第壱陣:兄弟の朝日
気ままにその日の気分次第かと。今回もゆっくり投稿です。
「起きなさいっ!四季!海!左眼丸!」
日本風屋敷の一室に男性の声が響く。男性に起こされた3人の青年は眠たそうに目をこする。
「ん〜夜征兄…あと5分…ふぎゃ!海!寝相悪いよ!」
「んん…あ、ごめんね」
「…………おはよう、夜征兄」
男性、夜征は呑気な下の弟達を見て呆れつつも笑う。
男性、名前は桜舞 夜征。漆黒の黒い髪色でショートで白がかかった金の瞳。上下を黒の軍服で統一し、上の服の襟には桜が薄めの紅色で描かれている。下は長ズボンでお察しの通り黒。両手に白手袋をしており、右耳に龍をかたどったイヤリングをしている。靴は黒のブーツでヒールが高く、ズボンの下だ。
「早く起きなさい。特に四季。疾風が怒っていましたけど…」
「うえ?!それ早く言ってよー夜征兄!」
そう慌てたように叫んで一人の青年が布団のそばに置いていた髪留めと上着を持って駆け出して行った。それを見送り、夜征は持っていた掛け布団を畳に置いてたたみながら残りの2人に言った。
「行かないんですか?」
「僕らはゆっくり行くよ。ねっ左眼丸?」
「………嗚呼…海、寝癖…」
「おや、本当ですね。動かないでください」
夜征は作業を中断し、自分より背の低い一人の青年、海に近寄るとその寝癖でボサボサの髪を自らの手でといた。優しくゆっくりと手を動かす夜征。青年は気持ち良さそうに目をつむっている。残された青年は右目に眼帯を付けながらいいなーと羨ましそうに見ていた。
「はい、終わりましたよ海」
「ありがとう!夜征兄!髪直す手間が省けた!」
「いいえ」
微笑ましそうに夜征は笑い、羨ましそうに見ていたもう一人の青年の頭を優しく撫でた。それに彼は嬉しそうに微笑んだ。
「さっ!早く四季を追って行きなさい」
「はーい。行こっ左眼丸!」
「………うん…」
そう元気に明るく返事をして2人の青年、夜征の下の兄弟達は駆けて行った。それを見送り、夜征は再び作業を開始した。
**…
「やっばー疾風兄怒ってるって…」
一人早く、部屋を飛び出した青年は走りながら髪を一纏めにする。
青年、名前は万象 四季。淡い青色の長髪を頭の付け根辺りで一括りにし、瞳は深緑色。黒のワイシャツに黒のピッタリと足にフィットした長ズボン。ワイシャツの上に裾が長いこちらも黒のコートを着ている。首にはチェーンで繋がれた葉がモチーフのネックレスをしている。髪留めも葉がモチーフのものだ。靴は灰色でブーツ、ヒールがとても高い。
四季は頭をかきながら障子を開けた。その時、
ーシュッー
「うぐ?!」
「四季?なぁーに昨夜はサボったのか、なっ?!」
かろうじて部屋から出てきた蹴りを右腕で防ぐが痛いものは痛い。四季は右腕を振って蹴りを跳ね返す。と蹴りを仕掛けて来た主はスタッと部屋の中に華麗に着地した。それは四季よりも小さい少年だった。
四季は少年に両手を合わせて頭を軽く下げながら言う。
「ごめん疾風兄!見回りのコトすっかり忘れて海と左眼丸と一緒に寝ちゃった!本当ごめん!あと、蹴り痛い!」
「ったく、次はないよ。あと、蹴りでチャラ。痛いなら鍛えなよ、弟君?」
「うううーありがとう疾風兄!」
四季は笑って顔を上げると少年も笑っていた。少年は「しょうがないな」と彼を部屋の中に入れた。中にはテーブルがあり、本日の朝食が並んでいる。
少年、名前は疾風。白い長髪を首根っこで緩く結んでいる。緩く結んでいるのは青色の紐だ。瞳は青色。黒のブレザーと軍服が合わさったような服を着ており、服の袖口がターンアップカフスという袖で、そこの模様はストライプのようだ。下は黒の短パンで裾も同じ模様。靴は黒のブーツで黒のソックスを合わせている。首には黒の紐をリボン結びにしてつけている。
「海と左眼丸が来たら食べていいよ」
「はーい!」
そう言ってテーブルの前に座る四季。とちょうど残りの2人もやって来た。
「本日も美味しそう♪」
そう嬉しそうに言った青年、名前は空雅 海。淡い桜色のフワッとした髪質でショート。空と海を連想させる空色と青色の瞳のコントラストでオッドアイ。疾風と同じタイプの黒の軍服に黒の短パン。少し明るい灰色のダウンコートを綺麗に着こなしている。首にはチェーンで繋がれた黒球がついたネックレスをしている。靴は黒ブーツにソックスを合わせている。
「……お腹減った…」
