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京都事変  作者: たま
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幸せの定義

東大寺の大仏開眼は大変な騒動となったが、近衛吉良が籠に乗る辺りで封鎖されていて良かった。

仮設ドームで見ることが出来たが、その部分はドーム内カメラに切り替えられ放送されたらしい。

次に放送、境内開放された時は全て片付けられ両眼入った姿になってからだった。

まだまだ、これから三日三晩参詣し飲み食いステージが続くらしい。

主催近衛吉良は大仏の両眼を自ら入れ、その後息絶えたと放送された。


ヒミコは仮設ドームで楽しんでる写真や近衛吉良とのツーショットだけ上げて「楽しかった〜」とだけ配信した。

部屋から出ると皆ダイニングでお茶してるようだ。

「あっ、配信してるみたいだったから声掛けなかったよ。終わった?」有間が大好きだと言うロシアンティーを入れてくれた。

イチゴジャムの甘い香りが心地良い。

「良くギリギリで躱せたね〜

僕、絶対ダメだと思った!」見波が大仏の頭での様子を見てて、もう死ぬと覚悟してたらしい。

「あの子はね、小さい時から小心者で石橋叩いて叩いてからしか渡らない子だったの。

だから、絶対自分が勝てると踏まないと出てこない。

と思ってた。」ヒミコが足と腕を組む。

「そして、弱点も知ってる。

石橋叩いて渡る時には、結構マヌケなの。

注意散漫になる。」姉は知っていたのだ。

「小心者なのに夢物語が好きでお姫様になりたい子だったからね〜」ため息を付く。

「だから、誰かが自分を見つけて引き立ててくれないかなあ〜と考えてたんだよね。

だから、人の評価ばっかり気にする子になって!」

ヒミコは憤慨する。

「この世で誰が自分以外の人間に都合よく動くか!

そんなのあり得ないのに!ラノベの読みすぎよ!」テーブルを拳で叩く。


「姉ちゃんは姉ちゃんでサバイバル過ぎん?」アキラはカッカしてるヒミコを諭す。

急に筆を振り回して足場悪いのに戦いだすから、アホだな〜と思った。

が、身体を支えるために筆を持たない手で仏の螺髪を持たないといけないのに無理して後ろ手で人差し指で筆を指してるのでオカシイと思った。

下を覗くと丁度眼の中だった。

凄い剣幕でケンカしてるのに、この女は冷静だ。

そして崇徳天皇も十二単衣の女も全く自分に気付いてない。

無理やり背筋伸ばしてプルプルしながら

立て膝をついた足首で何度も床を叩く。

それは何となく分かったので、すぐ胴体を繋いでるタスキを足首に縛り付けた。

ヒミコの身体を盾にして手だけ伸ばして筆先をグルグル回した。

その瞬間に電気みたいなのが流れたので、大仏が起動したのが分かった。

もし、霊力を使っていたら、すぐに崇徳天皇に勘づかれただろう。

ヒミコの人目を惹きつける才能に感謝だった。



「市子ちゃんのお墓良いの?無くて?」有間が心配そうに聞いてくれた。

「時間稼ぎだったけど、亡くなった市子と話して

なんか死生観変わりました。だから、特に良いかな?」ティーカップを置いて一息つく。

「死生観?」見波が聞く。

「うん、まあ簡単に往復はできないけど〜

引っ越しみたいなもんかな?と。」バイカルのロシアケーキをかじりながら話す。

「うん、また新しい世界で新しい人間関係を築いてゆくのかな?と」

市子はちょっと見ない間に大人の女性になってた。

難儀な男と同棲してたせいか?

自分と話すと相変わらずガキっぽかったが。

現世に居る時より幸せそうだった。

生き生きしてた…


「もしかしたら若くで死ぬ人は、あっちで青春してるのかもですね〜

おばあちゃんおじいちゃんで行くと何も無さそうだけど♪」と笑った。


そう、死は可哀想ではない。

ましてや、哀れでもない。

ステージが変わっただけだ。

人それぞれだが、市子は成長していた気がする。

生きてる間は、必死に生きれば良いけど

特に死を恐れる必要もないような気がした。

死は、未来なんだ。

ふと、そんな気がした。

祖父祖母も市子も違う未来に行った気がする。

だから、墓とか要らない。

それは未練で、死んだ人にはありがた迷惑な物かもしれない。

出た田舎の実家にいつまでも子供時代の写真飾って泣かれても…な感じ。

テレビで大仏が大写しになる。

あそこが妹の新しい家で難儀な旦那との新居なんだな!と。

子育て終わった母が、楽しそうに一人暮らし満喫してるように、幸せも人生も定型は無い。


「お前、良い線言ってる。」アキラがテレビ見ながら

珍しく褒めてくれる。

「今が幸せな霊は、もうこの世に居ないんだよ。

残ってるのは不幸な奴ばかり。

過去に囚われて執着してる変わり者。

それだけあの世は楽しくて戻りたくない場所みたいだぜえ〜♪」アキラがウインクする。

見波が吹いた。

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