6話 月の贈り物
静寂の中、半月は話し始めようとした。
その時、新月がくしゃみをした。
「あっ、ごめんなさい」
重い空気が少し軽くなった。
3人が新月を見て微笑み、満月は新月の頭を撫でた。
そして、少し経ってから半月の話が再開した。
「私たち、セレネのほとんどは戦う事ができません。襲撃で戦士が全員残ったのもありますが、セレネの巫女の一族以外は力が全くないのです」
「巫女がいるの?」
「はい、私たちはその巫女の一族でセレネをまとめている一族でもあります」
半月のその言葉にみんな頷く。
「巫女の一族の人にはそれぞれ特別な力があります」
「じゃあ、4人は特別な力があるの?」
「はい。そして、私たちが召喚した太陽さんにも私たち4人と同じ力が与えられているはずです」
半月のその言葉に僕は驚いた。
「えっ、僕にもあるの!?」
「そうだよー。太陽にもあるはずだよ」
満月が僕と半月の間に入って答える。
「太陽さん、私たち一族の力は月の時間のみにしか使えません。ですが、強力な力です」
そう言って4人の力について教えてもらえることになった。
「まずは私からだね。私の力は脚力だよ」
最初に満月が力の説明をする。
「私の脚力は太陽も体験したでしょ」
その言葉で思い出した。
召喚された日、一瞬で現れたり、消えたりした満月を。
「僕を担いでこの森に来た時の…」
「そう、一瞬で離れた場所に移動できるの」
満月は楽しそうに受け答えをする。
そのおかげか重い空気は無くなっていた。
次は半月が自分の力を教えてくれた。
「私は腕力です。調子がいい時はこの森の木を倒すぐらいの力があります」
これを聞いて僕は半月だけは怒らせないように心に決めた。
「次、私〜」
そう言って、三日月の話が始まる。
「私は体力だよ。月の時間は常に動き回っていれるんだー」
「でも、動きたくないからだらけていると」
「そうそう、太兄の言う通り」
三日月のその発言に半月は三日月を見ながら微笑んだ。
三日月は助けを求めるように僕を見る。
僕は気づかないふりをして、新月に話しかける。
「新月はどんな力なの?」
「あっ、私の力は流力で力を受け流す事ができます」
「流力?もう少し詳しく教えて」
僕は気になって聞いた。
「流力は相手の攻撃を最小限にできて、その力を相手に返す事ができます」
「上手く扱えれば結構強いね」
「そうなんだよー。私たちの中ではシンが一番強い力を持ってるの」
満月が自慢げに話した。
「そういえば、僕にも同じ力が与えられてるって言ってたね」
「そうだよ。太陽には私の脚力、ハンの腕力、ミカの体力、シンの流力が使えるようになるはずだよ」
「そうですね。だんだんとこの世界に馴染むことによって使えるようになると思います」
「全部使えるの!」
「そうだよー。太陽はめちゃくちゃ強くなる予定なの〜」
「まだ予定なんだね…」
そうして、部屋中にみんなの笑い声が響いた。