8話 一冊の本
僕たちはセレネの戦士たちの捜索のために旅に出ることにした。
僕たちは旅に出る前に話し合う。
「最初の目的地は前の村でいいんだよね」
「はい、もしかしたらまだ残っているかもしれないので」
そうして、目的地は決まった。
「じゃあ、出発しよう!」
満月が立ち上がって言った。
「姉さん、まだ準備しないといけないことがあるので今日はまだ出発しませんよ」
半月が満月にあきれたように言った。
満月はその言葉でしゅんとした。
僕たちは旅の準備を始めた。
旅の準備をしている時、一冊の本が落ちていた。
『歴代当主』
表紙にそう書いてあった。
僕はそれを手に取り、半月の元へ行った。
「半月、この本が落ちてたんだけど…」
「太陽さん、すみません。…えっ、これ」
半月はその本を見て、驚いていた。
「どうしたんですか?」
僕は半月のその表情を見て、聞いた。
「すみません、この本についてはみんながいるところで話したいので3人に集まるように言ってきます」
そうして、半月は3人を呼びに行った。
僕たちはまた、部屋に集まった。
「まだ、準備終わってないよ」
三日月が言う。
「うん、終わってない」
「そうだよー。終わってないよー」
新月と満月が同調して言った。
「3人ともごめんなさい。でも、これは重要なことだから…」
半月はそう言って、3人を静かにさせた。
「この本のことなんだけど…」
半月が3人に本を見せる。
「えっ、これって…」
3人が一斉に驚いた。
「あの、どう言う状況…」
僕は気になって、つい聞いてしまった。
「ごめんなさい、太陽さん。この本は私たち家族にとって、大事なものなんです」
半月が話す。その間、3人は固まっていた。
「この本について説明させていただきます」
そうして、半月は本のことを話し始めた。
「この本はセレネの巫女の一族である私たちのことが書かれている本なんです」
半月は本を見つめながら話す。
「私たち、巫女の一族はセレネのまとめ役なんです。そして、一族からは1人が代表となり、当主としてセレネを導く役割が与えられます」
半月の言葉に3人は静かに頷いていた。
「その当主のことが書かれた本なのです。当主が亡くなることでその人のことがこの本にいつのまにか追記されるのです」
「えっ、自分たちが書いている本ではないのですか?」
僕は食い入るように質問をした。
「はい、初代当主が亡くなった時に突如現れてから当主が亡くなる度に知らぬ間に追記されています」
「これは、当主が生きているかを確かめるためにも使えるの…」
満月が小さな声でつぶやいた。
「そういえば、今の当主は?」
僕はつい聞いてしまった。
「10年前の襲撃前はお父さんで生きているかわからないので亡くなっているのであれば姉さんです」
半月が本を見て、悲しそうな顔をして言う。
「この本にお父さんのことが書かれていたら、それは…お父さんが…」
半月が泣きそうになるのを我慢しながら話を続けた。
他の3人も俯いていて、表情が見えなかった。
僕は4人の支えにならないといけないと強く思った。