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異世界戦争  作者: Riviy
第参部隊:反乱ト政府ノ作戦
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第二十陸陣:マスターが宿した、感情


入って来たのは響と海、左眼丸だった。此処に来る途中、闘ったのだろう傷だらけだった。3人の姿を見てマスターはホッとしたように叫んだ。


「響!海!左眼丸!」

「!マスター!」


お互いの無事を確認するように叫び合う。カルはマスターの心配していた人達と分かったようで安心し、構えていた武器を下ろす。


「無事で安心した!」


海がマスターの元へ行こうとするのを響が腕で制する。どうやらカルやゼイガが敵だと思ったらしい。マスターは違うと云う意味を込めてこう言った。


「響、君は私を守れなかったと思っていないだろうか。私は両腕を負傷してしまったが君のせいではないよ。胸を張って良い」

「……っ。…マスターには、敵わないね」


響が目元に少量の涙を溜め、言う。マスターの意図を感じ取ったらしき響は海を制するのをやめて2人の弟と共にマスターの元へと行こうとした。マスターも3人の元へ行こうとする。


【緊急伝達!!敵に油断するなっ!強者つわものを連れている!!階段がないんじゃない!!爆発うえからだ!!】

「おい!!てめぇらぁあああ!!」


大音量で聞こえた驚愕な内容。全員の耳に入ったか?どうすればいいのか分からぬままゼイガは叫んだ。大声で。だがしかし、遅かった。


ードゴンッッッ!!!!ー


突然の爆発音と土煙。ガラガラと崩れ落ちる音。マスターは顔を痛む両腕で庇いながら叫ぶ。


「響!海!左眼丸!」


誰も返答がない。サーッとマスターの血の気が引いて行く。そんなはずない…彼らなんだから…でも…もしかして……!


「おい!無事か?!」


カルが土煙の舞う中に飛び込む。そしてしばらくして土煙が晴れるとその光景にマスターは息を飲んだ。上から崩れ落ちたらしきコンクリートの大きな破片が響、海、左眼丸を押し潰していた。瓦礫の隙間から左眼丸の腕が見える。

気が遠くなる感覚。大丈夫、あの子達は全員生きている。なのになんでこんなにも胸がざわめく…?いや、違う…この胸に渦巻く感情は…


「ゼイガ!手伝え!」

「おう!」


男2人が3人を助け出そうと瓦礫に手をかける。が2人の動きが止まり、マスターの背後に視線が向く。マスターは青ざめたままの顔だけで振り返った。たくさんのパソコンの真ん中に1人の青年と黒いベールで顔を隠した青年よりも身長の高い人物がいた。青年はクスリと満足げに嗤う。


山茶花さざんか…!!」


カルが憎しみをこめた声を上げ、青年を睨みつける。それに動じずに青年は言う。


「おや、虫ケラが潰されたか…」

「!」


マスターが青年と人物の方へ体を向ける。顔は俯いている。


「ふふふ。虫ケラが減って清々してるよ。こんな時にしか役に立たない虫ケラなんだ。死ぬ時くらいボクの役に立って死んで貰いたいね」


にっこりと笑って言う青年。傲慢。その笑顔の裏は黒い、真っ暗闇。


「なぁ…カル…ゼイガ。彼らは死んじゃいない」

「ナニ」


マスターがそう言うと青年の笑みがピクリとパズルの破片が落ちたかのように歪む。

マスターには分かっていた。自分を守るために響が、海が、左眼丸が、自分を入り口から遠ざけた事を。彼らが生きている事を。


「…救助、頼めるかい?」

「任せとけっ。ゼイガ!」

「お、おう。でもいいのかよ?目の前に大物がいんのに」

「大丈夫だ。あいつは」


ゼイガの問いにカルは頷く。だって今のマスターは背中でもわかるくらい殺気立っていたから。


マスターはゆっくりと青年と人物に向かって歩を進める。


「先程、君は言ったね。瓦礫に埋れた彼らの事を虫ケラだと」

「?そうだが?」


その当然だけど何?と云う感じの青年の答えにマスターはクスリと嗤う。パソコンが行方を遮る。マスターはパソコンの台の前で止まる。

この胸に渦巻く感情。嗚呼、久しぶりだ。私は……私は!


「私はね、青年。自分の身内には甘いんだ」


マスターの両腕の包帯がシュルシュル…と自我を持ったかのように外れて行く。それに青年は驚いたようだったが次の瞬間には嬉しそうに、興奮したように笑っていた。隣の人物は一行に動かない。


「その一方で」


ビクッ!青年は背筋に悪寒が走るとはこのことかと初めて、実感した。普段は見えないマスターの瞳が青年を貫いた。


「身内じゃない部外者には容赦しない。例えば、君のような子とか……私の愛しい子達が虫ケラ?笑わせてくれるね。私はそう云う冗談もあの子達を傷つけるやからも…嫌いだ」


マスターの瞳に、胸に渦巻く感情、それは怒りの一つのみ。彼らを傷つけられた怒り。彼らを虫ケラと呼んだ怒り。そして、愛する人を守る行為。

マスターの両腕が露わになる。包帯はマスターの腕の辺りで羽のようにフワフワと浮いている。マスターの両腕には深い一線が刻まれており、まだ完治していないことを物語っている。マスターは片手を前に出す。

そこに月や月光、桜など彼らを形作るモノが集まり、何かを形作る。

青年は額から汗を流した。これはなんだ。怯え?


「私にだって考えがある。あの子達にはあの子達の前世と向き合って貰いたい。そして笑っていて欲しい。嗚呼、回りくどかったかな?つまり私はね」


パシッと形作られたものを握るマスター。それは小太刀だった。美しき色を放ち、持ち主と同じ感情を露わにしている。マスターはもう片方の手を横に出す。そこにまたも先程と同じモノが集まり、形作る。次に形作られ、マスターが握ったのは大脇差。それらの刃物をクロスさせ、マスターはクスッと笑って言う。


「今とてつもなく、怒っているんだ」


そう言うマスターはいつの間にか青年の真ん前にいた。


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