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日英同盟不滅なり  作者: 竹本田重郎


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第14話 ポーランドに続いて

【10月】




 ポーランドは全面的に降伏した。すでに政府は瓦解している。各地で残党軍が抵抗するぐらいだった。組織的な抵抗は終了する。独ソが東西で分け合った。事前に取り決めた秘密協定に基づいている。ポーランド侵攻を祝したパレードを計画する程に仲良しを見せつけた。




「さぁ、来るがいい。俺たちが迎え撃つ」




 ソ連はヨーロッパ側が落ち着き次第に纏まった兵力を極東に回し始める。イギリスのMI6がシベリア鉄道の動向から大規模な攻勢を教えてくれた。我らが持つべきものは友である。実際に航空偵察から戦車隊と砲兵隊、騎兵隊など纏まった兵力の展開を確認した。ソ連軍の大規模攻勢が近いと判断して防衛線を固める。航空戦は大勝利を収めて制空権は掌握しており早期発見に努めた。




 特にハルハ川に沿って築かれた防衛線は要塞でこそないが効率を重視している。前大戦から続く塹壕だが機関銃だけでなく速射砲(対戦車砲)も置かれた。イギリス陸軍将校が苦笑いした噂の即席トーチカがズラリと並ぶ。一様にソ連軍の方向を向いた。いつでも来いと高い士気を誇るが、ソ連軍の攻撃は苛烈と相場が決まっており、百聞は一見に如かずで眺めると地獄を知る。




「なんて連中だ…」




「ただの塹壕だったら死んでたな…」




「さぁ来るぞ。奴らがな」




「あぁ…」




 ソ連軍の突撃は意外と察知しやすかった。なぜならば、事前に猛烈な砲撃を浴びせてくる。ただの砲撃程度であれば牽制や地雷除去で収まった。止まることのない永遠に感じられる時は突撃の合図。その砲撃をカーテンにして歩兵や戦車が突っ込んできた。あまりにも危険な動きである。さすがは大国だ。兵士の命はいくらでも。




 一方で現地守備兵力は塹壕で耐え抜いた。ただの塹壕ならば巻き込まれたかもしれない。旧式と雖も立派な戦車の砲塔に隠れた。数十ミリの装甲でも爆風と破片から身を守ることができる。砲撃が一段落してすぐ配置につき直した。砲手と装填手の2名で運用して相手が何かによって砲弾を切り替える。対戦車の徹甲弾と対人の榴弾の在庫は確保した。弾切れになっても同軸機銃で対歩兵は継続できる。珍妙な見た目の割に考えられていた。




「来た! 戦車の群れだ! 歩兵もいる!」




「徹甲弾! 戦車からやる!」




「わかった!」




「軽戦車ぐらい一発だ」




 覗き穴から文字通りの覗き見をすれば戦車の群れと歩兵の群れが見える。その特徴的な見た目から識別するまでもなかった。T-26軽戦車である。ただの軽戦車と侮ってはならない。戦車の主砲が37mm級が主流の中で45mm砲を搭載した。ソ連軍の45mm砲は対戦車砲としても歩兵砲としても優秀である。ソ連の火砲に関する技術はトップクラスなのだ。




 しかし、ソ連軍の戦車は小型を意識し過ぎている。内部はギュウギュゥの詰め詰めだ。一発の被弾が命取りになる。いざ込めた57mmの徹甲弾は少量ながら炸薬を含んだ。100mmの装甲板を貫徹する威力のため一発でおしゃかにする。内部の乗務員は壮絶な最期を遂げるのだ。




「てっ!」




「はい次!」




「数が多いな。砲兵の支援が欲しくなる…」




「やられなきゃ、戦いようはある。最悪は打って出て死のうや」




「わかってる。まだ死なないがな」




 敵戦車隊は砲撃しながら接近を試みる。45mmの榴弾が陣地に突き刺さった。しかし、狙いはお世辞にも良いと言えない。むしろ、下手くその一言で足りた。これは有名な話だがソ連戦車兵は一発目を必ず外す。練度が足りていないのではなくてソ連製品の質が悪すぎた。数百メートル先の目標を狙う場合は照準器を用いる。この照準器が曲者なのだ。ガラスは気泡が入って濁っている。とてもだが真っ当に狙いを定めることはできなかった。1発目の弾着を見て修正するがその難易度も高い。




