第八十玖陣:夜明けの遊戯
お久しぶりです。
光と闇の狭間でたむろっている。
どっちが正しいのだろう?
生?死?
蘇り出す記憶。懐かしい思い出。
笑顔が、言葉が、脳に染み付いて、目に焼き付いて、離れない。
嗚呼、きっと……
**…
〔×月△日〕
3つの和風を奏でる楽器の音が互いを互いに引きたて合い、混ざり合う中に響く高くもあり低くもある美しい歌声。その歌声と楽器の音に合わせて扇を片手に舞う者が3人。その前にはその美しい光景を見守るまた別の3人。その部屋の外にはその光景を少しでも見ようと野次馬が出来ていた。
と、楽器の音が止まり、歌声も止まった。舞っていた者達も決めポーズをとって止まる。一瞬静まり返ったその空間にパチパチ…パチパチ!と大きな拍手が巻き起こった。
「はいはい、野次馬してたみんなは帰った帰った」
部屋の外で野次馬をしていたこの屋敷の者達を手を振って散るよう促すと彼らは「酒の時にまたやれよー」と注文を付けながら帰って行った。
「………で、どうだった?」
パチンッと扇を畳みながら四季が心配そうに問う。その隣には同じく扇を持った五月雨と真守がいた。その後ろでは歌を歌っていたのであろう夜征が自分の近くに置いていたコップに水を注いでいた。
「僕は良いと思ったけど。満点!」
見ていた宗近が笑顔でそう親指を立てて言うと隣にいた長光が彼の頭をベシッとはたいた。
「痛っ?!」
「お前満点付け過ぎ」
「だって僕はそう思ったんだもん」
「はいはい…ちょっとたまに音がずれてたぞ。そこを直せば良いと思う」
むくれる宗近の隣で長光がそうアドバイスする。それに彼らは頷く。夜征が水を注いだコップを全員に回していく。それを受け取りながら海が言う。
「もう一回やる?僕はやりたいけど」
「……俺…も…やりたい」
海の提案に左眼丸が俺もと水を飲みながら賛同する。その提案に五月雨は面倒くさそうに顔を歪めるとコップを持ったまま響の隣に座った。そして、「ん」と響に扇を差し出した。それに響は訝しげに首を傾げる。
「…えーと?」
「……わかってるんでしょう?…お手本、見せて下さいよ、師匠?」
二ぃと悪戯っ子のように笑って五月雨が言う。響はクスリと笑って差し出された扇を受け取った。
「僕もやろっかなー久しぶりに!まっちゃん!」
「…はい」
真守が宗近の差し出された手に扇を置く。嬉しそうに宗近が扇を受け取りながら立ち上がる。立ち上がった響と並ぶ。と疾風が四季を手招きし、自分の手に中にあった楽器と扇を交換した。
「疾風兄、舞うの?」
「ん?僕はやんない…えい!」
「?!」
疾風は四季の問いにそう答えると扇を投げた。それに一同驚愕する。パシッとその扇を長光が取った。それを確認して疾風は夜征の元に行くと言った。
「楽器は三兄弟、舞は響兄と近くんと光くんで良いでしょ?」
「歌はどうするんです?」
「あー俺やるよ」
疾風が出した提案の問題点を上げると響がそれを承諾した。みんなはまたもや驚いた。歌は何度も舞をやるため、夜征が担当していたので彼が歌が得意なのは知っているが響が歌えるとは知らなかった。
「響さん歌えんの?」
「…意外、です…」
立ち上がる長光と座る五月雨が響にそう問うと他の者もそうだと同意する。当の本人はクスリと扇で口元を隠しながら笑う。
「これでも前世、宴では舞と歌をやってたんだよ。まぁ、歌は夜征の方が上手いけど」
それに全員が納得しつつ、その話を打ち切ろうとする。響はその事を感じつつ、やるよと促す。
「四季、海、左眼丸は俺が歌い始めて少ししたら楽器弾いて。タイミングは任せる」
「え、いいの?」
海の問いに響は大丈夫と笑う。
「ねーひー兄、僕達は舞どうすればいいの?」
「………宗近も、長光も、響さんも…違うからね…」
宗近の問いに同意するように真守が声を上げる。先ほどの四季、五月雨、真守の舞は夜征の歌と合うようにあらかじめ話し合っていたから美しい光景になったのであって今、3人には話し合う時間はない。
響はそんな事心配するなとクスリと笑う。開いた扇を戸惑う宗近と長光に向かって振りながら言う。
「俺が2人に合わせるから。2人共同じ舞、出来るでしょ?」
「出来る事には出来るが…」
「良いんですか兄さん。君が苦労するのでは?」
「大丈夫大丈夫。此処の誰よりも、長く生きてんだから。あ、前世も合わせたら、か…ほぉら!準備!」
響の言葉に楽器を演奏する三兄弟は気を引き締め、響と共に舞う宗近と長光は扇を開き、ポーズを取る。それを響が真似る。大丈夫だろうかと夜征と疾風が思っていると響が歌い出した。
「♪〜」
夜征とはまた違う美しい歌声に彼らは一瞬、惚けてしまった。がハッと我に帰り、三兄弟が楽器を演奏し始めた。それに釣られるように宗近と長光が舞い、合わせて響も歌いながら舞う。
そこに、先ほどとはまるで違った美しい光景が広がった。
何度も言ってますがもうすぐで終わります…




