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Madeniter  作者: での
7/7

監獄の町(中編)

首にできる

禍々しい痣

食い破られる自我

ようこそ

醜い性格をした

新しい自分


この痣は

魔法を使われた事の証


通常洗脳系統をする魔法

そもそも

それらの魔法自体

禁術の類に入るのだが

大抵

術者・洗脳された被害者共々に

痕跡を残さないよう考慮され作られている


ただ、それは違った

ワザと魔法によって洗脳されている事を印している


初めて解った事が一つ

この魔法を使われた者の自我は無くならない

ただ

行動している自分が違うだけ

本来自分で在った者は

自分の意思などと全く違う言動・行動を行っている

まるで『自動人形』

己が凶行を目の前にしていても何もできない歯痒さ

大切な人々を手にかける様を目の前に見せ付けられる絶望


誰でもいい

一刻でも早く

私を

殺してくれ



日が沈み、オレンジ色の景色は闇色に変わっていく、そろそろ出発するとしよう。

結局、『今日は宿に一泊し税対策は明日考えよう』、とウィル達に言って一日この町に滞在してもらうようにした。


ウィル達に気づかれると面倒そうなのでこっそりと宿から出よう。


「あれ、ディノス何処か行くの?」

宿の出入り口で早くもレイに見つかってしまった。


「少し用があってね、ちょっと出てくるよ。」


「今日のお昼のこともあったし、何か危なそうな事に首つっこんでない。」

レイが心配そうな面持ちでディノスを見ている。


「ちょっと古い友人に会いに行くだけだから、大丈夫だよ。」


「そうならいいけど、気を付けてね。」


「じゃぁ、行ってきます。」

そう言い宿を出たあと、裏路地まで一気に走っていった。



裏路地はしんと真っ暗に静まりかえっていた、誰か居ないかと見回していると、グロウが目を擦りながら、こっちに来た。


「御免、起こしちゃったかな、サラは居る?」

少し闇に目が慣れてきてうっすらと見えるようになってきた、ティセが寝ているのは見えたが、サラの姿が見えない。


「あれ?一緒じゃないんですか?」

グロウが首を傾げている。


「えっ?」


「サラ姉は少し前に出て行きましたよ。」


「えぇっ!!」

何故一人で行っているんだ、俺も急いでいかないと。


「起こして御免ね。」

そう言って、急いで城に向かった。



声と雰囲気で昼間の青年とはわかったが、さっきあった青年は見た目が全く変わっていた。

銀色の髪に金色の瞳、その姿には見覚えがある気がするが思い出せない、ただ、何故が目からあふれ出す涙が止まらなかった。

私は先程の銀色の髪をした青年を知っている?


全力で、うっすらとした記憶を辿る、深く辿った先に幼きその顔があった。


「そうか、もうあそこまで大きくなったのですね。」

やっと思い出せた、私が何者であるのか。

行かなければいけない、私もあの場所へ。



ディノスを置いていく、その判断をしたのはディノスと別れてすぐだった。

軟弱そうだし、危険を顧みずに人を助けに来るほどお人好しだし、いくら夜の方が警備が薄いかもって言っても、ちょっとしたことが原因であっさり捕まりそう。


クスッと少し笑った。


それに、あたし一人の方が都合が良いって事もあるし。

コルトは操られていると言っていた、操られているのならば、説得は意味をなさないだろうし、それにもし万が一元のコルトに戻ったとしても、操られている間自分のしてきたことにコルト自身が耐えられないと思う。


だから、いっそこの手でコルトを暗殺する


ずっと迷っていたけど


今日やっとその覚悟がやっと出来た。


音も立てず近づき標的の命だけを奪い音も無く去る、それだけを目的とした暗殺術、あたしは両親が殺されてからソレを身に付けることになった、ソレを習得した。ソレの使い手の人に会うことが出来たのは運が良かったのだと思う、多分。



