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異世界戦争  作者: Riviy
第捌部隊:滅亡ト創造ノ子供達
119/126

第八十伍陣:また、ね


黒い闇に瞬く間に消えたマスターを見送って、五月雨が唐突に呟いた。


「………大丈夫、なんですか」


誰の事を言っているのかすぐに分かった。自慢げに、誇らしげに、彼らは言った。


「アンタ何言ってんの?」

「大丈夫に決まってんじゃん?」

「………俺達の恩人だ」

「心配ご無用だけど?」

「あの人の御意志は強いですから…ねぇ、兄さん?」

「………………嗚呼!」


**…


暗闇の中をマスターは歩いていた。何処が右か左か、下か上かも分からない。そんな暗闇をひたすら歩く。


「……」


と、スポットライトのようにそこだけ明るく照らされた場所があった。そこには夕月夜があの本片手に立っていた。マスターはそこにゆっくりと近づく。すると夕月夜は目を閉じていたらしく片目を薄く開けてマスターを迎えた。


「やぁ我が妹よ」

「嗚呼、私も全てを思い出したよ、兄さん」


2人は対峙する。夕月夜が本をマスターに見せるように横に出す。


これ、俺が異世界を創った時に俺が書いて君に贈った。君への、償いとして」

「…っっ!」


そう、あの本は夕月夜からマスターへの、妹への償いだった。ただそれが‘滅亡’と‘創造’の鍵になると気づいたのはマスターが初めて〈力〉を使った時だったが。


「俺は‘滅亡つくりなお’しのために痛みを捨てたと言っても良い。でも、今、ここに痛みが蔓延って無じゃない。久しぶりに君に会ったからかな?」

「何年ぶりだろう?」


マスターがそう問うと夕月夜は「正確には分からない」と小さく呟いた。夕月夜は本をパタンと閉じ、マスターを見据えて言う。


「君は此処に何をしに?俺を止めるため?」

「救いに来た」

「?!」


思っても見なかった言葉に夕月夜は目を見開いた。

さっきまで敵対していた妹が今は自分を止めるのではなく、救おうとやって来た。

夕月夜は嬉しいからなのか呆れたからなのか分からない、小さな笑みを零した。

嗚呼、本当に


「変わってないね、十六夜は」


‘兄さんが危険な目にあったら助けてあげる!’


小さい頃、そんな事を彼女に言われたのを思い出す。あの頃は平和だった。いつから、その平和が、幸せが壊れて悲しみに染まってしまったのだろう。今となってはそれすらも思い出せない。


マスターが懐からもう一冊の本を出す。それは若葉から貰った本。夕月夜は懐かしいなぁとその本を見て思った。いつ考えたかは、書いたかは忘れたがあれは自分の日記のような物だ。


「何処にあったんだい?それ」

「友人から貰ったんだ。兄さんの‘真実’として、ね」


マスターが片目を瞑ってそう、小さく笑って言う。

私が、兄が持っていた本が‘滅亡’の、‘創造’の鍵になるのなら…兄が書いた日記は、きっと……


「じゃあ、私はそろそろ、救おうか」

「はは。出来るのか?」


夕月夜は気づいていない。この本の正体に。“彼”と云うお前が書いた一つなら、この本にも鍵としての〈力〉がある。私は、それを使う!


「出来るさ、私が、」


パタンッ!と本を開き、その上に片手をかざす。そして、ニヤッと笑って叫んだ。

夕月夜を照らしていた光が消えて行き、黒い闇が2人に迫る。


「此処にある限りっ!」

「?!」

「‘ ‘汝、我が想いを聞け。汝、我が心を聞け’ ’」


マスターがこれまで出会った人々を思い浮かべる。みんながみんな、何かを持っていた。突き進んでいた。証が、あった。

闇は夕月夜とマスターを徐々に追い詰め、‘滅亡’か‘創造’かも分からない何かに引きずり込もうとする。夕月夜はマスターがやろうとしている事が分からず、彼女に視線を向けながら本をぎゅっと胸に抱き締めた。


「‘ ‘汝、我が問いに応え、その意を示せ。さすれば汝らを、未来へと’ ’」


マスターが持つ本が光り輝く。その光は炎のように熱くもあり、暖かい。その光が闇を包み、夕月夜を包み、そしてマスターを、十六夜を包み込んだ。


「…………」

「‘ ‘導こう’ ’」

「嗚呼、本当に………」


夕月夜がにっこりと笑う十六夜を見て、困ったように笑う。

さすが、俺の妹…とでも言おうか。‘滅亡つくりなお’しをするためだったのに、君に迷惑かけて助けられてしまった。ごめんな。俺の責任なのに、身内の君に苦労をかけて。でも

ありがとう、十六夜

そして暖かい光に身を委ね、目を閉じた。


上手く発動してくれればあとは、時間の問題だ。

十六夜は、自身も光に身を委ねる直前、彼らを思い浮かべた。


「嗚呼………待ってて」


そう最後に呟き、光に身を委ねた。


**…


『?!』


彼らまで迫っていた黒い闇が突然、暖かい光によって吹き飛ばされた。そして突風が吹き、彼らも吹き飛ばす。この異世界の地面が、岩が、地響きをあげて崩れて行く。空が荒れる。この異世界が悲鳴を上げる。滅亡するのを嫌がる悲鳴かそれとも創造を喜ぶ悲鳴かは分からない。

吹き飛ばされながら彼らは、バラバラにならないように身を固くした。

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