第3話 規格統一と新式火器
バシュン!
鋭い銃声が響いた。
「やっぱり反動は強いが威力にはかえられん。リーエンフィールドねぇ。英国の威信はすごいがオーストリア製も悪くない」
「ただ三八式歩兵銃の後継にするには…」
「うむ。弾薬規格だけ揃えるのが丁度いい所だ。弾薬に互換性があれば一先ず戦うことはできる」
「軽機はどうにかなりそうです。なんといってもチェコ製が最高です」
中国の広大な大地に射撃演習場を設ける。内地は狭くて堪らなかった。中国ならばどんなに撃っても大丈夫と言われる。変な方へ飛んで行っても民間人に被害が出ることは無かった。仮に出たとしても不慮の事故と処理されるだけ。ここで様々な兵器の試験が行われた。
日英同盟を記念しての以前に軍事演習を繰り返していると規格が異なって連携が難しい問題が浮上している。両軍で異なることは当然かもしれないが、日本軍は小銃と機関銃で口径が異なり、陸軍と海軍で異なるという問題が存在した。あまりにも非合理的である。日本国内だけで解決するには何かと面倒なためイギリスを抱き込んで強引にも規格統一を目指した。
大前提として一部を除いて小銃と機関銃は7.7mm弾への統一が決まる。従来の三八式実包の6.5mm弾は決して悪くないが威力不足は顕著だった。諸外国の7.62mmや7.7mm、7.92mmに撃ち負けることが指摘される。もちろん、日本人の反動制御と負担軽減は理解できるが撃ち負けては元も子もなかった。すでに7.7mm弾を使用した重機関銃と車載機銃、航空機用機銃がある。小銃弾の口径を改めることは急務と定められた。
ズドドドドドドド!
「うるさいな!」
「仕方ないですよ。新型のチェコ製は九二式とは比べものにならない。高性能ですから」
「チェコ製か。ならいい」
(いいんだ)
最新型の試製小銃は期間短縮のため従来品をベースにして日本軍仕様に磨き上げている。日英同盟のおかげで大量のリーエンフィールド小銃が流入した。滑らかな動きと大容量は驚愕の逸品である。ブリティッシュ303という7.7mm弾を使用した重機関銃と軽機関銃は確立済みだ。小銃をリーエンフィールドに置き換えることが手っ取り早い。とはいえ、三八式歩兵銃から大きく変わる以上は難航を余儀なくされた。リーエンフィールドの国産化で決まりそうなところで意外な選択肢が浮上する。
「嘗ての大帝国の遺産か」
「イギリスは業者を斡旋してくれますからね。すでにチェコ併合を逃れた者とオーストリア併合から逃れようとする者が殺到しました」
「マンリッヒャーの遺志は継がせていただく」
次期主力に内定予定は九九式小銃の名称を確実視した。なんということ、オーストリア=ハンガリー帝国のマンリッヒャーM1895を取り上げる。あまり聞き馴染みのない小銃だが一部では究極的なボルトアクション式小銃と有名だった。オーストリア=ハンガリー帝国の崩壊から潰えたように思われる。イギリスは舌の枚数を活かした。オーストリアのマンリッヒャーに新たな市場として日本を紹介している。イギリスは日本からの要請に基づいて欧州製品を日本に流した。日本が直接輸入するには色々と制限がある。しかし、イギリスをすることで簡単に入手できた。現にオーストリアだけでなく、チェコスロヴァキア、ベルギーなどが逃れている。ナチスの脅威に晒された国々から避難が相次いだ。
マンリッヒャーM1895は三八式とリーエンフィールドの回転式ではない。ストレート式のボルトアクションを採用することで直線的な操作感は良好だ。さらに、M1ガーランドのようなエンブロック式の装填方式を採用している。これにより素早い再装填と素早い操作から速射を得た。前大戦時はドイツ軍に「あっという間」と言わしめた程である。リーエンフィールドのライバルと言って差し支えなかった。しかし、その方式が災いして過酷な戦場では動作不良を誘発してしまう。日本の大地で改良に励んで現代版に改めた上で九九式小銃として生まれ変わった。
