月の魔法
今朝見てしまった野良猫の遺体に捧げます
「ねえ知ってる?」
「何を?」
「満月の日にね、二人っきりでお月様を見るとお願い事が叶うんだって」
「なんでも叶うの?」
「そう。なんでも叶うんだよ。」
「そっかー。なんでもかー」
「・・・ねえ。試してみない?」
「なにを?」
彼は意地悪く微笑んで、
「月の魔法をさ」
~10年後~
「じゃあ今夜あのベンチに集合ね」
「OK。じゃあな」
今日は10年に一度の満月の日。
本来は満月の日には魔物が出るということで外出は禁止になっている。
けど、私たちは10年前の約束を果たすために月を見ることにした。
深夜。
親に見つからないようにそっと家を出る。
(お父さん、お母さん、ゴメンネ)
心の中でそう呟きつつベンチまで向かう。
ベンチに向かうためには公園を通らなくてはいけない。
公園には一番魔物が出やすいということで慎重に通る。
突然、ガタンッと音がした。
「キャッ!」
驚いて悲鳴を上げる。
「な、なんだ。ただの樽か」
見ると近くの樽が割れただけだった。
「びっくりした・・・でも、なんで急に割れたんだろう」
とりあえず先に進む。
「♪~」
どこからともなくピアノの音色が聞こえてきた。
あっちは通らないように行こう。
ベンチにはもう彼が座っていた。
「ごめんね。待った・・・よね」
返事がない。
「まさか・・・寝てるの?」
返事はない
「全く・・・」
そう言いつつ隣に座る。
「あのね、ここに来る途中でいろいろ不気味なことが起こったよ」
ふと、満月を見上げる。
(うわぁ、綺麗)
頭がぼんやりしてきた。
そのまま彼にもたれかかる。
(このまま、一緒に・・・)
翌日
公園にて少年と少女の遺体が見つかった。
二人共幸せそうな顔をしていたという・・・