城の窓から夜空を見る

今日は満月だった

今宵は月が赤く見えた

昔から赤い月は災いが起こる前兆として恐れられていた事を思い出した。


災いが起こって欲しかった

自らを滅ぼす程の災いを。


首筋に何か冷たいものが触れた

ナイフだった、体は激しく抵抗し、暗殺者を突き飛ばして私は床に転がった。


暗殺者の一瞬の躊躇

ソレが生死を分けた、ナイフをそのまま引かれていたら首の動脈をスパっと切断されて血が噴き出し、即死だっただろう。


この暗殺者、技術はあれどもプロではない、プロならば躊躇はしない、対象が存在に気付いたときには、既に対象は死んでいる。


地面に張った体が暗殺者の方向を向く。


その暗殺者の顔を見て驚いた、知った顔だった、昔は良く両親と一緒にこの城に訪れていた子だ。


その子の両親を私は殺した、復讐されても仕方が無い事。

赤き月が災いを運ぶと言うのは本当なのだろうと信じたくなってしまった、私の友人達まででなく友人の娘さえ殺させようと言うのか。



何が『覚悟を決めた』よ、思い切り躊躇をしてしまっているじゃない、タイミングは完璧だった、後はナイフを引くだけでよかったのに、それでコルトを楽にさせてあげることが出来たのに。


「ふはははは、両親を殺された仇を討つ為に単身で乗り込んでくるとは面白い。」

コルトが薄ら笑いをうかべゆっくりと立ち上がった。


「貴方は一体誰、やっぱりコルトとは違う。」

その話し方、佇まい、やはりそれら全てがあたしの知るコルトとは全く違う、あたしはその人物にナイフを向けた。


「誰・・・誰と言われたらコルト・エデュミナスとしか答えようが無いが。」


「違う!!」


「違う?何故違うと言い切れる、貴女が知っている私は貴女が小さいときの記憶に過ぎない、幼い子供の記憶はなぞ曖昧なものでしかないだろう、脳内で過去の私が美化されているだけではないのか。」


「あたしは知ってるんだからね、貴方の首にあるその痣がコルトを操っている事を。」


「ほう、これを知っているのか。」

コルトが首の痣を撫でる様に触った、禍々しいと言う言葉が本当に良く似合う人の顔を模った痣、まるで断末魔が聞こえてきそう。


「まぁ、知っていた所で、どうと言う事は無いのだが。」


「一体何が目的でこんな事を。」


「さてね、ソレは呪いをかけた人物にでも聞くんだね、私は只遠方から届く指示に従って動いているだけでしかない。」

コルトは飄々とした態度で答えた。


「その指示を出しているのは誰?」


「貴方に教えたところで解らないだろうし、話す意味も無い。」

コルトはふぅと詰まらなそうに溜息をついて天井を眺めた。


「しかし、死にに来た人らは如何して毎回同じような事を聞くのかね、正直飽きたよ。」

コルトが目をこちらに移した、圧倒的な威圧感、蛇に睨まれた蛙の気持ちが良く解る、怯んだらいけない。


コルトに向かってナイフを投げた、ナイフはサラの手から離れコルトの頭へ一直線に飛んでいった、コルトは首を少し動かしナイフをかわした、ナイフは軽い音をたてコルトの後ろの壁に突き刺さった。


「的の小さい頭を狙うとはナンセンスだ」

サラがコルトの言葉を遮る様に手をナイフの方に翳した。


「爆発しろ。」

ナイフに向かって大声で叫んだ、ナイフはソレに呼応するかのように激しく振動し、ナイフの周辺に激しい爆発が発生した、レンガ造りの壁は粉々に砕け砂埃が部屋を覆った。


「これは驚いたまさか爆発するとは、見た限りでは仕掛けは解らないが、仕込みナイフの一種かな、だが残念、これしきの爆発で私を殺せるとでも思いましたか。」

砂埃が晴れてきた、コルトは平然とその場に立ち拾ったナイフをまじまじと眺めている。


「ふむ、これは・・・そう言う事か、ふはははは、面白い。」

コルトが顔に手を当て、天井を仰ぎながら、高笑いをしている。


「そうか、まさかこんな所に居たとは。」

何を言っているのか、さっぱり解らない。


「殺してしまおうかと思っていましたが、予定を変更せざるを得なくなりましたね。」


「しかし、暗殺されそうになっておいて、何もしないのでは此方の腹の虫が治まりませんし、どうしたものか。」

コルトが目を瞑り腕組みをしてうんと唸っている、その姿が物凄く隙だらけに見えるけど。


素早くナイフをコルトに向かって投げる、コルトはナイフの気配を察上がるようにして避けた。


この一本は囮も兼ねている、そして避けた所を最後の一本で仕留める、避けた場所の角度・タイミング完璧だ!


