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異世界戦争  作者: Riviy
第肆部隊:番外編、日常ノ夢
36/126

第三十弐陣:歌の話


場面は第壱陣、第弐陣の日本風屋敷。



「♪〜♪〜」


夜征が廊下を鼻歌交じりに歩いている。今日は良い晴れ具合だ。


「何の歌?」


その声に夜征の歌は止まってしまった。声がした方には中庭で稽古をしていたのか上半身のみの狩衣を脱いで袖などを邪魔にならないように紐で結んで上半身のみ裸(半裸という)になった響と白のパーカーを脱いで長袖になった左眼丸がいた。2人の手には武器があり、汗だくである。2人に気づいた夜征は恥ずかしそうに頬を染めて苦笑した。


「何の歌?夜征」

「あぁ〜聞かれちゃいましたか…恥ずかしいです」

「…俺…気になる…」


左眼丸が夜征がいる廊下の方へ少し近づいて聞く。彼も気になるようで眼帯に隠されていない左目がキラキラと輝いて見える。夜征はうーんと悩んだようだったが廊下の…縁側に座る。よく見ると夜征が座った近くには左眼丸のパーカーが畳まれて置いてある。響も近くにやって来る。


「そんな良い歌でもないですよ?それに私が歌えるのもこれのみですし」

「てか俺、夜征が歌えるって知らなかったんだけど」

「この姿になって初めて歌いましたからね」


なるほどと頷く響に笑う夜征。左眼丸が続けて問う。


「…夜征兄…さっきの歌…」

「名前ですか?確か…『桜』だったはず」

「『桜』?…嗚呼、なるほど」


夜征が歌の名前を言うと分かったかのようにニィと響が嗤う。悪戯っ子のような笑みに夜征は一瞬、やっちまったと思った。


「公開処刑する?」

「うわぁ…兄さん黒いです。昨日の仕返しですか」

「そうと受け取って貰っても構わないよ?」

「…夜征兄…歌って…」


兄2人が何やら言い合っていると左眼丸が聞きたいとワクワクとした声色で言った。どうやら響の言った通り、歌の公開処刑になりそうだ。

夜征は左眼丸の期待の眼差しにどうしようかと悩んでいる。


「……ダメ、か?」

「………はぁ分かりましたよ。折れました」


夜征が弟の眼差しに耐え切れず折れた。諦めたようにため息をついて笑う。響は「お見事」と左眼丸に微笑みかけると彼に手を差し出す。それに左眼丸が自身の手を当てハイタッチをする。


「やったね左眼丸」

「うん…」

「…下手でも文句言わないでくださいよ?!」


夜征が大きく息を吸い込み、その歌を吐き出す。美しくもあり清い歌は夜征の低くもあり少々高くもある声と合っていた。


「♪桜散り行く日を〜♪貴方との思い出と重ね合わせた〜♪もう、会えぬと♪声は震え♪〜」

「…上手い」

「すげぇ…」


しばらく、夜征の歌声が響き渡っていた。




「♪〜貴方に届くまで♪」


歌の最後の歌詞が終わる。夜征が歌い終わり、ふぅと息を吐く。とパチパチと拍手の音がした。夜征が顔を上げると2人ではないらしく2人も拍手の主を探している。


「とても綺麗な歌声だね、夜征」

「え…マスター?!」


その声に夜征が慌てて振り向くとそこにはマスターがいた。マスターは驚く夜征を置いて言葉を続ける。


「夜征がこんな隠し玉を持ってたなんてね」

「い、いや…隠し玉とかじゃなくてですね……ヤバイ(ボソ」


夜征は顔を真っ赤にし、その顔を右手で覆い隠した。それに追い打ちをかけるように響と左眼丸が夜征を褒め出した。


「夜征、めちゃくちゃ上手いじゃん」

「……夜征兄、凄い…!」

「あ、嗚呼…ありがとうございます…」

「ふふ、真っ赤だな夜征」


さらに真っ赤に染まる夜征を見てマスターがクスリと笑う。夜征は右手を外し、今だ赤い顔でマスターを見上げた。


「いつから…聞いてたんですかマスター…兄さんと左眼丸しかいないと思ってたんですけど…」

「嗚呼。私は最初から居たよ。ちょうど此処を通った時に夜征が2人に歌を聞かせようとしていたから私も聞き入ってしまったよ」

「うわああああ…本当恥ずかしい…」

「何を今更ーねぇ左眼丸」

「…うん」


何やら恥ずかしがる夜征に「何を今更」と響と左眼丸が言う。夜征はツンとした様に言った。


「いつも披露してる訳じゃないんですから恥ずかしいに決まっているでしょう?!ましてや兄さんと左眼丸だけだと思っていたのにマスターにまで聞かれてたとか…」

「それはすまんな」


苦笑してマスターは夜征の隣に座る。左眼丸が置いていたパーカーを手に取り、それを肩にかけると薙刀を消す。響も刀を消し、彼らに近づく。マスターが持っていた2つのタオルを汗まみれの2人に投げ渡すとそれを受け取り、2人は礼を言って汗を拭く。


「夜征の新しい一面だな。歌が上手い」

「本当にね、マスター」

「……俺も……そう思う…」

「だからもうやめてください!」


それに3人が吹き出す。マスターが笑いを収めるとパチンと指を鳴らした。キィン…と夜征の右耳についている龍のイヤリングが揺れた。夜征がいきなり揺れたイヤリングを触る。


「今のは…?」

「〈力〉を少々、点検した。自分で〈力〉を使う時に分かるよ」

「……あー俺分かった。でも教えない」

「教えてください」

「……知りたい…」

「「秘密ー♪」」


マスターと響が悪戯っ子のように笑い合う。夜征と左眼丸は顔を見合わせ、首を傾げた。

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