第拾弐陣:地下軍・十字戒、第七戒隊
「我らは地下軍・十字戒、第七戒隊。俺は第七戒隊隊長、ナイトメア=ヴェスト。貴方達の敵ではない。どうか武器を納めてくれ」
「…………みんな、納めても良い。だが危険と判断した場合はすぐに(ボソ」
マスターが指示すると彼らは警戒しながらも武器を消した。疾風は少年の姿へと戻る。
その人、ナイトメア=ヴェストは紅色の背中の真ん中辺りまでの長髪。桃色の瞳。白のワイシャツに赤茶の革ジャン風の軍服を着、黒のピッタリと足にフィットした長ズボン。両耳に十字架を模したピアスをしており、右腕の中間辺りに翼と剣が描かれた腕章をしている。腰には武器らしきものがある。靴は黒のヒールが高いブーツ。長ズボンはブーツの中に入っている。声的には男性のようだ。
「その言葉、信じるぞ」
「感謝する」
マスターが言うとナイトメアは軽く頭を下げた。そして自身の横に待機する2人に目を移した。
「ほら、お前達も」
2人にも「敵ではないと示せ」とナイトメアが促す。青年は楽しそうに笑い、少年は苦々しげに笑う。
「ワシはナイトメアと同じ部隊で副隊長やっとるディディア=ディサラ言うねん。ディアって呼んでくれたら嬉しいなぁ」
青年、ディディア=ディサラは黒のショート。目元に何重にも包帯を巻きつけている。左頬に翼と剣が描かれた刺青をしている。黒のつなぎを着ており、上半身の袖を腰に巻きつけている。中の服は紺色をしており、首には金色の小さなプレートが付いたネックレスと鈴が付いた黒のチョーカーをしている。腰には武器らしきものがある。靴はこげ茶のヒールが低く、短いブーツだ。
「魅弧は魅弧=グリウォールと申しますのですが。ナイトメア様と同じ部隊、第七戒隊の副隊長ですが」
少年、魅弧=グリウォールは琥珀色のショートで右のこめかみを三つ編みにしている。瞳も琥珀色だ。両耳が翼になっている。ボレロと呼ばれる茶色の上着を着、中には白のワイシャツを着ている。下は深緑色のカーゴパンツをはいている。右腕の中間辺りに翼と剣が描かれた腕章をしている。腰には武器らしきものがある。靴は黒めの茶色をしたブーツだ。
「これで宜しいか?」
「…嗚呼」
マスターがナイトメアの問いに答える。
「俺達は正体を明かしたのだから貴方達も正体を明かしてもらいたいのだが」
「…マスター」
「大丈夫だ、みんな…そうだな、一理ある。私はマスターと呼ばれている者だ」
マスターが3人に向けてゆっくりと頭を下げる。そして自分を守るように立つ彼らに小さい声で言う。
「お前達は絶対に名乗るな」
「分かった!マスター!」
四季が答える。他の彼らも小さく頷く。マスターが3人を見据える。
「後ろの自分達は名乗らないん?」
「私達は名乗るべき者ではないので」
ディディアの問いに夜征が即答で答える。それにナイトメアや魅弧は訝しげな顔をする。
「たまたまこの辺りを散歩中に出くわしてね、戦闘になってしまったんだ…これで納得してくれるかい?ナイトメア殿」
マスターがフードの中から彼を見て言う。それにナイトメアはうむと長髪に顔を隠し、表情を読み取られないように考え込む。
「それは…それは悪運の強い。分かった。失礼だが貴方達は俺達が連行させてもらう」
「!なんで君達に連行されないといけない訳?!」
「…………落ち着け……」
ナイトメアの言葉に海が大きく身を乗り出して反論する。それを左眼丸が肩をつかんで落ち着かせる。それを冷酷な眼差しで魅弧が見、言う。
「ナイトメア様のお言葉は絶対ですが。何故、貴様のような者の反論を聞かなければならないのですが?」
「ハァ?!アンタ…オレの兄弟を侮辱する気っ?!」