「本当に大丈夫なのか?」
「使い勝手が大きく変わりますからな。三八式歩兵銃と似た方が良い兵士はリーエンフィールドです。マンリッヒャーが良い兵士は試製小銃で行きましょう。弾が同じなら幾らか融通が利きます」
「それはそれで困るんだがな」
「弾の規格がてんでバラバラに比べればマシですよ」
「ふ~ん。まぁ、いいか。実際に戦うのは俺たちじゃない」
マンリッヒャーは8mm弾のため7.7mm弾に改める。エンブロック式は変わらないが弾数は8発まで増加した。クリップは下方から排出される方式をやめて上部に跳ね上がる方式に変わる。これにより下方から泥や砂が入り込むことをなくし動作不良を減らした。しかし、クリップを紛失した際に再装填が著しく面倒な点は課題と残っている。銃身は切り詰められて反動は強烈で精度は悪化したが中距離と近距離の撃ち合いではあっという間で火力を吐き出した。
三八式歩兵銃から大きく変わるため習熟が進むか懸念される。結局のところ、リーエンフィールドを国産化して運用することも決定した。弾薬さえ同じであれば小銃が違っても何とかなる。それでも非合理的は変わらなかった。やはり歴史は繰り替えされてしまうのか。
「拠点用の九二式重機関銃と移動用のチェコ重機関銃、チェコ軽機関銃」
「九二式は重すぎた。ありゃ使えん」
「まぁ、よく当たるので拠点用が良いですよ。小隊単位の支援火器はチェコ軽機関銃が担当します。もっと広げるとチェコ重機関銃です。13mmを使おうと言われていますが要検討かと」
「チェコが作ってくれないか」
小銃と異なり軽機関銃は全会一致でチェコ製に可決した。イギリス軍も採用するZB-26の国産化が進んでいる。九六式軽機関銃と運用していたが性能はそのままに材質を落として生産性を高める後期型を開発した。チェコ製はとにかく頑丈で壊れないと信頼性は圧倒的を極める。
新式重機関銃もチェコ製を素体に採用を予定した。九二式重機関銃は大重量で機動力に欠ける。保弾板の都合で持続性も欠けた。高い精度は魅力的なため拠点防衛用の固定火器に継続する。最前線で移動を繰り返す運用からは除外されて新たにZB-53をベースにした新型重機関銃が登場した。
これはZB-26と同じ作動方式を採用して極めて故障が少ない。重量は九二式から約10kgも軽量化された。弾薬は7.7mm弾を金属製ベルトで装填して100発と200発から選択できる。発射速度は毎分500発と700発の切り替えが用意された。重機関銃としては可もなく不可もない。ブローニングを押す声もあったが、高度に政治的な判断により、チェコから導入することが決まった。
「さて退散するか」
「早くありません? まだ撃てますよ?」
「立つ鳥跡を濁さずだ。というのは冗談でな。このあとは戦車隊が使うんだ。邪魔しちゃいけんだろう」
「場所ぐらい。幾らでもあるでしょうに」
「うだうだ言うな。薬莢を拾わなくて良いだけ片づけは楽だぞ」
心地良く射撃している。いつまでも続けるわけにはいかなかった。この後の予約のお客さんがいるため後片付けを始める。日本人たるもの演習場を綺麗にしてから去ることを美徳に定めた。薬莢を漏らさずに回収することに比べれば遥かに楽である。ここは何発撃っては捨てても大丈夫な場所だった。したがって、戦車や野砲の試射でも使い勝手が良くブッキングは日常茶飯事である。
「歩兵戦車と巡航戦車ねぇ。ちょいと見学させてもらいますか」
「そうしましょ、そうしましょ」
「せっかく綺麗にしたのに…」
戦車がゾロゾロとやって来た。
これもまた日英同盟に基づいている。
続く




