↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

「そんな手入れは無駄だ」と追放された俺、実は武具を腐食から守る唯一の職人でした ~90層で聖剣が折れた勇者たちが泣きついてきても、後の祭り~

作者: AI之助
掲載日:2026/09/15

「おいアレン、その癖どうにかならないのか。魔物の血を拭った布を、なんでいちいちその怪しい液体に浸して磨き直す? 遠征中の水を無駄にするな。時間の無駄だ。今日でお前を『天光の騎士団』から追放する」


 ダンジョン80層の野営地で、リーダーの勇者レオンが吐き捨てた。傍らの聖女と魔導士も「いつも油臭くて嫌だったのよ」「戦力にもならない道具磨きなんていらないわ」と笑った。


「……そうか。この手入れをやめたらどうなるか、お前らも分かってると思ってたんだが」


「言い訳するな! お前の代わりなんていくらでもいる!」


 アレンは黙って荷物をまとめ、道具箱から自作の保全油と研ぎ石を取り出すと、一言も言い返さずに一人でダンジョンを降りていった。


 レオンたちはせいせいした顔で90層のボス戦へ向かった。追放から三日、彼らの進行は順調だった。


「見ろ、あいつがいなくても聖剣の切れ味は変わらないじゃないか! 『90層を超えると空気が変わって、毎晩油を差さないと刃が歪んで砕ける』なんて言ってたが、ただのはったりだったな」


 レオンは聖剣を誇らしげに振り回した。


 しかし90層の最奥、強い熱気と酸性の霧が満ちるフロアに足を踏み入れた瞬間、異変が起きた。


「な……なんだ、剣が重い……!?」


 聖剣の刃先から赤黒い錆が広がっていく。魔導士の杖の魔導石はひび割れ、聖女の防具の金具はぼろぼろと崩れ落ちた。


「嘘でしょ、バリア魔法が防具ごと弾け飛んだ!」


「魔法が発動しない、杖の回路が腐食してる……!?」


 そこへ90層の階層主『腐食の炎竜』が咆哮とともに襲いかかってきた。


 レオンは慌てて剣を構え、竜の爪を弾こうと振り下ろした。


――ギィン!


 甲高い音とともに、聖剣は根元からあっけなく折れた。


「な……に……!?」


 レオンの頭に、追放前のアレンの言葉がよぎる。


『このダンジョンの90層から先は、目に見えない強酸性の魔気で満ちてる。僕が毎日磨いてたのは血を拭うためじゃない。耐酸性の膜を金属の中まで刷り込む作業だ。一日でも怠れば、お前らの武器はただの鉄くずになる』


 あの気味悪がられていた作業は、遠征を支える命綱だったのだ。レオンたちは青ざめ、武器を失ったまま炎竜の前で逃げ惑うしかなかった。


 数日後、なんとかダンジョンを脱出したレオンたちは、ぼろぼろの姿で麓の街の工房に駆け込んだ。


「頼む、全財産払う! 折れた聖剣を直してくれ! それと90層の腐食を防ぐあの油を売ってくれ!」


 工房の奥から出てきたのは、エプロン姿のアレンだった。隣には国内最高峰の鍛冶ギルドマスターが立っている。


「やあレオン。ずいぶん惨めな姿だな」


「ア、アレン!? なんでお前が……いや、ちょうどいい! 悪かった、俺が悪かった! お前の手入れが必要だって分かったんだ。頼む、パーティに戻ってまた剣を磨いてくれ!」


 レオンは床に頭をこすりつけた。だがアレンの目は冷たいままだった。


「断る。僕はもうギルドマスターに引き抜かれて、この街の工房のチーフになったんだ。僕のやり方をちゃんと評価してくれる人のところで働くよ」


「そんな……頼む! お前がいないと俺たちは二度とダンジョンに入れないんだ!」


 アレンは一歩引いて、レオンの手から落ちた折れた鉄くずを見下ろした。


「手入れを金と時間の無駄だと言った人間に、僕の技術を注ぐ気はない。それに……一度酸で内部まで死んだ金属は、二度と元には戻らない。お前らの騎士団と同じようにな」


 アレンは振り返ることなく、工房の奥へ消えていった。


 残されたレオンたちは、二度とダンジョンに挑むこともできず、壊れた武具の借金だけを抱えて落ちぶれていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


最後までお読みいただきありがとうございました!


少しでも「面白かった」「スカッとした」と思っていただけたら、

ぜひ下の【☆☆☆☆☆】から【評価】&【ブックマーク登録】をお願いします!


応援頂きますよう、よろしくお願いします!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。