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異世界戦争  作者: Riviy
第弐部隊:戦争ノ灯火
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第拾陸陣:目の前での対戦

「ワシは…ナイトメアのために…この命…手放したるわ…っ!頭が痛い…!」


ハラリとディディアの目元を覆っていた包帯が取れる。その瞳は隊長で上司であるナイトメアに向けた服従と微かな戸惑いに染まっていた。頭が痛いのか片手で頭を抑えているがもう片方の手とその手には長く鋭い鉤爪がつけられている。


「さっさと終わらせよ、左眼丸!」

「………応」


ディディアの前には構えた疾風と薙刀とお札を構えた左眼丸がいる。


「ワシは…っ!」


とディディアが疾風に向かって跳躍し、その爪を疾風に振り上げた。疾風は振り上げられたディディアの右腕をを右足で防ぐともう片方を左腕で防ぎ、力任せに弾く。


「左眼丸!」


疾風が低姿勢になった上を飛び越えて左眼丸が薙刀を振る。それをディディアはかわしながら攻撃する。と、パラ…とディディアの頭上から大量のお札がばら撒かれた。パキンッとお札がディディアの体に触れるたび、小さい雷が彼を襲う。


「…っ…」


小さく呻くディディア。左眼丸が薙刀を一回振り、疾風と交代する。疾風は白虎の姿となってディディアに襲いかかる。それを両手の鉤爪を交差させて防ぐが疾風は大きな白虎なために防ぎづらく、徐々に押されて片膝をつきそうになる。が力任せに疾風を押しやり、後退して体制を整える。


「しゃあない…コレ、使ったるわっ!浪樂ろうらく!」


ディディアの背後にオレンジと赤の炎が突如現れ、鉤爪に吸い込まれ、鉤爪自体が先程の炎のような色をまたたかせる。と疾風に向かって跳躍した。


「左眼丸!後方支援頼んだ!」

「応…!」


疾風もディディアに向かって跳躍し、左眼丸がお札を構える。ガキンッと疾風の爪とディディアの炎を纏った爪が交差する。ジリジリと炎が疾風に襲いかかる。2人は互いを引き離そうとするが疾風の方が力が強い。先程と同じようにディディアが片膝をつきかける。が炎が疾風の白い毛を少しだけ燃やした。


「っ!」

「疾風兄!!」


左眼丸の声に疾風はニヤリと笑い、粒子に包まれて元の姿に戻る。と後退した。防いでいたものがなくなったディディアが前のめりになる。ディディアが前方を見るとお札を投げようとしていた左眼丸がいた。彼がお札を凄まじい速さで投げる。ディディアが目の前で後退している疾風に向かって左手の鉤爪を投げた。それは運悪くか運良くか疾風の右腕に鉤爪が突き刺さった。その瞬間、ディディアの目の前でお札がボウ…!と燃え、ディディアを炎が包み込んだ。


「ぐぁ??!!」


バッとディディアが炎の中から跳躍し、脱出するが所々火傷しているようで苦痛の表情だ。疾風が血の滲んだ右腕に突き刺さった鉤爪を苦痛の表情をしながら抜いた。


「疾風兄!…大丈夫か…?」

「大丈夫大丈夫…っ、いってぇ」


疾風が鉤爪を投げ捨てる。ディディアがなくなった鉤爪の替えを何処からか出すと左手に装着すると左眼丸に向かって凄まじい速さで迫った。左眼丸がそれに気づき、疾風を横に押しやると薙刀を横にして防いだ。ガキンッ!と鉤爪と薙刀が交差する。ディディアが力で鉤爪と薙刀を押し、左眼丸に鉤爪の切っ先が迫る。


「…ワシは…ナイトメアを…うっ !!」


ディディアが再び、頭が痛いようで頭を振る。がその服従心かなにかに染まった紅い瞳で左眼丸を睨み付ける。紅い瞳に疾風は何かを一瞬考えた。


「紅い瞳かぁ…どっかで…」


だが疾風はそれをかぶりを振って思考を追い払うと跳躍し、ディディアに横蹴りを放った。

血のような紅い色。瞳には珍しい。見たことがある気がする。でも思い出せない。


「うっ」


疾風に飛ばされ、受身が取れないままにディディアは瓦礫の山にぶつかった。瓦礫にぶつかった拍子に頭から血が流れ出ている。ディディアが痛みを抱えながら顔を上げると目の前に疾風が立っていた。それにディディアは驚き、ぶつかった拍子に落ちた鉤爪がない右手の拳を疾風の顔面に向けて放った。


「……今は、兄弟の方が……優勢」


左眼丸がその背後を見ながら呟く。ディディアの拳を疾風が片手で掴んで止める。ディディアの頭からは血が流れ、頬を伝う。火傷の痕もあり、体力が無いようだった。


「……紅い瞳…ねぇ」

「……?ゲホッ…なんや、ワシは負けたんかい…」


ディディアは力無く、右腕を足の上に落とす。危険がないと察した疾風は彼の前に立ち続ける。左眼丸が心配そうに近寄る。ディディアは瓦礫の山に背を預け、血塗れの顔で疾風に言う。


「………一つ…ええか…?」

「いいよ、聞く」

「疾風兄…っ!」

「平気だから。こんな満身創痍で攻撃して来たらすぐ分かるよ」


疾風が背後で心配する左眼丸を「大丈夫」と止め、ディディアを見る。そして息を飲んだ。ディディアが紅い瞳から紅い涙を流していたからだ。紅い色は瞳から取れて行き、ディディアの瞳は元の色であろう白色だった。


「……あり、がとさん……ナイトメアを…助けて、けれ……“あいつ”に…操られ……て…る…だ…ゲホっ」

「“あいつ”?“あいつ”って誰?ねぇ!」

「……堪忍…なぁ…わから、な……ナイトメア……すまん、な……ワシは……敗戦者…や……こんなて頼り、な、い……ワシを…許して……や……」


そう最後に普通の透明な涙を流し、ディディアは瞳を閉じた。途端にディディアの心臓辺りに緑色のシミがみるみるうちに出来上がる。緑色の血など存在しない。血は紅か赤黒い色、そして青だけ。ならこの緑色は?考えられるのは一つ。操られていたために体内で異常現象が発生し、血が本来ならばあり得ない緑色に変化した。

兄弟はその仮説に驚きを隠せなかった。もし、仮説が正しいのなら…それは、


「………疾風兄……」

「大丈夫」

「え?」


背後から覗き込んだ左眼丸に疾風はニッコリと笑い、ディディアの前に両手をかざした。もう虫の息だ。いやもう遅いかもしれない。けれど


「……僕はきっと、弱虫だ」


疾風は誰に向けて笑うわけでもなく、にっこりと悲しそうな笑みを漏らすと両手に意識を集中させる。するとそこに白い粒子が舞出す。白い粒子は座っているディディアを包み込む。

マスターから与えられた僕達のこの〈力〉。人を治すこの〈力〉。僕達や弟達には残念ながら使えない。けれど、この人になら使える!


「君のせいじゃない。なら、今まさに君を目覚めさせてあげる。君にはさ、まだ聞きたい事があるんだよ。それに何より…僕の意志で、君を救う!」


白い粒子がディディアを包み込み、辺り一面、粒子に包まれた。

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