魅弧の冷たい言葉に四季が怒り狂ったように叫ぶ。魅弧をギッと睨み付ける。それに彼は「なんで睨むの?」と四季が自分を睨む理由が分からないようで首を微かに傾げる。それにディディアが「あちゃー」と目元の包帯を触っている。
「?侮辱、ですが?いつ魅弧が言ったですが?」
「今だよ今!嗚呼!ムカつくっ!」
「魅弧は脳の発達が少々可笑しい事になってんねん。堪忍してやぁ」
怒り狂う四季にディディアが宥めるように言うと四季は少しずつ落ち着いたようだった。
「貴方達がそういうのは最もだ。だが…こちらとしては自然中間軍民をなんとしてでも戦力に引き入れたいものでな。魅弧!ディディア!」
「「御意」」
ナイトメアが叫び、ニヤリと笑う。ディディアと魅弧が武器片手にマスター達に向かって跳躍した。兄弟達が武器を手にし、マスターを庇う。が、マスターは彼らの前からどかない。それを好機と思ったらしいディディアと魅弧、ナイトメアが嗤う。
「マスター!?」
「どうしたんですか?!」
「危ないよ?!」
マスターはこちらへ飛んでくる2人に向かって呆れたように嗤う。そして叫んだ。
「夜征!海!銃を私に渡せ!」
「「?!」」
突然、そう言われた2人は一瞬顔を見合わせ、武器をマスターに投げた。
「遅いな。俺の両腕たるこいつらを舐めるなよ」
ナイトメアがクスリと勝ったと口元を歪める。銃を投げ渡す距離と時間からしてディディアと魅弧の方が早い。何を無駄な足掻きを。
だが
「?!な、なに?!」
彼の思惑は外れる。
一瞬にして2人が投げた銃がマスターの両手に収まり、ディディアと魅弧に向かって至近距離で銃弾が撃ち込まれた。
「うっ」
「っ!」
ドサッと腹に銃弾を撃ち込まれた2人が地面に倒れ落ちる。それを見てマスターは銃の引き金の所に指を入れ、クルクルと回す。後ろでは三兄弟が「さっすがー!」と控えめにマスターに拍手を送っており、それを疾風が「やめんかっ!」と三兄弟に手を振る。
「魅弧!ディディア!」
「そちらこそ舐めないで貰いたいな」
痛みで呻く魅弧とディディアにナイトメアが手を伸ばしながら苦痛の表情を浮かべる。
「私達を見逃せ」
「なっ?!自然中間軍民は貴重なのに…くッ」
ナイトメアが呻く。部下を救うか戦力を奪うか。
マスターが銃を夜征と海に投げ渡す。ナイトメアが迷っている間にも魅弧とディディアの腹からは真っ赤な血が流れ出す。2人の表情が歪む。
「…っ!分かった!見逃す!」
「部下を大切にしてこその隊長だ。みんな、行くぞ!」
マスターが彼らを振り返り、言う。疾風が白虎の姿になるとマスターと響を乗せる。夜征と三兄弟が3人を警戒して背後を気にしている。魅弧が腹を押さえながら片足をつく。ディディアが武器を持ち、攻撃をしようとしているがナイトメアがやめろと制する。
「…っ。この仮は、絶対に返すっ!」
「捕まえてやるのですが!!」
「後悔させてやる」
3人が怖いほどの殺気を宿し、彼らを睨み付ける。彼らは怯まない。3人の勢いに「フッ」とマスターが笑う。
「楽しみだな」
そうして彼らは3人を残して去って行った。彼らが去ったのを確認し、ナイトメアが2人に近づく。
「大丈夫か?!」
「すいまへんナイトメア。逃がしてしもた」
「すいませんですが…」
「お前達のせいじゃない。相手が悪かっただけだ」
落ち込む2人を励ましながらナイトメアは青色の液体が入ったボトルを2人に渡す。2人はそれを当たり前のように一気飲み。すると傷がみるみるうちに癒えて行く。
「とりあえず、本部に戻りこの情報を伝えなくては」
ナイトメアが勢い良く立ち上がり、それに2人も続く。その時だった。
「本当に、本部に伝えちゃっていいのかな?」
「?!誰だ?!」
背後から3人を悪夢に誘う声がしたのは…




