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読み聞かせにもぴったりなオリジナル童話シリーズ

げんぺい こいのだいがっせん【冬の童話祭2026】

作者: 有馬 泉貴
掲載日:2025/12/01

    1

 じめじめと、くさきも あせしたたる

 なつまっさかり。


 ここ ふじがわのほとりでは

 ゲンジボタルたちが、こんどひらかれる 『こいがっせん』の 

じゅんびの まっさいちゅう。


 みんな、いそがしそうに ぶん、ぶん、ぶん、と とびまわっています。


    2

 『こいがっせん』は、ねんにいちどひらかれる ほたるたちの こいびとさがし。


 みんな、いちゅうのあいてに アピールしようと、おおはりきり!


 おしりのひかりがよくみえるよう、ピカピカに みがいたり……

 おはなで、おしりを かざったり……


 おもいおもいに くふうをしています。


 そんななか、ゲンジボタルの「よしつね」だけは、いっぴき くさばのかげにすわりこみ、みんなのようすを じっと、うらやましそうに ながめていました。


    3

 「ぼくは みんなみたいに、ピカピカと かがやく あかるいひかりも、まあるく キレイなかたちをした ひかりもでない。アピールなんかしても、だれにも あいてにされないや…」


 そういうと、じぶんの ちいさくてよわよわしい おしりのひかりをながめ、 

 ぽろりと、かなしそうに なみだをながしました。


    4

 そのとき。


 「タイヘンだぁー!タイヘンだぁー!」


 みんなが、じゅんびをしていると

 かわのむこうから、

 なかまのゲンジボタルが、いきもたえだえ

 あわてたようすで、とんできます。


 「どうしたの?」

 「なにがあったんだ」


 みんなが、わらわらと しんぱいそうに  あつまると…


    5

 「タイヘンだ。こんどのがっせん、ヘイケのやつらがくるってよ」

 

 「なんだって!」

 とつぜんのしらせに、みんなは、びっくり。


    6

 はなしをきくと、こんかいの こいがっせんに、

 ヘイケボタルのたいぐんが、ゲンジボタルのおひめさま「しずかごぜん」のうわさをききつけ、おしよせてくるようです。


 「しずかごぜん」は、つやつやとした くろいからだと、キラキラとかがやく うつくしいひかりをもつ、ゲンジボタルのおひめさま。


 ふじがわにすむ ほたるたち、みんなの あこがれのまと です。


    7

 「あいつら、しずかごぜんを さらいにくるつもりだ」

 「なに!しずかごぜんは、ゲンジボタルのおひめさま。あんなヤツらに ぜったい、わたすものか!」

 「そうだ、そうだ!」

 

 ゲンジボタルたちは、いっちだんけつ。


 さっそく、ヘイケボタルをおいかえすため、

 さくせんかいぎ を はじめました。


    8

 「だけど、あちらは、300ひきにたいし、こちらは、150ひき。

 ふつうにアピールがっせんをしても、まけてしまうぞ」


 そうです。

 アピールがっせんは、おしりのひかりの つよさ、うつくしさ、あかるさ を きそう あらそい。


 このままでは、ひかりのおおさで、ヘイケボタルのたいぐんに まけてしまいます。


 みんな、こまってしまい

 うーん、うーん、と

 あたまをかかえてしまいました。


    9

 「そうだ!」

 みんなが、こまっていると、

 よしつねが、なにかをおもいつき、

ぽんっ と、てをたたきました。

 

 「いいさくせんがあるんだ。みんな、みみをかしてくれ!」

 「なに、なに……」


 こしょこしょ……こしょこしょ……。

 

 「なるほど!それは、いいさくせんだ!」

 よしつねのかんがえに みんなは、だいさんせい!


 さっそく、さくせんをじっこうするため、

 ぶん、ぶん、ぶんと、じゅんびにとりかかりはじめました。


    10

 いよいよ こいがっせん、とうじつ。

 すっかり、よるもふけ、くらやみが、あたりをつつみこんだころ――


 かわらには、おめかしをした たくさんのゲンジホタルたちが あつまり、キラキラとかがやく おおきなひかりのなみを つくっていました。


 さっそく、アピールをするもの。

 やぐらで、いきようようと おどるもの。

 はなのみつをすいすぎて、よっぱらってしまっているもの…。


 あちらこちらで、おおにぎわい!

 みんな、おもいおもいに たのしんでいると……


    11

 「うおおおおおおおおおー!」

 

  とつぜん、おおきなときのこえとともに、

  かわのむこうから、

  ヘイケボタルのたいぐんが、ギラギラとおしりをひからせ、こちらへ おしよせてきました!


    12

 「しずかごぜんをわたせ!」

 「いやなこった!」


 キラキラ、ピカピカ、こいがっせん。


 ギラギラ、ビカビカ、こいがっせん。


 たがいに おしりをひからせ、

 いかくがっせん。


 りょうしゃ、にらみあいがつづき、こうちゃくじょうたいかとおもわれた、そのとき!


    13

 「それっ、いまだ!」

 「「「せーのっ」」」

 

 よしつねのあいずとともに、

 くさかげから、ぬぅっと、なぞの ぶきみなくろいかげが すがたをあらわしました。


 やみよに うごめく、ほそながい はっぽんのあし。

 まるいあたまには、ぬらり、と やっつのひとみが、あやしくかがやき、

 するどい きばがはえた くちからは、ふしゅーふしゅーと あらいいきがもれています。

  

 「ぎゃあっ、クモだ!クモがでた!」

 「ひけぇ!ひけぇー!」


 とつぜん あらわれたクモにヘイケボタルたちは、おおあわて!


 「てったい、てったいじゃー!」

 あわてて、すたこらっさっさと、しっぽ、ならぬ、おしりをまいて、にげだしました!


    14

 ヘイケボタルたちは たいさんし、

 ふたたび、かわらに へいわなよるが おとずれます。


 「よしつね、ばんざーい!」

 「ばんざーい!」


 ハリボテのクモで、ヘイケボタルたちをおどろかす さくせんは、だいせいこう!


 こいがっせんは いってん、

 みごと ヘイケボタルをおいかえした

 えいゆう「よしつね」をたたえるまつりにはやがわりしました。


 しずかごぜんも、

 おしりをキラキラとかがやかせ、よしつねへ ゆうがな きゅうあいの まいをひろうし、

 よしつねも、ちいさくも じしんのついた、 ちからづよいひかりで、それにこたえました。


    15

 まつりは、いっきに さいこうちょう!


 かわらは、しょうりをいわうかんせいと、

 よしつねと しずかごぜんをしゅくふくするひかりのなみで、いつまでもキラキラと、あたたかく しあわせに かがやきつづけました。



【おしまい】


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