そう言った青年、名前は六花 左眼丸。水色のセミロング(長すぎず短すぎずの長さ)で瞳は赤紫で右目に眼帯をしている。青色の水干の上だけを着用し、袖は繋がって長袖だ。下は白が多めの灰色の長ズボン。フード付きの白のパーカーを着ており、首にはチェーンで繋がれた銀色の小さいプレートがついたネックレスをしている。靴は茶の革靴。
2人は早くと急かす四季の両側に座ると手を合わせて「いただきます」と言った後、猛スピードでテーブルの上の朝食を食べ始めた。
「喉詰まらせないでよ!?」
疾風の心配を尻目に四季と海は競争するかのように平らげて行く。疾風の言葉に左眼丸が小さく頷き、唐揚げを頬張った。
「片付け終わりました。疾風、すみませんがお茶をくれますか?」
「あ、夜征兄。うん、いいよ。座ってて」
ちょうど、夜征が部屋にやってきた。作業を終えた彼は疾風にお茶を頼む。疾風は快く承諾すると座った兄の隣で湯呑みにお茶を注いだ。
彼らは本当の兄弟ではない。だが、四季、海、左眼丸は兄弟である。ではどうやって決めているのか?答えは至って簡単だ。彼ら兄弟の共通点である人に手を差し伸べられ、救われ、忠誠を誓ったものから兄が決まって行く。そのある人はそんな事を決めている自覚はない。彼らが自ら見分けがつくようにと決めたのだ。古参メンバーは兄、と。
「はい」
「ありがとうございます…やっぱり疾風が入れるお茶は美味しいですねぇ」
「そう?ありがとう」
疾風が入れたお茶を堪能しながら夜征は彼を褒める。疾風は照れ臭そうに頬をかいた。
「疾風兄!美味しいよ!」
「あっ、四季!それ僕食べようとしてたのにっ!」
「…………俺のやるから…」
「はいはい、ゆっくり食べてよ」
「ふふ、賑やかですねぇ。そういえば、マスターと兄さんは何処ですか?」
三兄弟の朝食を微笑ましく見守っていた夜征はふと思った疑問を隣に座る弟の疾風にぶつけた。
マスターとは彼ら兄弟の共通点、ある人に当たる人だ。普段は古めいたフード付きのコートで頭からすっぽりと体全体を覆っている。素顔を見た数は今だ片手ぐらいだが兄弟全員、マスターに助けられたため、尊敬、信頼している。助けられ、力を与えられたため、その人をマスターと呼んで彼らなりの敬意を表している。もう一ついうと素顔を見るまでは性別が区別出来ない。
夜征の言った兄さんとは兄弟の一番上、つまりマスターに一番最初に助けられ、忠誠を誓った者の事だ。
兄弟全員は自身をマスターの武器だと思っている。マスター自身が言わなくても自分達は助けられ、忠誠を誓った。マスターのためならなんでもしようと思っている。まぁ、兄弟自体も〈武器〉なのだが。
「マスターと響兄なら今日の準備してる。そろそろ帰ってくると思うよ」
疾風が答える。と反対側の障子が開いてフードをかぶった人と男性が入って来た。
「お帰りーおはようー」
「おはよう、マスター、響兄」
「………おはよう…」
「お帰りなさい、マスター、兄さん」
「お帰りーお茶飲む?」
一斉に言い出す兄弟。それに2人は笑いながら言う。ちなみにマスターはフードで顔を隠しているが幸い口元が見えるので表情を読み取ることは出来る。
「ただいま、おはようみんな。昨夜は見回りありがとうな、疾風。四季、サボったら駄目だからな」
「いいえマスター。ほら見ろ」
「うぐぅ…何も言えない…」
「あはは。ドンマイ。お茶、俺にもくれる?」
「あ、私も欲しいな。いいかな?」
「了解」
疾風はしょぼんとする四季を見てから2人分のお茶を用意し始めた。しょぼんとした四季を兄弟の2人が慰める。一気に兄弟パワーで回復した四季がそこにいた。
マスターと男性は彼らが座るテーブルの反対側に腰を下ろした。
「準備は終わったんですか?」
「嗚呼、終わったよ。響が半分以上やってくれたから早かったよ」
「マスターの役に立ったなら嬉しいよ」
「ありがとうな、響」
「いいえ」
2人が笑ったのを見て夜征も笑う。
男性、名前は三日月 響。闇のように深い蒼と黒の混ざった色のショート。瞳は黄色でたまに黄緑色が混ざって見える。髪よりも深い紺色と白銀の糸を使った狩衣。下駄とブーツが組み合わさったような茶の靴で下の狩衣に半分以上隠れている。響は特段、他の兄弟のように髪飾りやネックレスなどをつけていない。
疾風が2人の前にお茶を置く。2人は「ありがとう」と会釈してお茶を飲んだ。
「ごちそーさまでした!」
「ごちそうさまでした」
「……ごちそうさま…」
ちょうど、三兄弟の朝食が終わったらしい。それを見たマスターは湯呑みを置いてパンッ!と手を叩くと視線を集めた。
「さて、みんなが揃ったところで本日の進行を発表しよう」
さあ、行こう、我らの戦場へ…