って、あれ?ナイフが一本足りない、額から汗が染み出てくる、無い、何故、何時、何所で。

ふと、昼下がりの光景を思い出した。


しまった、ディノスの影にさしたナイフを回収するのを忘れてた、肝心な時にこんなミスをするなんて。


「そうだ、この城の兵士達に犯させるって言うのが良いかな、普段からこの娘に物をすられて鬱憤が溜まっているだろうしな、目の前で親しき友人の娘が犯される様を只見るしかできず助ける事ができないとは、コルトの精神も流石にもたないかもしれないなぁ、双方な悲痛な叫びを聞くことを想像しただけで最高に興奮するよ。」

コルトの笑いが一層高くなりもはや笑い声では無くなっている、狂っているとしか表現できない。


まだだ、まだあそこに刺さっているナイフの力を発動させれれば、チャンスはあるはず。

ナイフの能力を発動させようとした瞬間、体が動かなくなった、指一本でさえ動かせない、一体何が起きたのかわからない。


「此処に刺さっているナイフの能力を発動させられては困るかもしれないですからね、ソレと舌でも噛まれて死なれてしまったら、折角の娯楽がつまらなくなりますしね、そもそも死なれてしまったら困りますし。」

コルトは大声でこの城に居る兵たちに集合をかけた。

数分たっても兵たちが来る様子が無く沈黙だけが流れていった。

少しだけホッとしたのもつかの間、人の走ってくる足音を聞こえてきた。

入り口から入ってきたのは、金色の髪をし、銀色の目をした青年だった。


「よかった、無事だったか。」

青年が力が抜けたかのようにガクリと肩を落とした、ってあれこの青年は昼間の・・・


「ディノス?なんで金髪になってるのよ、それに、この状態が無事に見えるの。」

ディノスは顔を上げて、あぁと呟いた、少し口を動かしたかと思うと、あたしの体がすっと軽くなるのを感じた、ディノスはコルトの方を見て、そして首筋の痣を見た後、少し悲しそうな顔をした。


「久しぶりだね、コルト・エデュミナス。」

ディノスが静かに言った、その言葉は目の前に居る人物ではなく、更にその奥、目の前の人物の内面にいるコルトに向かって。


「ちっ、計ったかのようにタイミングの良い出方をしますね、ディノ・ヴェルン。」

コルトは面白くなさそうに悪態をついた。

ディノ・ヴェルン?ディノスじゃないの?と言うか私は置いてきぼりですか。



「本当に知り合いだったの?」

サラは目を丸くしている。


「そうだって、言ってたじゃないか。」

肩を落としてため息をつく、このやり取り何度目だろう。


「ただ、今、目の前に居る人物はコルトの記憶を持っている別人だけれどね、まったく厄介な魔法を。」

コルトの首の痣を見て怒りがこみ上げてきた、こんな魔法を使うような輩が居る事とコルトがその被害にあった事に。


「ディノ?は魔法の解き方を知ってるの?」

名前を呼ぶときの語尾が上がっていた、やはりディノと呼ばれた事に疑問を持っているのだろう。


「ディノスで良いよ、知っていることは知っているけれど、厄介だね。」


「厄介?解くのが面倒くさいって事?」


「まぁね、俺が治癒系・解呪系の魔法に余り向いていないのと、相手がコルトで在るということ、特に後者が問題なんだけどね。」


「なんで?」


「あの魔法を解く魔法を使おうとしたら、詠唱に時間がかかるんだ、詠唱中に魔力を排斥する

目を使われたらアウトだしね。」

魔力にモノを言わせて、強力な魔法を使う事なら得意なんだけどなぁ、特に解呪系の魔法は丁寧に詠唱しないと直に失敗してしまう、少しでも魔力の流れを崩してしまったら初めからやり直しになってしまう。


