ドリンクは何、森丸くん
それから私は大学進学のため上京し、森丸はその年5月に正式にデビューした。
みんなで見守った森丸がついにデビューした訳だが、私たちの中で再び話題に上がったのは、翌年の6月にグループのメンバーである高野純也が脱退した時くらいだった。
森丸のグループ“レザー”は元々“leat6er”という表記だったが、この高野純也の脱退により5人組になったので今のカタカナ表記へ変更された。
カタカナでレザーはダサすぎるという声もあったそうだが、“leat6er”ですでにダサいのでいいだろと思った。ダサいな〜と笑える感じもなく、6を使って上手いことかっこよく収めました感がカタカナよりもダサかっただろと思った。
脱退した純也のメンバーカラーは紫で、見た目も紫が似合う、怪しげなイケメンだった。カリスマ性とラップの才能も併せ持った純也は人気のメンバーで、オーディションの最終順位も2位だった。
からあげラインもこの時ばかりは、
『たかじゅん脱退まじかー』
『かなしい〜』
『(ハムスターが涙の海を泳ぐスタンプ)』
『あえて純也がいるのが良かったのにね』
『それ!』
などと無責任な発言で盛り上がっていた。
ちなみに他のメンバーは1位でデビューした赤担当のリーダー、竹内天太。3位、青担当の佐々木洸。4位、オレンジ担当の山本風李。5位、黄色担当の日野広人。
森丸は6位で緑を担当している。
オーディション当時は他のメンバーについても調べたり、推すとしたら誰かな〜と考えたりもしていたが、大学生になってからは他にハマったアイドルができたのもあり、脱退などの回ってきやすいトピックしか、レザーのことを見なくなってしまった。
私は所詮その程度のミーハー人間だった。
* * *
そして大学3年生の今、森丸と再会している。ワンドリンクかドリンクバーか悩んでいるところを見ている。
こっちは一方的に話題にしていたから分からなくなるが、森丸と会うのは中3の時以来なので6年ぶりだ。
アイドルになった森丸に会うことができるとは思わなかった。
「ドリンクバーで」
そう答えた森丸にドリンクバーの場所と部屋番号を案内した後、去っていく姿を眺めていた。
早くからあげラインで言いたい。電話してでも言いたい。森丸がいたと。
しかし、なんで森丸が私のバイト先である、このカラオケにやって来たのか。金曜日の昼過ぎに。
こんな池袋の西口にあるカラオケ“ポップタイム”に。大手チェーンでもないこの謎カラオケに。安いからか? 目立たないからか?
ここに一人で3時間後の予定まで暇をつぶしに来たのか、2時間半歌いたかったのか、それはありえないのか、考えたら気になって仕方がないけど、ここでバイトの仕事以上に踏み込むのは人として良くない。
でも、森丸が受付用紙に書く名前を、一応“佐藤天音”にしたことは誰かに言いたい。




