第拾伍陣:琥珀色との対戦
前回の異世界でもなんかトラブル?起こさせたんで此処の異世界でも!って考えたらこの3人と闘う事に…早足で進んでますけどちゃんと伏線は張ってるつもりです!前作よりも文字数多めにしたんで自分でも早足に感じる今日この頃!
過去編を早く書きたい…番外編もいいなぁ…もう少し進んだら考えておきます(フラグ)。
「魅弧はナイトメア様のために…やるですが…例え、魅弧の命が、失われようとも!!」
かつて琥珀色であった瞳は隊長で上司であるナイトメアに向けての尊敬と服従に染まっていた。その手には指と指の間に挟まった無数のナイフがある。
「全く、誰がこうなると予想しました?」
「誰も予想出来ないよ。出来たら僕そいつの事恐るわ」
魅弧の前には呆れた顔で2振りの刀を持つ夜征と兄の疑問に苦笑いで答えながらマシンガンと銃を構える海がいた。
「魅弧は…貴様達を……!ハァ!」
ブンッと数本のナイフが2人に向かって投げられた。それを夜征が刀で弾くと同時に魅弧は右手に持った1本のナイフを夜征に上段から力強く斬りつけた。夜征は2振りの刀を交差させ、ナイフを防ぐ。ギラギラと殺気が宿る紅い瞳が夜征の喉元を掻き切ろうとしている。ギギギと上から圧力がかかる。
「夜征兄、右!」
海の言葉に夜征は顔を右に動かした。その紙一重の隙間を縫い、海は銃弾を魅弧に向けて放った。魅弧は夜征の相手で精一杯だったらしく、銃弾が右頬をかすった。バッと後退し、距離を取る。そこへすかさず夜征が間を詰める。驚く魅弧を尻目に夜征は刀の柄を彼のみぞおちに強く突きつけた。
「グッ…」
魅弧は片手の数本のナイフを夜征に向かって投げ、距離を取るが夜征の後ろから迫り来る銃弾の嵐に被弾を許す。みぞおちを抑え、苦痛の表情を見せながら魅弧は両手の指と指の間にナイフを挟み、横に出す。
「貴様達には特別に使ってあげますですが!!鸞死鳥!」
紫色に不気味に輝く鳥が魅弧の背後に現れ、全てのナイフにその不気味な光を纏わせる。そしてそれを2人に向けて高速で投げた。
「ハッ!僕の腕前、見とけよ!」
がシャンと海はマシンガンではなく片手と同じ銃を構え、二丁拳銃となると空中で一回転しながら銃弾でナイフを叩き落として行く。その間、夜征と魅弧の刃が再び交差する。ナイフに纏わり付いた紫色の光が彼の攻撃力も殺傷力も上げる。ガンッと魅弧のナイフが夜征の2振りの刀をすり抜け、彼の喉元をかすった。夜征は冷静に紙一重でかわし、片手の刀を離す。突然、重心が傾いた魅弧に新しく出した短刀を片手首で弄び、切っ先を向ける。その時だった。
「うわっ?!」
「海?!」
背後で海の悲鳴がした。それに気を取られた夜征に魅弧が顔面にナイフを突きつける。それをギリギリでかわし、後退すると「イテテ…」と尻餅をつき、右手首と額を負傷した弟に駆け寄った。
「大丈夫ですか?!」
「イテテ…大丈夫大丈夫ーナイフの魔法?にやられた」
額から流れ出る血を拭い、海は「よっと」と立ち上がるとガシャンとマシンガンを構え、「大丈夫!」と兄に向かって笑いかけた。それに夜征はホッとすると武器を構え直す。
「チッ……」
バッと魅弧は跳躍し、海にナイフで切りかかった。それを海はマシンガンで防ぐともう片方に銃を持つとそれを突きつけ、数発発砲した。
「あ"あ"あ"あ"!!」
痛みに叫び、魅弧は両手で顔を覆いながら後退しながら両手のナイフを投げる。それを夜征が海の前に出て、それら全てのナイフを武器で弾いた。
「あ"あ"…許さないですが…魅弧は…ナイトメア様の…!」
魅弧が憎しみか、それとも服従心か…その紅い瞳で2人を睨みつける。彼の顔の左のこめかみと左耳の翼から血が流れ出ている。顔に銃弾が被弾しているため顔の左側が真っ赤に染まっている。
ピッと武器を振り、夜征はそんな魅弧を見て訝しげに言った。
「瞳が紅…何処かで見たような…」
「夜征兄?」
