お時間はどう、森丸くん
私が一人ボーッとしながら受付に立っていると、15時から出勤のさらちゃんがやって来た。
さらちゃんは大学一年生で、このカラオケで高3の頃からもう一年くらい働いている。バイトでしか会わないし、性格や見た目の方向性もなかなか違うのに、どこかうまが合ってよく喋る女の子だ。
「いおりさん、今日あたし15時−22時ですよ。ありえなすぎ」
「ありえないね」
「ぴ率が高すぎ」
「なんて?」
「ぴ率。“ぴえん率”ですよ。だいぶぴえんってことです」
「なるほどね」
「あー、なんか面白いことないっすかね」
あるんだよ、森丸が来てるんだよ、とこれまでの思い出を含め話したい気持ちが込み上げるのをぐっと堪えていると、上のフロアから森丸がちょうど降りてきた。
帽子を取ってメガネだけの状態だ。森丸、それじゃバレてまうぞの気持ちと、バレたらその知名度に嬉しくなるなの気持ちが交錯していた。
そして私たちの前をスタスタと通り過ぎ、ドリンクバーで飲み物を調達してまた去っていく森丸を、さらちゃんと一緒に見届けた。
「いおりさん」
「ん、何?」
「さっきの人」
「さっきの人……?」
バレてくれたのか……?
「背高くてカッコよくなかったですか?」
「あっ、そうだね。ほーん、確かに」
求めてたのとは違うけど、褒められた、森丸。
それからまた森丸が来ないか少し気にして見ていたが、それ以降は見ることができなかった。しかも、私がちょうどトイレ掃除に行っていた時に退店してしまい、帰る森丸も見れなかった。
もう2度と会えないかもしれないと思うと、せっかくのチャンスがもったいなかった気もしたが、一目見れただけでも十分良かった。
* * *
退勤後、私はからあげライングループを久しぶりに開いた。良かった、まだ“からあげ(4)”のままだ。
思い切ってそのままグループ通話を始めてみると、みんな続々と出てきてくれた。
そしてバイト先に森丸が来たという一大ニュースを話すと、その場は大変盛り上がったが、それよりも久しぶりにからあげのみんなと話すのが楽しすぎて、地元で就職した山下の、〜波乱万丈一人暮らしへの道〜を聞くのがほとんどになり、最終的な内訳では森丸の話は1割にも満たなかった。
それからちょうど1週間後の金曜日。
「フリータイムで」
前回の反省を生かした森丸が現れた。




