第八十陣:扇ノ一対
響 VS 宗近
ガキンッと交差した響と宗近の刀。2人は力任せに押し合い、弾き合う。
「また君と闘えるなんてね!手加減なしで、夕月夜のために行かせてもらうよっ!」
バッと宗近が響を刀ごと弾くと蹴りを入れるが響はそれを後方に一回転して避ける。宗近が刀を構え、愉しそうに笑って言った。
「改めまして、僕は宗近!宜しくね!」
「これはご丁寧に。俺は三日月 響、宜しく」
「「では、尋常に勝負!!」」
そう同じ言葉を叫んで2人は大きく相手に向かって跳躍した。響は刀を交差させたあとすぐに隙間を開け、前のめりになった宗近に向かって回し蹴りを放った。脇腹に蹴りを受けた宗近は吹っ飛ばされたがかろうじて足でそれを防ぐと腹を抑えたまま響に向かって駆け出した。駆け出しながら〈力〉を使う宗近。
「〈封蝶ノ乱〉!」
宗近が刀に手を滑らせるとそこから紫色の光が纏い、シュンッと一瞬だが紫色の蝶のようなものも見えた。ガキンッと響の刀に叩きつけるように刀を振り下ろす。力が、攻撃力が上がっている、と響は瞬時に悟った。スッと響は押し合いになっていた刀を抜き、こちらもとでも言うように〈力〉を使う。
「〈月陰ノ乱〉」
スゥ…と響の刀に一瞬、陰が入ったかと思うと月のように美しく、一瞬だけ光り輝いた。そしてそのまま宗近に斬りかかる。反応が遅れたようで宗近は右腕に負傷を負ったが響に負けじと斬りかかる。ギリリ…と刀同士が擦れあい、火花を散らす。
「でいやっ!」
響を弾こうと掛け声をあげて力強く宗近が刀を振る。それを防ぐのは得策ではないと考えたのか刀で軽く受け止めた後、宗近の横を通り過ぎて前のめりになりつつもこちらを振り返った宗近に向かって一線した。それを紙一重で防ぐ宗近。武器を弾き、また交差しと同じ事を繰り返す2人。その時、宗近が片手を頭上に掲げた。響は何かくると感じたが
「ちょっと遅かったかもね?〈宵闇ノ宴〉!」
「っ!」
彼の言う通り、少々遅かった。宗近の掲げた片手に闇のように深い何かが渦を巻いて出来上がる。それは黒い小さな無数のナイフだった。それを目の前の響に「えい」と投げつける。響は急いで距離を取るが気づくのに遅れたために何本かは体を貫通した。その痛みに少しだけ顔を歪めると響は方向転換し、宗近に向かって駆ける。
「やられっぱなしだと思わないでくれよ?…〈明鏡止水・鏡水〉!」
駆けながら片手を地面につけ、バッと振るとパキンッ!と水が噴き出たと思うと凍り、それが一直線に宗近に向かって凄まじい速さで迫る。それは宗近の前までやってくると彼を襲う、が刀で砕いて防ぐと前を見た。そして宗近は驚いて動きを一瞬、止めてしまった。こちらに向かってくる響のもう片方の手には鏡のように輝く刀が握られていたから。
「いつの間に武器増やしたん、っと?!」
「驚くのは後回しにしとかないと、負けるよ?」
驚きの声を上げる宗近に容赦なく響は2振りの刀を振り下ろす。それをかろうじて防いだ宗近は響の刀を弾こうと力を込める。
「負けたくはないよ?!」
宗近が力強く叫び、響を渾身の力で弾いた。すぐさまそこに追撃をかまそうとするが数秒、響が早く、片方の刀を宗近に向かって振り回した。右肩に負った傷は意外にも痛い。
「うっ!」
「お、当たった?…んじゃ」
響が片方に持った鏡のように輝く刀をギュッと握るとそれはパリンッと音を立てて割れた。割れた破片、ガラスのように尖った破片は近くにいた宗近を容赦なく襲った。顔を腕で隠したがそれでも頬に紅い一線ができ、腕や腹、足を細かい破片が貫通した。大きい破片を痛みに顔を歪ませながら抜き、響に向き直る。
「イッタ〜!さっきの仕返し?」
「まぁそんな感じ?そう思うならそう思っても問題ないけど」
「うわぁ〜黒いわ」
「はてさて…それでは、行くよ!」
響が刀を握り締め、素早く行動を開始する。宗近も刀を握り締め、走り出す。
「我が夕月夜に‘滅亡’と云う勝利を、与えましょう…〈蝶月ノ舞〉」
宗近が持つ刀に蝶と月をかたどったものが一瞬舞ったかと思うと彼の背後に蝶をかたどった扇が現れる。それの柄には赤い紐がついており、その紐は宗近の刀を持っていない方の手首に巻きついている。
夕月夜は僕達…長光と僕を救ってくれた。だから僕は、負けられないんだ
「へぇ、面白い〈力〉。でも、侮るなよ、〈月ノ終焉〉」
響がクスリと悪戯っ子のように笑う。響の刀が月光に包まれ、光がバッと響の刀を持っていない方の手に纏わりついた。それは月光のように光輝く扇となって彼の手中に収まった。
俺は、彼女と長く一緒にいた。だから、分かるんだよ。これは彼女が望んだ‘真実’だ。俺が負けたら全てに意味がない
「それでは」
「第二回戦」
両者の刃物と刃物が
「「開幕だ!/開幕ー!」」
交差した。