「ざまぁみやがれ。57mmだぜ。こっちは」




「おっと至近弾。危ない、危ない」




「俺たちの棺桶は頑丈だ。次を頼む」




「はいよ」




「歩兵が来る! いったん機銃を使う!」




「俺が砲を使う! そっちはまかせた!」




 57mm徹甲弾の直撃を受けて無事でいられるわけがなかった。T-26の群れは次から次へと擱座していく。派手に爆発四散することは無いが残骸が連なった。それでも止まらない。味方の戦死は自然現象に過ぎず、気にするだけ無駄と断じた。45mm砲だけでなく76mm砲の榴弾も飛んでくる。至近弾で揺さぶられるが装甲が悲鳴をあげるだけだ。真正面に直撃しなければ耐えられる。直撃した場合は戦闘不能と陥るが、辛うじて生き残り、己の持ち場を放棄して退避に移った。




 これに業を煮やしたのか歩兵が肉薄して来る。きっと手榴弾を投げ込むつもりだ。速射砲の隙間を縫っている。器用なことに感嘆することもなく無慈悲な掃射を開始した。同軸機銃を搭載する小幅な改造が行われて九七式車載機銃がニュッと出ている。7.7mmの弾丸をばら撒いて歩兵の接近を拒んだ。車載機銃のため箱型弾倉を使用してベルト式の持続的な火力は期待できない。あくまでも、砲撃中に接近された場合の自衛手段だ。




「くそ! 装填する余裕がない!」




「もう一人ぐらい欲しかったな!」




「まったくだ! 人員の配置ぐらい考えて欲しい!」




「まずい! 敵戦車が来る!」




「やられるか…」




 ソ連軍の突撃は全滅するまで止まらない。敵兵も死に物狂いだった。仮に逃げる素振りを見せれば特戦隊の機関銃か野砲の裁きが待っている。背水の陣を人工的に作り出すとは恐れ入った。敵軍は突撃の勢いと数量を活かして即席トーチカに対応する余地を与えない。砲手と装填手がそれぞれ攻撃に回ってしまい再装填が間に合わなかった。T-26が肉薄して来る。45mm砲と76mm砲の二種だけでなかった。化学戦車という火炎放射器搭載型もいる。瞬く間に砲塔は灼熱に包まれ、僅かな隙間から炎が入り込み、全身に重度の火傷を負っていった。戦場の音でかき消されている。近場に聞くに堪えない絶叫が生じた。これまでかと覚悟を決めた瞬間に戦場の女神が微笑んでくれる。




「うおぉ…」




「しっかり!」




「すまん。頭をぶつけたが意識はある。な、何が落ちてきた」




「味方の砲兵隊だ! 砲兵隊が来てくれたぞ!」




「最初からいてくれよ! ちくしょうが!」




「あとで文句を言ってやる!」




 悪態を吐いているが喜びの声だった。T-26は随伴歩兵もどきと一緒に吹っ飛んでいる。57mm砲では不可能な破壊だ。その壊れ方からして上方からの一撃だろう。したがって、友軍の砲兵隊が攻勢を挫く逆砲撃を行っていた。最初から撃ってくれという気持ちは痛い程に理解できる。しかし、あまりに戦場が広すぎて即応は困難なのだ。辛うじてだが間に合っただけ良い方である。当人たちは考える間もなかった。




 しかし、現場に到着から展開まで異様に早いように思われる。その正体は簡易自走だった。現地の砲兵隊は迅速に展開して迅速に撤収できる自走砲に憧れを覚える。今すぐにでも自走砲を受領したいがそう簡単にいかなかった。それならば自分達で作ってしまおうと牽引車に目を付ける。彼らはフランスのソミュアMCLハーフトラックを有した。その荷台にイギリスのオードナンス25ポンド砲(84mm)を載せている。この25ポンド砲は105mm砲ほど大型でなく75mm砲ほど弱くなかった。間接照準と直接照準を両立して極めて使い勝手が良い。




「ここで赤の連中を叩き出す! 撃って撃って撃ちまくれ!」




 世にも奇妙なトラック自走砲部隊が前線に出張った。




続く

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