第三十参陣:調理場の話
場面は第壱陣、第弐陣の日本風屋敷。
「海、これ皮剥いて」
「はーい」
「四季、これ微塵切りにして」
「オッケー」
トコトコ…トントンと2つの音が調理場、台所に響く。台所には疾風、四季、海がいる。普段は疾風が一人で調理しているが今マスターは響と夜征、左眼丸を連れてこの屋敷の中庭の奥深くにあった蔵の中を捜索している。此処では“彼”の情報が得られなかったのでなにかないかと奮闘している。そして明日には此処を去るので今夜は豪華にしようと疾風は思い、暇していた弟2人に手伝いをして貰った。
「疾風兄ー皮剥いたよ」
「それ、水に浸しておいて。後は僕がやる」
「はーい」
疾風は鍋の中身をお玉でかき混ぜながら海に言う。海は言われた通りに蛇口を捻り、器に水を並々と入れると皮を剥いた食材を入れる。四季も疾風に頼まれた食材を切り終わったようでウロウロしている。それに気づいた疾風が鍋に入れろと左手の人差し指で指示する。四季が疾風が作業していた鍋に切った食材を入れる。
「四季と海は今、冷蔵庫に入れてるデザートの様子見てくれる?」
「「はーい」」
2人が冷蔵庫を除くとすっからかんになった冷蔵庫の中に一つだけ置いてあった。銀色の丸いボールだ。四季がそれを出す。銀色は鉄だったらしく冷えていてとても冷たい。2人して中身を覗き込む。中身はゼリーのようだ。色がオレンジなのでみかん味なのだろう。
「疾風兄ー大丈夫そう」
「冷蔵庫に戻して。四季はマスター達呼んで来て。海は盛り付け」
**…
「疾風の料理は全部美味しいが今日はとても楽しみだな」
「そうですね」
「……楽しみ…」
「教えてくれてありがとう四季」
「いいえ!とっても豪華だよ!」
蔵からマスター達を呼んで来た四季は彼らと一緒にいつも全員が集まる部屋で料理を待っていた。
「ごめん!誰か手伝ってー!」
「嗚呼、オレ行ってくるね」
「……俺も…」
「いってらっしゃい」
疾風に手伝いを頼まれ、四季と左眼丸が部屋の外に消えて行った。それを見届け、マスターはテーブルに両腕を置いて楽しみそうに言った。
「どんな料理だろうな」
「さぁねぇ…」
「お楽しみは後ですね」
3人が楽しそうに話しているとたくさんの料理が乗った大皿を持った三兄弟が入って来た。その後にこちらも料理が乗った大皿を持った疾風が入って来た。
「凄いな!」
「だよね!疾風兄さっすがー!」
「褒めるより先に置く!飲み物はお茶で良い?」
疾風が指示を出しながら聞くと全員が頷く。疾風は箸とお茶を注いだコップを回す。全員に箸とお茶が回ったのを確認し、疾風はマスターにどうぞと促した。
「ありがとう疾風。明日は此処を去る。こんなに豪華な料理は初めてだ…まあ、毎回美味しいから文句は無いがね」
「ありがとうマスター」
マスターの言葉に疾風は照れたように顔を綻ばせる。響が疾風の頭を撫でる。
「それでは最後の晩餐と行こうか。では…いただきます」
「「「「「「いただきます(!)」」」」」」
マスターの合図で彼らは我先にと疾風が作った料理に手を付け始める。特に四季と海が我先にと食べている。その隙間をぬって左眼丸が料理を取って食べている。マスターは疾風が工夫した箇所を聞きながらその料理を食べている。響と夜征は少しずつ取って美味しそうに食べている。会話が弾みながら美味しく食べた。デザートにはみかん味のゼリーを食べ、此処での最後の晩餐にピッタリの晩餐だった。




