兄も鳴兄も負けないよ!」
「アメちゃんは偉いね」
「うん!」
四季がナデナデと頭を撫でる。それを見たマスターと響が呟く。
「妹?」
「余所んちの子でしょ」
「ねぇ何の話?!」
よく分からない2人の話に疾風が異議を唱える。
と天が突然、嬉しそうに微笑んで叫んだ。
「あ!もう少しで着くよ!」
それに彼らは足を早めた。




