ある画家見習いの休日
今日の私は、画家になるための勉強は休む事にした。
勉強中の身だが、自然に囲まれたアトリエを持っている私は、それの外に出、近くの森を散歩する事にした。
その森は、地元の人間には、
「妖精の森」
と、呼ばれている。
散歩だけのつもりだったが、気付いたらスケッチブックと鉛筆を持っている。
「仕方ないな。」
こんな時は、自分が書きたいものが見つかる気がするのでそのまま持って行く事にする。
森に入り、先ず私の目に留まったのは、一際木漏れ日の射し込む広場だった。
妖精の森とは良く言ったものだ。このような神秘的な場所とは思わなかった。
実はこの森に入るのは初めてで、どんな場所なのかは知らなかったのだ。
この場所を、半ば無意識に、何かに誘われるかのようにスケッチをした。
今までにない程、サラサラと書ける。自分の画力とは、まるで思えない出来だ。
「これでは、変な自信がついてしまいそうだ。」
と、自分の中の自分が笑う。
満足のいくスケッチが出来、更に奥へと足を運ぶ。
三十分程歩いた頃だろうか、太陽も頭の上に昇り、腹の虫もざわつき始めた。
「何か持ってくれば良かったな。」
何となく辺りを見渡してみると、木に、白い果実が実っているのが見えた。
全く見たことがないものだったが、後先の事を考えない性格なので、その果実をかじってみた。
すると、信じられない程みずみずしく、甘く、さわやかな気持ちになった。
そこで、この果実も木に実っている状態をスケッチする事にした。
考えてみれば、リンゴ等を並べてのスケッチは、基本としてやっていたが、実っている所を書いた事は無かった。
細めの幹、固めで、青々としている葉、そして、先ほどの、白い果実。
この森のものは、何故かサラサラと書けてしまう。
こんな気分は、そう味わえるものではない。
私は、この貴重な気持ちを素直に楽しむ事にした。
その後、またしばらく歩くと、草むらから何かが飛び出して来た。リスだ。
そいつは、私の前で立ち止まり、小さな目で、私の目をじっと見た。
私はしゃがんでみたが、逃げる感じも無い。
「どうしたんだい?私に何か用かい?」
何気なく話し掛けてみると、そいつは首を傾げ、キョトンとしたかと思うと、私の腕をかけ登り、肩に腰掛けた。
私は何だかおかしくなってしまった。
「あはは、そうか、じゃあ一緒に散歩するか。」
可愛い連れも出来て、より清々しい気分で森の道を歩き始めた。
その後も私は、色々な風景をスケッチした。
その間、私の連れは辺りを走り回ったり、寝転がったりしていたが、私がスケッチを終え、立ち上がると、それに気付き、また肩まで掛け登って来る。
その健気な連れの存在が、また私を癒してくれる。
日頃のストレスも消えた所で、空は夕暮れに染まっていた。
少し薄暗くなっていた森の中をアトリエへと戻っていると、森の奥に、光り輝くものを見つけた。
「あれは…?」
と、突然連れがそこへ向かって走り出した。
「お、おい?何があるんだ?」
私は、それを追って走った。
「これは…。」
そこで私が見たものは、夕日でオレンジに染まった舞台で、無数の白く、小さい光が舞っているこの世のものと思えない程神秘的な光景だった。
私は、完全に目を奪われていたが、連れのリスが目に入り、我にかえった。
体全体が白く光ったと思うと、ほかの白い光より大きめの光になり、宙に舞った。
「妖精の森…。」
私は、この森に住む妖精を見たのだろう。
しばらくして、その白い光はどこかに行ってしまったが、私は追わなかった。
そこは、人が入り込んではいけない領域だったのだろうと思う。
私は、しばらく動けずにいたが、ふと我にかえり、すぐにアトリエに戻ると、今日書いたスケッチを全て燃やしてしまった。
その後、この出来事を忘れる事は出来なかったが、私は二度とその森に入る事はなかった。
今でもあの森では、我々の知らない世界が広がっているのだろう…。
お疲れ様でした。読んでいただいて、ありがとうございます☆何だか、とあるゲームをやってから、妖精やら精霊などの話が多くなってますが、あまり気にしない方向でf^^;最後もハイペースになってしまいましたし、話を書く事にあまり自信はありませんが、とにかく書いてみますので、指摘等ありましたらお願いしますm(__)m