第七十陸陣:相容れない思いと証
説明がんばったよ作者…分からなかったらスルーでお願いします…
「すぐそこだよ?」
「「「「「「え?」」」」」」」
その声に彼らが声がした方向を向く。方向的には響と左眼丸の間。そこに以前、〈神様天国〉で戦った響にそっくりな青年が「何を当たり前なー」となんでわかんないんだろうと云う顔で作戦会議に乱入していた。
「?どうしたの?」
「…………どうしたじゃないだろてめぇ!!」
首を傾げた青年に真っ正面にいた疾風の飛び蹴りが炸裂する。が青年は後方に飛んで避ける。彼らが武器を構えながら、マスターを背にする。それを見て青年は嬉しそうに、微笑ましそうに笑う。意味が分からない。
「なんで笑ってるの?」
海がそう尋ねると青年は「気にしないで」と笑った。そして「さて!」と手を叩く。本題に入るようだ。
「ようこそ!〈想いの荒地〉へ。此処は“彼”がいる異世界。そして………決戦の地」
ニヤリと笑う青年。
“彼”がいる…“彼”を止めなければ!そう思ったマスターは拳を握った。彼ら、兄弟達も真剣だ。マスターが探していた‘真実’がやっと見つかった。どんな‘真実’だとしても彼女に忠誠を誓ったからには守り通す!
そんな彼らの心情が伝わったのかいなか、青年は笑う。
「はてさて、結末は如何に?それではご案内しましょう?“彼”の部下であるこの僕が君達を“彼”の元へ!!」
どこからともなく出した刀を青年が真っ暗闇の地面か床かも分からない所に突き刺した。その途端、そこからまばゆいほどの光が漏れ、全員を包み込んだ。
**…
「ん?………?!」
マスター達が目を開けるとそこは、草すら生えていない、荒地だった。砂埃が風によって舞い、近くには尖った岩に険しい崖。どうしてこうもまっさらなのか不思議なくらいだった。
「驚いた?」
彼らがその光景に目を奪われていると声がした。前方を見ると先程の青年と他の青年3人。そしてその青年達に守られるように中央に立っている黒い狐のお面をした人物。マスターは、マスター達は確信した。“彼”だと。
「えぇ、驚きました。で、ご用件は?」
夜征がからかうように言うと無表情な青年が黒い狐のお面をした人を横目で見た後口を開いた。
「……分かっているのでしょう?“彼”は異世界全てを滅亡させる気です。彼らに罰を与えるために、彼らに報いを受けさせるために…異世界は滅亡させるべきなのです……ねぇ……?」
「違う」
その声に誰もがマスターを見た。マスターは青年達の鋭い視線に怯える事なく言い放った。
「異世界は、世界は美しかった。私達が出会った者達はそれぞれ、‘真実’は違っていたが全員が全員、“彼”と同じ夢を、理想を抱いていた。戦争も武器も涙も全て、その想いの証。何故…」
マスターの言葉に嘘は混ざっていない、‘真実’だ。〈妖京乱華街〉の夜姫達は〈血狂骸身〉を止めようとしていた。〈ドリーミーワールド〉のナイトメア達は反発し合う中、平和のために頂点を求めていた。〈bitcore〉のカル達は平等な平和、元の姿を求めて反発していた。〈大罪楽園〉の蘭丸達は『神』と敵対してはいたが平和のために未来のために手を取った。〈神様天国〉の若葉達は自分達に‘真実’と強さを教えてくれ、“彼”を頼まれた。出会った者達も異世界も美しかった。それを壊さないで。見て。“彼”は忘れられたかもしれない。けれど、違う形で伝わってるから。
“彼”と思しき狐のお面の人はお面の中でニィと愉快そうに笑った。嗚呼。やっぱり。
「貴方が創造を望むように、“彼”も…滅亡を望む」
片目の青年が淡々と答える。すると長髪の青年が武器を出現させる。それに続いて無表情な青年と片目の青年も武器を出現させる。
「分かり合う…話し合いは難しいみたいだよマスター」
響がマスターにそう言う。マスターは悲しそうにコクリと頷いた。分かってもらえないのか?
