21話 石碑
光月と出会って間もないことを忘れたかのように軽快な会話が続く。
「石碑で知りたいこととかある?」
「うーん、石碑ってことは文字が刻まれてるの?」
「あぁ、表には『日の世界と月の世界』って書いてあるよ。まぁ、意味は分かってないんだけどね」
「確かにその言葉だけだと意味はわからないね」
「でも、裏にも文字が書いてあるって聞いたことがあるんだけど、何が書いてあるのかは…知らないんだよね」
「えっ、見れないの?」
僕は残念な表情を浮かべて、つい呟いてしまった。
「結界で近づけないからね」
光月も残念そうな表情をして、反応した。
「結界かぁ…どうしても近づけないの?」
「うん、石碑があるのはこの家の裏なんだけどね。何回か近づいてみたけど、あと数歩のところまでしか近づけないんだよ」
光月の言葉に僕は驚きを隠せなかった。
「この家の裏にあるの!?」
「うん、この家は聖月から聖者の一族が受け継いできた家なんだ。家だけじゃない。この村自体、聖月達、始まりのセレネの一族が造った村なんだ。だから、襲撃があった今もこうして残っているのは俺たちセレネにとって、平和な日常と同じぐらい幸運なことなんだ」
僕は光月の言葉を静かに聴いていることしかできなかった。しんみりとした空気の中で
光月に掛ける言葉が見つからなかった。
少しの間、2人の間に沈黙の時間が流れる。
「なぁ、太陽。石碑、見に行かないか?」
光月が僕の困っている表情を見てか、明るく声を掛けてきた。僕は困惑しながらも石碑を見てみたくて頷き、僕と光月はすぐに部屋を出ることとなった。
僕たちは1階にいる4人を起こさないように、こっそりと階段を降りる。階段を降りてすぐに、4人が起きていないことを目視で確認した。満月の左足が三日月のお腹の上に乗っていたけど、4人が起きる気配はなかった。
僕と光月は満月の寝相に思わず失笑した後、ドアへと向かい、外へ出る。ドアを通り抜けると、差し込む木漏れ日のまぶしさに、思わず目を細めた。
「太陽、こっち!」
まぶしさのあまり、その場に立ち尽くしていた僕に光月が手招きをする。
僕は光月の後に着いて行って、目的の石碑がある家の裏に来た。
「太陽、大丈夫?」
「裏に行くだけなのに、こんなにも歩くと思わなかっただけだから、気にしないで…」
家の大木は大回りするほどのデカさ以外にも根っこで、でこぼこしていたから余計に裏に行くまでが遠く感じた。
「まぁ、そう言うんだったら…。太陽、あそこに根っこの中に見える石が石碑だよ」
光月が根っこに覆われた石を指差す。僕は光月が示す場所を見る。
石碑は言われなければ分からないほど、根っこに覆われていた。僕は本当に石碑か、確認をしたくて、いつのまにか石碑に向かって歩き出していた。




