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異世界戦争  作者: Riviy
第漆部隊:過去編、彼ラノ悲シミノ夢
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日記二十弐頁目:うずくまっててごめんなさい〜翠〜

「俺の思い出は、2人の笑顔で溢れてるから」




目の前に広がる紅と消え行く命、そしてその現実に、思考が停止した。


『…み…どり…』


ぼやける視界で手を伸ばすアリス。その手を取ってくれるであろう人は自分の目の前にいるのに見えない。


『………気持ち悪い』


どいつもこいつも駒なのに。そんなに感情を露わにして、気持ち悪い。

大将は握りしめていたがために粉々になった元依り代を手放すと部屋に入って行った。


もう、‘こいつ’は用済みかな。


部屋に入る前、濁った瞳を持ったアリスを横目に見て大将はそうもらした。


そんな事などいず知らず。アリスは必死に手を伸ばしていた。大将の欲望の捌け口となって衰弱し、視力が低下した自分。用済みとなって殺されそうだった自分を相棒のかれが助けてくれた。けれど、その翠は、自分の代わりに殺された。


『…うぅ…翠…何処…?せめて、なにか言ってよぉ…』


歪んだ視界は涙のせいかそれとも低下のせいか。アリスは懸命に手を伸ばす。と弱々しくもアリスの手を握る者がいた。翠だ。アリスはそう思わずにはいられなかった。


『翠』

『姐さん…無事…?』

『嗚呼、貴方のおかげで無事だよ』

『よ……かった…』


血の気が引いて行くのが自分でも分かった。視力が低下したアリスが自分を見ることはない。ずっと、空中を見ている。それでも、アリスの温もりと翠の微かな温もりは伝わっている。

もうすぐなのかな。

翠は自分の死を覚悟した。ただ、淡々とその事実を受け入れる。


『…翠、ごめんね…あたしが…弱いばっかりに…』

『姐さんの、せい…じゃ…ない…よ……偶然、でも…来て…助けれて、よ……かった』


アリスの涙が翠に落ちてくる。その冷たささえももう、感じない。


『ありがとう、翠…あたし、貴方と相棒になれて…よかった…』

『っ』


空中を見つめるその目が一瞬、輝きを取り戻したように見えた。けれど、それを確かめるすべはもうない。ギュッと翠はアリスの手を握った。


『…翠?』

『…ねぇ、姐さん…い、や……アリス……俺……アリスと、碧と、3人…で……楽しかった……俺の思い出……』


翠の瞳から涙が伝った。


『………2人の…楽しそうな…笑顔…が…俺の、思い出に……詰まって、る…か…ら……ありがと……』

『…翠っ!』


アリスも翠の手を強く握る。瞳からは大量の涙が伝う。アリスの視線ははっきりと翠を見据えた。濁った瞳は一瞬だけ、輝きを取り戻した。

翠はもう片方の手を伸ばし、涙が伝ったアリスの頬を撫でた。しかし力は無く、弱々しい。アリスはその手を片手で包み込む。翠の手は冷たい。


『………碧…にも……伝え……』


アリス、君のお茶美味しかったよ。もう二度と飲めないのは悲しいけれど。素敵な女性でしたよ。ありがとう。

碧、俺のたった一人の兄弟で親友。君はその悪い方向に向かう考えを変えれば強いんだよ。きっと、俺よりも。君を引っ張り出す人はいなくなってしまうけれど君は大丈夫。自信を持って生きて。だって俺の兄弟だもん。

2人の笑顔で埋められた思い出とまたいつか、出会える事を願って…


『翠っ!!』


アリスの頬を撫でたその手は力無く、彼女の手の中からも滑り落ちた。


***


アリスはいつの間にか自分の部屋に戻っていた。どうやって戻ったのかも記憶がないし、視界が濁っている状態で帰れた事に一種の喜びを感じたがそれを分かち合う1人は消えた。そう思うと止まったはずの涙が零れ落ちてくる。


「あ"あ"……」


流れ出る涙を覆い隠すようにアリスは両手で顔を覆う。

と、アリスを影が覆った。その影はアリスの頭を優しく撫でた。それにアリスは顔を上げずにでもわかった。


「………アリス…?」

「………碧…」


碧だ。碧の表情は分からないけれど、アリスは泣き続ける。


「どうして…泣いてる?…翠、は?」


その問いにアリスは固まった。事実を言えばいいのかそれとも…?でも、翠は『碧にも伝えて』と言っていた。なら答えは一つ。

アリスは涙だらけの顔のまま碧を見た。碧はアリスが泣いていたことにギョッとした様子であったが何やら大切な話と悟ったらしい。真剣な表情になる。アリスは深呼吸を一つし、その真実を告げた。


「…翠が、死んだ…あたしの代わりに殺された」

「…………………」


目を見開いていた。そしてその表情は徐々に真実を受け入れ、そしてその‘感情’を呼び覚ます。碧は優しくアリスの頭を撫でた。アリスの視界は再び、濁り出した。


「翠が『2人の楽しそうな笑顔が俺の思い出に詰まってる』って…」

「うん」

「………だから…碧」

「…………………」

「あたしを………一人にしないで…」


ぼやける視界に碧の瞳が紅く光って見え、アリスは恐怖すると共に何かを感じた。碧の好きにさせたい、けれど、一人にはなりたくない。


「……………俺は……」


泣きそうな顔をしつつも碧は笑う。


「いつまでも…こもっているつもりはない……だから、決着、付けさせて」


コクリとアリスは小さく頷いた。それを見た碧が部屋を出て行く。その姿を最後にアリスの視界は、真っ暗になった。


よく考えたら今作に眼鏡キャラ一人もいないんですけど…マジかよ…でも、大丈夫!(←何がやねん)

楽しく書いております。

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