第八十弐陣:消エタ赤児ノ紅イ眼
お久しぶりです
ねぇ、紅い目…紅い眼って見たことあるかい?
俺は見たことないけど…彼らは見たことがあると思うよ?
見たことがあるにはありますがねぇ…はい
まぁ、いつからか見慣れてたよね…うん
なんか苦労人の顔になってる。オレ達もまぁ、見たことあるよね
ねっ。お互いの眼見合ったりして確かめたし
……紅い眼、だった……濁ってたが、紅……
ふぅん、そうか
どうしたの?そんな事聞いて
いや?気になったと言うかな…誰かが『紅い眼をした者は恐ろしくも美しい』って言っていたのを思い出してな
なんで今、それを思い出したんだろう。
マスターは振り下ろされる大太刀を見ながらそう思った。自分は此処で終わるのかと思うと何故か、痛くて動かないはずの左腕が動く気がした。でも、動かす気にはならない。だって
貴方の思惑は外れるから
ーガキンッッ!!!ー
刃物と刃物が交差する音が響き渡った。誰かの息を飲む声も、誰かが駆け寄ってくる音も聞こえる。
「?!なんでそう、なるんだよ!!」
「…………だって、私の仲間だからな!」
夕月夜とマスターの間に体を滑り込ませ、間一髪で夕月夜の大太刀を防いでいたのは響。響は夕月夜の大太刀をバッと弾く。夕月夜は後退する。ちょうど、宗近達がやって来て合流する。もちろん、マスターと響も夜征達と合流する。戦闘開始時に戻った彼ら。怪我の状況などを心配し合いながら敵を睨む。
ーカラン…ー
どこからかその音が聞こえた。音がした方向を見れば、地面に落ちているのは大太刀で。周りもマスター達も驚きを隠せない。
「ゆ、夕月夜?!」
「何、してる?!」
宗近と真守が夕月夜に向かって心配そうに叫ぶが彼は何も言わない。マスターはまた違和感を感じた。
そして、夕月夜は喋り出す。
「………俺の想いが創り出した異世界は、理想とかけ離れてる…俺が望んだ、未来がない」
そう言ってスッと懐から取り出したのはマスターが持っているはずの本。マスターは慌てて懐を探ると…なかった。
「先程の闘いの最中にか…」
「さぁ?」
マスターが悔しげな表情で言うと夕月夜はクスリと笑う。夕月夜は本を開き、ページをペラペラ捲りながら言う。
「俺にはな、幼い頃、大事な家族がいた。宗近達とはまた違う、唯一の身内だった。ねぇ、知ってるかい」
夕月夜がマスター達を見て、コテンと首を傾げて言う。
「俺が捨てた」
夕月夜が黒狐のお面を取り、それを地面に放る。宗近達が何かに気づき、彼を止めようと手を伸ばした。兄弟達は、マスターは驚きで固まった。
‘『災い』の種ってね’
夕月夜の素顔は
「愛し‘かった’…愛しい妹」
‘自分の心なんだよ!’
彼女に瓜二つだった。
「ウソでしょ?!」
「瓜二つ?!」
「?!」
「あああ頭が混乱して来た!」
「落ち着きなさい!」
「うっそ…マスター、大丈夫?!…マスター?」
響が放心状態の彼女を覗き込む。それに響は悟った。まさか、本当に?
夕月夜は紅い右目と蒼い左目を輝せ、にっこりと笑って、本のページを乱暴に破った。
「夕月夜!やめろ!」
「今やったらお前がっ!!」
「ごめんな、愛しい我が子供達」
周りの状況も声もマスターの耳には入って来ない。
大切な、大事な事。悲しみから封じ込められた過去の記憶、過去の思い出。嗚呼、なんで今まで忘れてたんだろう。
夕月夜、本、違和感、〈蘇生転生〉、‘真実’、『災い』、〈力〉、〈イレギュラー〉、そして、紅い眼。
全てが一つの線となり、記憶を呼び覚ます。
嗚呼、思い出したーーーーーーーー
そろそろ終盤…
後書きで何話せば良いんだろ…なんか話したい…




