表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日英同盟不滅なり  作者: 竹本田重郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/13

第12話 舞鶴にて

【1939年9月下旬】




「政府より発表。満蒙国境線において大規模な武力衝突が発生。大日本帝国陸軍は自衛活動を開始しソビエト連邦と交戦した。繰り返す。大日本帝国はソビエト連邦と交戦状態に突入」




「ポーランド政府より緊急発表。ポーランドはドイツとソ連の挟撃を受けつつあり。繰り返す。ポーランドはドイツとソ連の挟撃を受けつつあり。」




 ラジオは緊急放送に塗れた。




 欧州の大地ではナチス・ドイツとソビエト連邦が阿吽の呼吸が如くポーランドへ電撃的な侵攻を開始する。まさに示し合わせたようだ。東西から挟み込まれたポーランドはイギリスとフランスから保障を受けている。大国らしい生存戦略か中小国を犠牲にした。自国の安全を図るために初動は静観が図られる。とはいえ、国際的な約束に基づきイギリスとフランスはドイツと形式的でも交戦状態に陥った。




 極東の大地では日本とソ連の国境線で大規模な武力衝突が発生する。小規模な乳繰り合いから砲撃と爆撃を含んだ大規模な衝突が勃発した。日ソの現地軍は空白地帯へ進出と戦線を構築している。また現場単位の交渉で収束が図られるという希望的観測は一刀両断した。戦車隊まで出動する程である。日本側はソビエト連邦が満州侵攻ひいては極東侵攻を開始したと宣伝した。




 これに伴い、イギリスとフランスはドイツ、大日本帝国はソ連と交戦に突入する。もっと拡大すれば、イギリスとフランスと日本のグループとドイツとソ連とその他中小国のグループに分かれ、二度目の世界大戦が生じた。この緊急時に際して日英同盟は即座に独ソ同盟を相手すべく、フランスやオランダ、ベルギーなどと共同戦線の構築を発表する。以前から水面下で連携強化が図られてきたが遂に浮上した。




 このような状況下で対ソを睨む日本海軍の舞鶴基地が揺れている。




「今こそウラジオストクとナホトカの攻撃を! 沿海州の奪還を!」




「時期尚早だ。今は待つんだ。下手にやると大義が崩れる」




「大義も何も満州がやられています! 海軍が黙って見ていろと!」




(これだから若い奴は血気盛んだ。大局を見れない)




 舞鶴基地は史実でこそ比較的に小規模な拠点に止まった。イギリスなど諸外国の船舶を受け入れるなど適当なことを言い張る。本世は民間向けと称して本格的な軍事基地を整備した。さすがに戦艦や空母の建造は難しいが重巡洋艦程度は収まる。工作艦や浮き船渠の力を借りれば戦艦と空母の修理は行えた。ここは対ソ用の哨戒部隊が常勤と配置される。その時期によっては漁業の護衛艦隊や演習の艦隊が時限的に駐留した。




「いいか。ウラジオストクとナホトカの攻撃は実行予定に変更はない。うちにあるのは巡洋艦と駆逐艦だけだ」




「十分です。ロシア海軍から続いて脆弱そのもの」




「お前はわかっちゃいない。火力不足だ何だ言うつもりはない。俺たちは正義の執行者だ。違うか?」




「違いません」




「だったら時期を見定める必要がある。奴らに殴らせるだけ殴らせて被害者の印象を作り、イギリスとフランスだけじゃなく、アメリカを含んだ世界に反撃の正当性を認めさせ、それから盛大にぶん殴るってことだ。わかるか?」




「は、はぁ」




「世界の報道は馬鹿にできない。現にナチスの野郎どもは宣伝戦で勝利してきた。手を出した方が真っ黒に塗られる。奴らは欧州じゃ正義の解放者なんだ。ソ連が同じことをしてくる。それが分からんのか? 馬鹿者め」




「も、申し訳ございません。自らの浅慮を恥じております」




「わかったら、情報を集めてこい!」




「はい!」




 若い士官は即時の出撃を主張したがピシャリと封じる。その感情は理解できたが好機を窺う必要があった。ウラジオストクとナホトカに代表される沿海州は要塞化されたと雖も海軍にとっては軟弱を極めている。戦艦と巡洋艦の艦砲射撃、空母艦載機と基地航空隊の空襲を行えば防御は容易に瓦解した。ソ連海軍太平洋艦隊は一週間もあれば殲滅できる。もちろん、機雷の掃海作業や障害物の除去作業など地道な努力は求められた。