中には詠唱を必要とせず、完全な魔力の流れを発生させて解呪をする天才も居るけれど。


「その詠唱に掛かる時間は何分くらい?」

サラが静かにそう聞いて来た。


「およそ十分」

ギュッと唇を噛む、どんなに少なく見積もっても、十分掛かってしまう自分にイラついた。


「十分か・・・」

サラが唇に手を当てて、少し考え込んだ。


「よしっ、その十分あたしが稼いであげる。」



「さて、そろそろ作戦会議は終りましたか。」

コルトは待ちくたびれたと言わんばかりに欠伸をした。


「作戦と言うまでのモノでも無いけどね。」

ディノは呆れた顔をしている。


「余裕顔をしていられるのも精々十分程度よ。」

サラはコルトとの距離を一気に詰めた、ソレと同時にディノが詠唱を始める。


「成る程、自らの体を盾にディノの居る場所を見させないつもりか。」

コルトが動くとソレに合わせて動く、サラはディノの姿を見られ魔力を排斥する目を使用されるのを防ぐため、常にコルトとディノの間を挟む位置に居るように心がけていた。


「だが、この至近距離、魔法を回避する事など出来ないだろう。」

コルトがサラの方へ手を翳す、オレンジ色の火球が三つサラの方へと飛んで行った。

しかし、サラに触れる直前で綺麗さっぱり消滅した。


「なに・・・打ち消された。」

二・三度同じように魔法を使ってもどれもサラには届かない、サラの前で無と化していた。


「びっくりした、この槍凄いね。」

サラの右手には白銀の槍が握られていた。


「なんだその槍は。」

業を煮やしたコルトが叫んだ。


「秘密兵器」

サラは語尾にハートでも付くのではないかと言う程のご機嫌な声で、楽しそうにそう答えた。

一進一退、魔法は尽くディノから借りた槍で全部回避できるし、コルトに接近されたとしてもあたしの方が速い、常に一定の距離をとり続けていられる。


・・・長い、まだ4〜5分と経っていないけれど、既に数十分経っているかのような錯覚を感じてしまう、一定の距離を保つ事、ディノを見られないこと、気を抜く事ができない事がここまで負担になるなんて。


でも、そろそろ折り返し地点、コルトも魔法を使う事を諦めたのかずっと移動しているだけだし、何とかなりそう。


「魔法は封じられ、常に一定の距離を保たれているため距離を詰める事もできませんか、これは本格的にやばそうですねぇ。」

コルトは軽く後方跳躍した。


「ただ、常に一定の距離をとるという事は一定以上近づかれる事も無いという事、ましてや、ディノの詠唱を止める術が無いが、私のこれから起こす行動も止める術が無いでしょう。」

コルトは壁に張り付くように立ち怪しく笑う。


「高々スイッチを押す程度ですがね。」

コルトが壁のレンガを押す、レンガはゆっくりと奥の方へと沈んで行った。レンガが見えなくなった、と同時に激しい揺れ、続いて咆哮、鈍く空気を揺らすような騒音


「なに・・・これ。」

一瞬、外に気を取られた、穴の空いた壁から昔話でしか聞いた事の無いような、ただただ巨大な動物、どんな建物よりも遥かに高く、どんな建物よりも遥かに重い。


「カデンテイア、ドラゴンの一種ですよ、さて、コイツが町で暴れだしたらさぞ甚大な被害がでるんでしょうね、まぁ、道ずれってやつですよ、私が消える道ずれに、この町全てをね、幸いこの町に来る様な冒険者は稀、特にドラゴンに対抗できるような冒険者となれば更に稀。」

コルトはサラ越しにディノを見た。


「唯一この町で対抗出来得る者も詠唱で動けなくなっていますしね、詠唱終了まで恐らく約三分ほど、カデンテイアにかかれば滅ぼすのに三分も有れば十分でしょう。」


「ディノ、あいつが言っているように貴方ならあのドラゴンを討伐することができる?」

ディノの方を振り返る、ディノは詠唱をしながら軽く頷いた。


「だったら此処は良いから速く町に行って。」

ディノは少し考えた後、詠唱を止めた。


「・・・解った、ヴェアフルは預かっておいて、それがあるとコルトも魔法を使えないからね、あとこれ忘れ物。」

ディノがナイフを軽く投げて渡す、サラは手馴れた様にソレを受け取った。


「危ないわね、ナイフを投げて渡すなんて、刺さったらどうするつもりなのよ。」


「それじゃあ、あのドラゴンを黙らせてくる。」

ディノが穴の開いた壁の所まで歩いていった、其処からドラゴンの方を眺めている。


「さっさと黙らせて、速く戻って来てよね。」

ちょっと其処まで出かけてきますと言う様に、ディノは右手を上げて左右に振った、跳躍し穴の開いた壁から外に飛び出す、ふと此処は何階だったかと思った、結構な高さはあったはずだけど大丈夫なのかな。



城に入っていく人物が見えた、一体誰だろうと気になったが、今はそれ所では無い、あんな物騒な魔物を召喚するとは、しかも、どうやって召喚したんだ、召喚に必要な魔方陣も見当たらなかったし、別段巨大な魔力の動きも感じ取れなかった、いや、ソレを考えるのも今は止して置こう、ただ、目の前に居るドラゴンが町を破壊しだす前に黙らせないと。


カデンテイアが空気を吸い込んでいる、腹の大きさが2、3倍に膨れあがっている、炎を吐く気だ、あんなのに吐かれたら町は忽ち火の海と化してしまう、まだ距離が結構ある、間に合うか?いや、間に合わせる!!


