序章5話 「助けて」
エレノア・メタトリアスは、価値なき子達のリーダー的存在だった。自身も価値なき子でありながら処刑場から逃げ出し、他の子供達を助け続けていた。
十二人。それが、エレノアが助けた命の数。
しかし十三人目の救出で失敗してしまい、捕らわれた結果が今に至る。
(どうして……なんで……なんで、わたし達がこんな目に合うんですか……)
あと五分もすればエレノアは首を撥ねられ、仲間達も順番に殺されていくだろう。
(わたし達は、ただ――)
――生きたいだけなのに――
価値なき子達を助けていく中で、そのリーダーとして、エレノアは常に前を向いて生きてきた。しかし今は冷たい石畳の床しか映っていない。
死ぬ、殺される。首を撥ねられたらどれくらい痛いんだろうか、苦痛なくすぐ死ねるのだろうか。いやだ、こわい、まだ死にたくない。
気付けば涙が零れ、ポタポタと石畳を濡らしていく。
(お願い、だれか)
十歳になったばかりのエレノア・メタトリアス。
(だれか、だれでもいい。だれか……!)
死の恐怖に支配されゆく心。ありはしないと知ってはいつつも、希望に縋りつかざるをえなかった。
「誰か……助けてください……!」
届かぬ願い、叶わぬ祈り。
エレノアの助けての声は、無意味に声に溶けていくだけだった。
――そう。
――本来であれば。
「何者だ! 貴様は!」
騎士が剣を振り下ろす刹那、漆黒のコートを纏い、仮面を身に着けた人物が、突如壇上へと現れたのだ。
声色からして、彼、はこう言った。
騎士の前に立ちはだり、エレノア達には心からの慈愛を乗せて。
「――聞こえたよ、君の、助けての声が」




