序章1話 滅びゆく人類
――ノーリエス・アリアは今まさに、人類が滅びゆく光景を目の当たりにしていた――
神の視点、とでもいうべきか。暗雲立ち込める夜空を背にし、遥か上空からアルカディア大陸全土を見下ろしている。
視線の先に映る光景は、誇張なき地獄絵図。
一本の巨大な樹から伸びる無数の根に、人々は次々と串刺しにされていく。悲鳴を上げながら木の根から逃げまどい、それでも間に合わず断末魔をあげている。
アルカディア大陸に存在する、『王冠』から『王国』へ至るまでの十か国。
十か国全てで、総人口一億にも及ぶ国民達が瞬く間に木の根に貫かれ、まるで樹の養分にされるかのように吸われていった。
(どうして、こんなことに……)
ノーリエスには、こうなるに至った記憶が一切ない。知っているのは自身の名前と、十五歳という年齢、そして大陸には十の国が存在しているということのみ。
まるで今、この瞬間に誕生でもしたかのように、気が付いたら人類が滅びるという惨劇を目の当たりにしていたのだ。
業火が躍り、血飛沫が舞う。
その凄惨たる光景はもはや直視することさえできず、たまらず目を閉じた。
けれどもまるで、刻み付けとでも言わんばかりに、閉じた瞳の中で地獄絵図が描かれる。耳を抑え現実逃避するが、これがノーリエスの宿命だと訴えかけるように、叶わぬ「助けて」という叫びが鼓膜の中で反響する。
なぜ自分はこんな目にあっているのか、なぜ人類は滅びの運命を辿っているのか、全てにおいて、何がなんだか分からない。
ノーリエスがただ思うのは、殺されゆく国民を助けたいという英雄心。
やがてノーリエスは意を決し目を開ける。
なぜそう感じることができたのか、自分でも分からない。
けれどもノアは誓ったのだ。
――もし、もしも。この状況を救えるだけの力が自分にあったのなら。
――必ず皆を助けてみせる、と。
誓いを立てた刹那、背後から強烈な光が迸った。
振り返れば暗雲が晴れ渡り、手を差し伸ばすかのように光が。ノーリエスは光に包まれ、そして――。