「あっ!もう一つ、教えてない事があった!」
と、突然、響にそっくりな青年が手を叩いて声を挙げた。そして、悪戯っ子のように嗤って子供のように無邪気に告げたのは
「〈妖京乱華街〉の子達とか〈bitcore〉の子達は〈核〉だったから殺しちゃったよ。〈ドリーミーワールド〉の子達を操ったりしたのもね」
「はっ?!」
衝撃的な事実。彼らを一瞬のうちに友人に、心通った者達に起こった出来事に、悲しみ、怒り、憎しみが思考を埋め、響以外の兄弟達に思い出させたのはあの‘感情’。嗚呼、何も出来なかった、何も知らなかった自分が憎い。
「落ち着け、私の愛しい子達」
その、優しい声に兄弟達の思考は呼び覚まされた。マスターは彼らを大丈夫だと目で言い、こう反論した。
「はて、その‘真実’は本当かな?」
「?!」
そう言って青年達に見せるように挙げた手の中にはあの古い本。その本が薄っすら光り輝いている気がする。
「この本には異世界の情報が記載されている。何処かの異世界が消えればそこの情報も消える。しかし」
ペラリとマスターが本を捲る。やっぱり、あった。ニィと今度はこちらが悪戯っ子のように笑う。
「〈妖京乱華街〉も〈bitcore〉も〈ドリーミーワールド〉もまだ‘残ってる’。おや?どういう事だろう?」
「!?なっちゃん!僕、ちゃんと殺ったよね?!見てたよね?!」
殺したはずなのにと青年は長髪の青年に慌てて確認を取る。長髪の青年だって驚いている。〈核〉を消したからその異世界は消えているはずなのに何故、まだ‘載ってる’?!
「………ふふ」
「「?」」
「あはは。やられたな」
突然、お面の人が笑った。そしてにっこりと笑いかけ、言う。
「〈感傷〉か」
「!よくご存知で」
ムッとした表情でマスターの代わりに響が答える。
〈感傷〉とはマスターが持つ〈力〉の一つで響も持っている。この〈力〉を持つ者が出会った人物達は一度だけ、死の淵から逃れられる。つまり、その人物達を殺したと思っていても〈感傷〉を持つ者の一度でも(すれ違うだけでも)出会っていればその人物達は‘息を引き取った’から‘虫の息’になる。
「だから〈核〉が作動しなかったのか…なるほどなるほど」
お面の人は楽しそうに何度も何度も頷く。そして青年に「失敗ではないからな」と安心させるように告げる。兄弟達もマスターと響が〈感傷〉を持っている事は知らなかったが彼らが生きていると知り、胸を撫で下ろした。
「‘虫の息’から完全に回復した。だから消えてはいない…予想外は付き物…」
お面の人はそう呟いて青年達のように武器を出現させ、持った。それは大太刀と云う武器。それよりもマスター達は驚いていた。自分達と同じように武器を出現させた。と云うことは。
「まさか…」
左眼丸の呟きに長髪の青年が答えた。
「ご名答。俺達も〈蘇生転生〉だ」
「…兄さん?やっぱりマスターの運命論は当たっているようですよ?」
「ハハッ、そうだね」
響と夜征が額から汗を流しつつ、それを紛らわすかのような会話を交わす。つまり、此処にいるのは全員、〈蘇生転生〉。マスターと“彼”を除く、だが。“彼”も〈蘇生転生〉の青年達を助けたのだろう。
しかし、何故?
「助けた理由は色々さ。お前と同じだったり違ったり……まぁ今はいいじゃないか。今は……」
お面の人は大太刀を兄弟達に向け、挑戦的に言い放った。
「異世界をかけた勝負でもしようじゃないか」
その言葉にマスターは悲しそうに俯いたがキッと顔を上げた。
「“彼”の考えが変わらないと云うのなら……私は、私達は止める!“彼”の思い通りに滅亡させやしないっ!」
キィン!と一瞬にして本をしまい、小太刀と大脇差を構える。兄弟達も武器を構える。それにお面の人はクスリと笑い、青年達に言った。
「闘う前には自己紹介。敵であれど挨拶は大事に」




