第七十玖陣:花札
夜征&疾風 VS 長光
夜征と長光は刃を交差させた。長光の頭に向かって疾風が回し蹴りを放つ。それを長光はしゃがんでかわすとそのまま後退した。様子を見る両者。
「闘いは二度目か」
「そうですね」
長光の言葉に夜征が刀と脇差を構えながら答える。
「改めて、俺は長光。勝つ」
薙刀を構えて長光が悪戯っ子のように笑う。こちらだって勝つと言う気しかない。
「桜舞 夜征と申します。勝利はこちらがいただきます」
「疾風。負ける気はさらさらないから勝つ」
両者、相手を睨み合う。疾風が白虎化したのを合図に両者は大きく跳躍した。夜征の刀と脇差と長光の長光が交差する。ブンッと長光が2つの刃を弾き薙刀を振る。それを後退してかわすと交代で疾風が長光に襲いかかった。鋭い爪と牙が長光を仕留めようと襲いかかる。それを長光は薙刀を横にして防ぎつつ、言う。
「〈解除光〉」
あの時の光が疾風が包み、彼を元の少年の姿へと戻す。一瞬、慌てた様子を見せた疾風は次の瞬間、長光の一撃をかわすとその腹に蹴りを入れる。それを間に受け、体を折る長光は薙刀を振った。ガキンッと音がして疾風が片足で薙刀を防いだ。
「なっ?!」
「どう?」
スッと長光の背後に影が差す。長光は疾風を弾き飛ばし、近くの岩にぶつけると背後からの攻撃を紙一重で防いだ。夜征の脇差を防ぎきれなかったために左肩に脇差が貫いたが気にしない。ぐぐっと夜征が押す。
「〈桜吹雪〉」
桜吹雪が夜征の刀と脇差に舞い出す。脇差が長光の左肩に深く食い込む。それを一気に抜き放ち、桜吹雪が舞う刀で弾き飛ばす。が長光がそれを防ぎ、押し合いと弾き合いに発展する。桜吹雪が舞った刀と脇差が長光の薙刀と交差するたびに彼を小さな傷をつける。バッと脇差を振り回し長光を後退させると夜征はクスリと笑ったように長光には見えた。
「まっ、さかっ?!」
驚きながら背後を振り返るとそこには何かを形作る白い粒子を振りかざした疾風がいた。
「私の弟を甘く見てはいけませんよ?」
「ふははっ。〈白手狩闘〉」
白い粒子が薙刀を形作り、疾風はそのまま長光に振り下ろした。上段から来た一撃は重く、長光の手が振動で痺れる。それが分かってか悪戯っ子のように笑う疾風。ギリッと音がして長光が無理矢理に疾風の薙刀を弾き飛ばす。弾かれた反動で後退する疾風に薙刀を一振り。疾風の頬に刃がかすった。疾風は夜征の元へと後退すると薙刀を何故か消した。
疾風が岩に強くぶつけた背中を一瞬、気にしたが心配そうな夜征を見上げ、頷いた。何かくると長光は咄嗟に感じ、大きく跳躍した。
「疾風!」
「了解、夜征兄!!」
目の前に長光が迫る。長光は察した。罠にはまった、と。
「「〈花札〉」」
2人の前に数枚の花札が現れる。そして1、2枚が長光に襲いかかる。長光は一枚を弾き、もう一枚を足場にしてバク転し、地面に着地。
「〈花札・桜〉」
「〈花札・藤〉」
2人が再び言うと夜征が刀と脇差を消し、レイピアを出現させ、疾風には別の脇差を出現させ与える。疾風が持つ脇差に藤が舞い、そのまま長光に攻撃する。が彼の目の前で一瞬にして消え、背後から攻撃した。
「っ!侮るな、〈細剣〉!」
「ちっ!」
長光の〈力〉で疾風の前に剣が現れ、攻撃を妨害した。が疾風はそれでも構わない。
「読めてんだっつの!」
「それはそれは…残念です」
前方で自分にレイピアで攻撃しようとして来た夜征に叫びながら防ぐとレイピアを弾き飛ばし、夜征に一線。夜征の右肩から左脇腹に傷を負わせる。その途端、残っていた花札の桜が長光の顔面に突然、飛んで来た。頬にかすった。と、足が痺れる感覚。まさかと思い、驚愕しながら前方を見ると疾風が満足そうに笑っていた。
「気づいた?〈花札・桜〉と〈花札・藤〉に混ぜて〈毒牙〉入れてみたんだけど、効いた?」
無邪気に成功したことを喜ぶ疾風。
〈花札・桜〉と〈花札・藤〉は所謂、囮。目的は〈毒牙〉。全くそれを分からせずにこなすとは
「恐れ入ったな…〈長流れ〉」
スゥ…と長光を拘束していた痺れがなくなる。両者、武器を構える。
「何故」
「「?」」
「何故、お前達は‘創造’を?」
長光の問いに2人は当たり前だとでも言うように笑う。
「私達を救ってくださった恩人であるマスターに忠誠を誓いましたからね、それに」
「僕達はマスターの〈武器〉であり臣下であり仲間であり友人。そんな彼女の願い、叶えなくてどうする?」
前世は兄弟。今は血の繋がりも関係もないけれど兄弟だから分かる。マスターに救われしあの恩。彼女の願い、叶えましょう
長光はその答えに一瞬、キョトン…としたがなるほどとクスリと笑った。
「俺も、同じだ」
夕月夜に宗近と共に救われた命と人生。せめて、恩を御返し致そう
「さて、行くぞ」
長光が怪我している左肩を庇う様子も無く、力強く薙刀を振り、構える。それに夜征と疾風も怪我などもろともせずに〈力〉が切れてしまい普通の武器に戻ったレイピアと脇差を構える。
「疾風、準備は宜しいですか?」
「もちろんだよ、夜征兄」
「それでは」
「「開戦致します」」
夜征と疾風のその言葉と共に両者再び、大きく跳躍し、刃を交差させた。




