第八十参陣:水面写しの家族
終わりたくないぃいい!!でも、終盤。
投稿です
嗚呼、思い出したーーーーー
「マスター!!」
マスターは響のその緊迫した声によって呼び覚まされた。そしてハッと我に帰った時、目の前でパリンと何かが割れる音がした。その音にまた耳を疑う。
「っっ!!響!!」
「グッ…」
マスターの目の前に立ち塞がった響の右腕には黒い闇が突き刺さっており、突き刺さっているところからガラスのようなヒビ割れが入っていた。響越しにマスターが見たのは夕月夜が持った本から黒い闇が噴き出しているところだった。マスターは響がかばう右腕を心配そうに横目で見ながら兄弟達に向かって叫んだ。
「お前達!下がれ!」
マスターの指示に従って下がった兄弟達。その目の端に驚愕した様子の宗近達が写った。
「ねぇ、どうしたの?」
その様子に海が問うと宗近が叫んだ。
「夕月夜、痛み捨てたはずなのに戻って来ちゃってるのに…今、やったら死んじゃうよ!!」
『?!』
その言葉に今度はこちらが驚愕する番だった。
「それ、どういう事?!」
四季が下がって来、近くにいた五月雨に食ってかかるように叫ぶ。すると五月雨は一見落ち着いた様子で言った。
「本来、夕月夜が行うべき創り直し、此処では‘滅亡’と不本意ですが呼びます…それは心を無にしなくては、なりません…ですが、夕月夜は‘真実’を告げた事で、心は無ではなくなくなりました……」
「‘真実’?……妹とか、そうい…」
五月雨の言葉に引っかかった左眼丸が思い出しながら言いつつ、答えに気づく。他の兄弟達もそうだ。
よく考えてみろ。此処に妹は一人しかいないじゃないか。そして、それが‘真実’だとすれば……
「………嗚呼、私は全て、思い出した」
マスターが響の隣に立ちながら言う。その瞳は、フードに隠されて見えないけれど真剣そのものだと云う事はわかった。マスターは兄弟達の顔を見回し、深呼吸をして言う。
「私は、夕月夜の双子の妹だ」
『???!!!』
「た、確かに似てたけどさマスター…他人の空似って可能性は…?」
驚愕の事実に響を覗いた兄弟達が固まるが疾風がそう問う。ほら、似てても他人の空似ってあるし。それに世界には同じ顔の人が3人いるって聞くし……ただ、受け止める勇気がなかっただけなのだと、わかってはいるのだけれど
マスターはずっとしていたフードを外す。そこから出てきたのは久しぶりに見た、女性の顔。黄色のポニーテールに蒼い瞳。その顔が見えたのかは分からないが夕月夜を包み出していた黒い闇が一瞬、止まった気がした。
「………っ……」
「本当だよ、疾風」
女性は、マスターはにっこりと悲しそうに笑った。嗚呼、やっぱり、‘真実’だった。
「……夕月夜を止められる唯一の‘あいつ’、〈イレギュラー〉も分かっただろ?」
真守がそう問う。
宗近達がマスターの事を何故〈イレギュラー〉と呼んでいたのか疑問だった。でも、今なら分かる。‘滅亡’を望む夕月夜と‘創造’を望む彼女。マスターが夕月夜の双子の妹だとすれば、‘あいつ’なんて…
「マスター…ですか…マスターなんですか…」
夜征が小さくその答えを言う。誰も何も言わない沈黙。それが肯定を意味している。
「…私は、“彼”の‘真実’を知りたかった。それが自分をも知る事になるとは思わなかった。〈蘇生転生〉だって〈力〉だって夕月夜がいなければ私はずっと悩んだままだった」
マスターがギュッと心臓辺りの布を握り締めて、俯いて言う。
さあ、‘真実’を話そう
「私は〈蘇生転生〉の血族だったんだ。オリジンに近いな。だから〈力〉を持っていた、使えていた……私は双子の兄が死んだと、家族は全員死んだとその悲しい思い出によって本来の記憶を自ら封じ込めてしまっていた。私は新しく生まれた異世界を見て、『災い』が起きて、“彼”が消えて……私は、本当は、この〈力〉で何を救いたかった?何を守りたかった?記憶を封じ、自らの家族の苦悩さえ分からずに……」
マスターは両手を握り締め、そう自分に問いかける。スゥ…と涙が零れ落ちた気がした。
‘真実’を知りたかった。“彼”の真実と想いが。それが自分の中にあったなんて
全て、〈イレギュラー〉である、妹である私が悪いのか?
「「「マスター」」」
その声と共にマスターの肩に重みがのしかかった。それに顔を上げると目の前に三兄弟の顔があった。
「マスター、アンタはオレ達を助けてくれた」
「僕らを救ってくれた」
「俺達を……守ってくれた」
「「「貴女はオレ達/僕ら/俺達の命の恩人であり、忠誠を誓ったマスターだ/よ」」」
にっこり笑って言う三兄弟。その近くに夜征と疾風が来てマスターを見てにっこり笑って言う。
「誰がなんと言おうと君がなんと思おうと私達は君の味方です」
「苦しみの中から僕達を救ってくれたのは君だけなんだから当たり前」
「「だから、大丈夫」」
嗚呼、私は誰かを救えていたの?守れていたの?悪くはないの?
と、今度は自分の頬に温もりを感じた。その先を見るとヒビ割れた右腕を持った響がいた。
「自分で勝手に締めないでくれる?俺達は言ったよね‘貴女に着いて行く’と。その誓いすらも君は自ら壊してしまうの?大丈夫だから、頼れよ」
スゥ…とまたマスターの瞳から涙が一雫流れ落ちた。
嗚呼、此処に居た。私の‘真実’
ねぇ、私は認めてもいいですか?
「……………………ありがとう………みんな………」
貴方達を救えた事を、貴方達を助けれた事を
貴方達を守れた事を
貴方達と、楽しく過ごせた事を