 現在の舞鶴基地の戦力は5,500t級防空巡洋艦と量産型駆逐艦、海防艦、駆潜艇、掃海艇など軽量が占める。これで戦えないこともなかった。しかしのできればである。被害なく完全なる勝利を収めるが吉だった。敵の空軍基地は爆撃機と戦闘機を配備し、沿岸には30cm級の砲台が並べられており、潜水艦や魚雷艇など数は揃っている。今すぐに出撃して叩き潰すとは感情が先行するだけの愚行に値した。




「改造空母の1隻か2隻を貰えれば戦えるんだが。まずは腹ごしらえとしようかな。今日は肉じゃがの日らしい」




 現場の裁量は広範だが軽挙妄動は恥ずべき。空腹で思考が纏まっていない可能性が否めなかった。腹ごしらえに食堂へ向かう。舞鶴と言えば肉じゃがで不動の人気メニューと提供された。最近は食糧事情も改善傾向にある。イギリスより承継した旧領地で農業の開発を行っていた。農産物を逆輸入して国民生活を圧迫しないように軍の糧食も賄う。




「やぁ、今日を楽しみにしていたよ」




「えぇ、えぇ。たんと食べてくださいよ。出撃が近いんでしょう」




「はっきりいって、まったくわからない。私は陸地の人間だ。部下を死地へ送り出す」




「辛いですな。おまけしておきます」




「上に噛み付いて空母を寄越せと言おうかなと思っている。いつもありがとう」




 食堂につくなり列に並んで順番を守った。一部の士官は偉ぶって優先を強いる。この舞鶴の責任者は違った。士官も下士官も民間人も問わない。きちんと順番を守った。別に焦らなくても出来立ての料理が提供される。艦内では規律の維持などから分離されたが、まだ平和な陸上では人間として良くありたかった。




 今日の献立は麦飯に肉じゃが、漬物、野菜サラダ、果物である。意外と質素だがメインを務める肉じゃがはジャガイモがゴロゴロ、タマネギとニンジンも良いアクセントをし、えんどう豆がプチッとしていた。たっぷりと提供されて兵士の腹を満たそう。麦飯は脚気を防止して野菜と果物が栄養を補充した。




「美味い。一日の活力だ」




「お隣失礼しますよ。司令官」




「勘弁してください。トム大佐」




「ハハハ。あなたを揶揄うのが楽しくてね」




「まったく」




 いざ席に座って食べ進めていると馴染みの大佐が横付けしてくる。彼はイギリス海軍から派遣されたトム大佐という駐日武官だ。指揮権などは持たないがオブザーバーとして第三者的な視点より助言をくれる。上層部に噛み付く際も英海軍の助言と付け加えると無碍に却下されなかった。また、英海軍に何か頼む際の窓口と機能する。栄光あるロイヤルネイビーの一員だがフランクで安堵した。日本の食事に合うか不安だったが「郷に入っては郷に従えだろう?」と自ら適応する努力を重ねる。




「これから大変なことに」




「はい。望むところですが無駄な犠牲は払いたくない」




「我々の本隊はファシストの相手に忙しいが極東を軽視することもできない。艦隊を何とか引っ張ってこれないか」




「くれぐれもご無理はなさらずに…」




「出世の心配ならご無用です。本国で嫌われたのでこれ以上は…」




「そんなことを言わないでくれ」




 イギリスは独ソのポーランド侵攻に集中した。極東情勢はその次とならざるを得ない。日本が抑え込みを図っているが完全なる無視もできなかった。陸軍と空軍の義勇軍を派遣している。海軍も遅ればせながら艦隊を送り込みたいが地理的にドイツとイタリアが脅威で割き辛かった。




「日本で点検と称して東洋艦隊を引っ張り込みます。戦艦2隻だけでもよろしいでしょうか」




「な、なにを」




「私とて本国に影響力がゼロではありません。伝手と言うのがあるんですな」




 ニヤッと笑う。




続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