「いえ、なんでもありません。行きましょう!」
「はいよ!」
夜征が思考を中断し、魅弧に向かって跳躍した。それに魅弧も紅い瞳で彼らを睨みつけながら跳躍した。
夜征は気になっていた。紅い瞳が。薄い赤色や赤の瞳は見たことがある。しかし、血のような紅色。見たことがある気がするのだ。そう、何処かで…でも思い出せず夜征はかぶりを振ってその思考を追い出し、攻撃した。
再び、交差する両者の刃物。ギギギ、ギギギと両者は押し合う。と魅弧が何かに気づき、背後に向かってナイフを投げた。
「?!」
「うおっと?!」
「背後は読めたですが!!」
彼の背後にいたのは彼の背中を狙っていた海だ。海はナイフによって銃口の位置がずれたため、一度後退すると再び、兄と刃物の競り合いをしている魅弧に狙いを定めた。
「そんな幼稚な事、僕の兄弟だって出来るってぇーのっ!夜征兄!上手く避けてね!」
「だからなんでそうなる…嗚呼もう!分かってますよ!」
バッと魅弧の脇腹に片手の短刀を一発突き刺すと左に避けた。それに魅弧が脇腹を抑えながら驚愕したように背後を振り返るがもう遅い。海の放った無数の銃弾が目の前まで迫っていた。避けることは無謀に近いだろう。魅弧はナイフを使い、銃弾を防ぐが無理なものは無理だ。次々と魅弧に銃弾が被弾し、体力を奪う。
「あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
「これで、終わりです」
ズサッと片手の刀で夜征が魅弧を斬り裂いた。銃弾によって出来た傷と切りつけられた傷。魅弧は両膝を尽きながらうつ伏せに倒れ込んだ。海が近づき、銃口を向ける。魅弧はまだ息があった。
「…えっ」
その時、魅弧の紅い瞳から紅い涙が零れ落ちた。そして紅い色が取れて行き、元の琥珀色に戻っていく。魅弧は血塗れの顔でクスリと笑い、ナイフを手放した。攻撃する気も、闘う気もないようだ。
「…え、へへ……魅弧は…やってしまったですが…負けたですが…………お願いが、ある…のですが…」
「なんですか?」
「!夜征兄!」
「大丈夫ですよ」
海の制止も聞かずに夜征は魅弧の横に片膝をついた。それに魅弧は願いを聞いてくれることに感謝してにっこりと真っ赤に染まった顔で笑った。
「………ナイトメア、様…助けて……あの人は……本当、は…あんな人…じゃない……“あいつ”に……“あいつ”に…何かされた…に決まって…!」
「“あいつ”?誰ですか?」
「……見え…な、かった…ですが……お…と…ゲホッ!…も…魅弧は…ムリですが…戦争では…いつも…生と死は…紙一重……魅弧は…それに…負けた…ナイトメア様…先に逝く事を…お許しくださいですが……」
そう最後に普通の透明な涙を流し、魅弧は瞳を閉じた。途端に魅弧の背中に緑色のシミがみるみるうちに出来上がる。緑色の血など存在しない。血は紅か赤黒い色、そして青だけ。ならこの緑色は?考えられるのは一つ。操られていたために体内で異常現象が発生し、血が本来ならばあり得ない緑色に変化した。
兄弟はその仮説に驚きを隠せなかった。もし、仮説が正しいのなら…それは、
「……夜征兄…もしかして…」
「大丈夫です」
「え?」
海が心配そうに言うと夜征は大丈夫と笑い、両手を魅弧の上にかざした。もう、虫の息だ。いやもう遅いかもしれない。けれど
「……私は我儘なんですよ」
夜征は誰に向けて笑うわけでもなく、にっこりと優しい笑みを漏らすと両手に意識を集中させる。するとそこに桜が舞出す。桜は倒れている魅弧を包み込む。
マスターから与えられた私達のこの〈力〉。人を治すこの〈力〉。私達や弟達には残念ながら使えない。けれど、魅弧になら使える!
「君のせいじゃない。なら、今まさに君を目覚めさせましょう。君にはまだ聞きたい事もありますし何より…私の意志で、君を救います!」
桜が魅弧を包み込み、辺り一面、桜に包まれた。




