第七十伍陣:始まりの鐘の音と共に
遅い時間に投稿する事と遅くなってしまった事にダブルでごめんなさい。どうかお許しを!
ーポツッー
広がる黒い波紋。
ーポツッー
広がる、紅い紅い波紋。
「来たんだ。やっぱり君はそう決断すると思っていた…」
カツンッと鳴るは悲しみの音。
「愛しい愛しい我が子供達よ、さあ、行こう?」
カツンッと鳴るは絶望の色。
目指すは、何処だ?
「………ふふ」
**…
「う……うーん…」
響は強くぶつけ、少々痛む頭を抑えながら起き上がった。自分の周りにはマスターや弟達が気を失って倒れていた。響はまず、マスターを起こす事にした。
「マスターマスター。起きて」
「んっ…響か…大丈夫か?」
「うん、俺はね。ちょっと頭強くぶつけたみたいだけど……夜征達は「無事だ」良かった」
安堵する響にマスターはにっこりと笑うと2人は兄弟達を起こしにかかった。
マスターの言う通り、兄弟達全員、怪我はなかった。マスターは落ちてしまった本ともらった本を拾い、埃を払い落とす。
「それにしても此処は何処でしょう?」
「うーん!四方八方、真っ暗だね!」
ちょうど、夜征が首を傾げて言った問いに海が額に手を当て辺りを見回し、答えた。誰もが辺りを見回せば、本当だ。真っ暗だ。真っ暗闇。
「マスター……本、書かれて…ない?」
「左眼丸の言う通りだよマスター。なんか書いてない?」
左眼丸の提案に四季が手を叩いて2人してマスターを見る。マスターは笑いながら「急かすな」と古い本を開いた。
「ん?」
「?どうしたのマスター」
「いや……」
困惑した表情のマスターが見るページを響が覗き込んだ。そのページにはたった一つの文。
〔〈想いの荒地〉〕
「想いの?」
「荒地?」
「うわっ?!コラ、夜征、疾風。びっくりするだろう?」
突然、2人が見ていたページを夜征と疾風が覗き込み、マスターが声を上げた。それに2人は笑って頭を下げた。
「にしても異世界の名前だけとは変だね」
「いつも情報あるのに」
「不思議ですねぇ」
「本当…」
「なんでだろ?」
「あっ!マスターマスター!僕、思いついた!」
全員が全員、首を傾げていると「はいはい!」と海が元気よく手を挙げた。元気が良いのでマスターも「はい!海!」と場に合わせてノってみた。それに三兄弟が少々吹き出したが気にしない。
「若葉からもらった本!」
「あー!…あー?」
海のこれぞ名案なり!と言うドヤ顔の隣で四季が首を傾げて言葉にならない声を発する。どちらかと云うと若葉からもらった本は日記に近い。なので有益な情報は載っていないと四季は思ったらしい。実際、左眼丸もそう考えていた。夜征と疾風も。しかし、マスターと響は違ったようだ。海の考えに頷いて若葉からもらった本を持ち直す。
「あっ!採用された!」
「……日記、だったと思ったが?」
「だよね左眼丸」
「なんなの疾風兄も左眼丸もー」
疾風と左眼丸の言葉に海が反論すると2人がクスリと笑う。不貞腐れたような海の頭を夜征が撫でた。
「微笑ましいな」
「ねっ」
マスターが本を開こうとしながらそう呟くと響も同意する。マスターは本をペラペラと捲り、それらしきページを見つけたらしい。顔が明るくなった。それに気づいた響が全員を集める。全員がマスターの近くに来たのを確認してマスターは若葉からもらった本で見つけたページについて話し出した。
「〔〈想いの荒地〉…かつて自分が生まれ育った異世界。だが今や当時の面影は消え失せている。しかし離れる事は出来ない。いや、したくない。此処は〈イレギュラー〉である‘あいつ’との思い出の地であると共に自分の出発点で終着点だから。〕…此処は“彼”の故郷のようだな」
マスターの説明に四季が疑問をぶつける。
「真っ暗闇な此処が?」
そう、此処は真っ暗闇。“彼”の故郷と言うのなら何処か明るい、光が見える場所があってもいいぐらいのものだが辺りを見回しても光らしきものはない。
「うむ…〈想いの荒地〉と言うのは合っているのだろうな。この本が嘘をつくはずがない」
マスターは若葉からもらった本をしまい、古い本の表紙を撫でる。夜征がその古い本を見て、マスターに問った。
「マスター、その本っていつから持っているんですか?」
「わからん」
「「「「「「え」」」」」」
マスターの即答に全員が驚く。それにマスターはその古い本を持って自分も不思議そうに言う。
「私が物心ついた時には既に持っていた。私の〈力〉に引き寄せられたんだと思うが」
「マスターでも分からない事ってあるんだ」
「なんか不思議〜」
可笑しそうに笑う三兄弟に皆がつられて笑う。
此処がどこだって、暗闇だって大丈夫。みんながいるんだから。
笑い合って暫く。マスターが本をしまい、彼らは明るいところを探そうと、此処が〈想いの荒地〉と云うのなら“彼”を探そうと再び作戦会議を開くことにした。
「さて、どうしたものか」
「闇雲に歩き回るのは厳禁だよね」
「〈力〉使ってみるのは?」
「少々危険では?」
「難しいね」
「………安全、第一」
「そうだね、安全第一だ」
そう話し合っていると別の声が混ざって来た。
「すぐそこだよ?」