屋根から屋根へと飛び移る、速く!もっと速く!!気ばかりが焦って全然距離が詰めれている気がしない。


カデンテイアが上空を向く、もう時間が無い、距離は十分とはいえないが、魔法を使わざるをえない。


ふと、町のほうから巨大な魔力の反応を感じた、一瞬気をとられて町にシールドの魔法を張れなかった、そして張る必要も無かった、巨大なシールドが、俺が使うよりも圧倒的に安定しているシールドが町全体を包み込んでおり、カデンテイアが吐いた炎をいとも容易く防いでいた。


一体誰が・・・いや、今はそんな事はどうでも良いか、あのシールドが何時まで持つかわからないし、一気に終らせないと。



やっと到着した、目の前に聳え立つカデンテイア、近くで見ると本当にでかい。


「さて、さっさと元の次元に返ってもらいますかね。」

右手をカデンテイアの方へ向ける、ぶつけるのは圧縮した魔力の塊、それは一瞬でカデンテイアの心臓を貫いた。


カデンテイアの体は光の結晶となり、その場から消え去った。


町に張るシールドに使う筈だった魔力を攻撃の為するための魔力に使えたのは少々運が良かった。


下手な威力で下手な場所に当てて大暴れされたら困るし、何より苦しませずに送り返すことができたから。


「しかし、一体誰があのシールドを張ったんだろう?」

シールドはカデンテイが消えたと保々同時に解かれていた。

まぁ、気にしていても仕方が無いか、急いでサラの所まで戻らないと。


「あれ、ディノスなんでこんな所にいるの?」

聞き覚えのある声、後ろを振り返るとそこにレイが立っていた。


「人違いじゃないのかい?俺はディノスって名前じゃ無いし、あなた会ったのも初めての筈だけど。」

ここは他人の振りをしていた方が良いだろう。


「なにを惚けてるんですか、私が友達を間違えるわけ無いでしょう。」

レイがニコリと微笑んだ。


色々髪の色とか目の色とか違うんだけどなぁ。


「ってディノスいつの間に髪を染めたの?銀色になってる。」

レイがようやく髪の色の違いに気付いて驚いていた。


「染めたって、一応地毛なんだけど。」

右手で髪を軽く弄りながら答えた。


「地毛・・・という事は普段は黒に染めてるの?」

レイは首をかしげた。


「いやいや、別に染めてはいないよ、この状態の時だけこの色になる感じだね。」


「この状態?」

レイは難しそうな顔をしている。


「そう、魔王ディノ・ヴェルンになってる時だけ、魔族特有の目にこの髪の色になるんだ。」

しまった、レイの雰囲気に呑まれてついつい魔王である事を話してしまった。


「魔王って、まさかウィルの探している魔王ってディノスのだったの?」

レイは驚愕した表情になった。


「とかまあそんな設定だったら面白いかもねって話でした、俺とディノスって奴とは関係ないし、レイはそろそろ宿に戻って寝てきたら、あれだけでかいシールドを張ったんだし疲れてるだろう。」

あぁ、焦っているのか自分でも何を言っているのかわからなくなってきた。


「ディノスって嘘が下手ですね、多分この町で私の名前を知ってるのはウィルとディノスだけなのに私を名前で呼んだり、でも今回はそんな話だったら面白いねって事にしておきますよ、なんだかまだやることが残ってるみたいだし、でも、帰ってきたら教えてね、なんで魔王である事を隠してウィルと旅をしてるのかとか色々。」

レイはクスクスっと軽く笑っていた、さっきまでの驚愕していた表情が嘘のよう。


「わかった、帰ってきたら話すよ、でもウィルには内緒でお願いします。」

ウィルの旅の理由も聞いてるのだから、これは俺のほうも話しておかないといけないよな魔王だといってしまったのだし。


「わかりました、気をつけて行って来てね。」

レイは心配そうな表情でディノスを見つめた。


「うん、でも心配は要らないよ仮にも魔王だし。」

レイに手を振ってわかれた、城の方に向かって走り出す。


城の壁の穴から再び城に入って、そして、其処の風景を見て一瞬思考が止まった、既に決着がついていたから。


城の中ではサラが倒れていたコルトの傍に居た、そしてサラの隣にグロウが立っていた。

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